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第二十三話 ウェストカー・パピルスの物語
−3−
王になるべくして生まれた三人の子供。しかし、その誕生に際しての神の奇跡が足りない! と、イシスは言います。
ヘケト「んー、でも、いちど出てきたおうちにもう一度戻るのは、不自然だと思います」
イシス「任せておきなさい。」
豊穣の女神でもあるイシスさんは、ハァッ! と気合い一発。空にもくもくと暗雲立ち込め、瞬く間に雨が降り出しました。スゲー。
ほとんど雨降らないエジプトのこと、雨なんか降らないのが前提です。しかもこのときは、暴風雨なんてことに。
イシス「さあッ。これでオッケーよ。雨宿りしに戻りましょう。」
神々「……。(ムチャクチャやん)」
自分がよければ何でもいいのか! イシス!
その雨で迷惑するかもしれない人間のことなんて、ちっちぇえ心配事?!
そんなこんなで神様たちは、ラーウセルのお宅に堂々と逆戻り。
このとき神々は、袋の中に贈り物を詰め込んでおりました。
三個の王冠に、楽団一式。クヌム神手作りフィギュア(レアもの)でしょうか。人が近づくと自動的に宮廷音楽を流すという高度センサーつきです。
イシス「折角いただいた大麦ですけれど、この雨では湿ってカビが生えてしまいますわ。またこの辺りに巡業するときまで、預かっていただけないでしょうか。」
何も知らないラーウセルの家人はその袋を受け取り、雨で湿らない場所に預かっておくことにしました。もちろんイシスたち偽の踊り子団には、戻ってくる予定なんかさらさら無いんですが。(サギじゃん)
そして、それから14日…。
妻のレドジェデトは産後の肥立ちもよく、そろそろ起き上がって動いても大丈夫なようです。
彼女は一家の主婦らしく、召使いに、家の中のことは滞りなく行えているかと尋ねます。召使いは答えます、ビールが足りません、と。
ビールの原料となる大麦は、出産を手伝ってくれた踊り子たちにお礼として与えた大麦しかありません。
…なんだか、イシスの降らせた大雨のせいで物資が届かなくなってる気がするんですが…。(そういえば、イシス様も後先考えないお方でした。)
「しょうがないので、それでビール造っちゃいましょう。踊り子たちが戻ってきたら、別の袋をあげるってことで。」
言いつけられた召使いは、地下室に保存してある大麦の袋を取りに。
地下室です。
暗いです。
そしてお女中が一人きり。※ここからは、ホラー映画の画面をご想像ください。
足音がやけに大きく響き、ドアを開けた瞬間ひんやりとした空気が。(ここでカメラが、不安そうな召使の顔に接近)
…どこかから物音がします。
「誰? 誰かいるの?」
ぴたりと音がやみます。 しーん。
「気のせい…なの?」
中に入っていく召使。カメラさん棚の後ろから〜。画面の端に何か黒っぽいものがよぎってます。
…ちゃ〜らっ(怪しい音楽) 〜ちゃ〜らっ。ちゃらっちゃーらっちゃらっちゃらっ…(だんだん速く)
「誰?」
ちゃーらっちゃーらっちゃーらっちゃーらっ(急激に近づいていくカメラさん)
「誰?! 誰なの! …!!!」
息を呑む彼女の顔のどアップとともに、画面ブラックアウト。そして響き渡る女の悲鳴…!
「NO−−−−!」
スプラッタホラーでは無いので、この召使いさんは絶叫したあともチャンと生きていました。(笑)
「奥様! 奥様…!」
血相変えて戻ってきたこの召使い、地下室で怪しい物音と人影を見たと報告します。地下室で、誰もいないのに人が笑う声や音楽が聞こえ、踊る影が見えたというのです。
心霊現象ですか?
違います。でも心霊現象と変わらんですよね^^;
今度は、レドジェデトも一緒に地下室へ行きます。(子供生んだばかりで大丈夫なのか)
すると確かに、人の声や物音が。どこから聞こえてくるのでしょうか。
しばらく探し回った挙句、彼女はようやく、物音が袋の中から聞こえてくるのを突き止めました
しかもその音楽というのは宮廷音楽で、人の声とは、口々に王をたたえるものだったのです。
「すると…あれは…神様だったのねっ?!」←気付くの遅いよ。
これは良い前兆に違いない、いやもしかするとウチの子たちは将来、王になれるのかもしれない。
…そもそも黄金とか身に着けて生まれてきた時点でアヤシイと思うべきなんですが、そこはそれ、ここの人たち、ちょっと洞察力に欠けてるみたいで。^^;
ご夫婦にも、ようやく天意というものが分かり、ちょっぴり幸せな午後のひと時。
イシス「ふ。ニブい人間たちにもわかりやすーい奇蹟を行う。それが私たちのいい所ですわ。
有無を言わさず意志を明確に! これ神の鉄則也。
中途半端な奇蹟をおこなって、後の時代で解釈にバラつきが出る、どっかの神話とは違うのよ!
ホーホホホホ♪」
メスケネト「団長。ご立派です。」
イシス「と、いうわけで今度こそ引き上げよッ。みんな〜忘れものは無いわね〜?」
ゾロゾロ帰っていく神様たち。
大雨の被害はどうなった、大雨の被害は。
+++
さてそんな出来事から数日のち。
あの召使いは、何か失敗をしでかして、奥様にビンタをくらいました。
これを根に持った召使い。女主人が、将来、王になるべき子供を生んだことをクフ王に密告しようと、こっそり屋敷を抜け出しました。
すげーヤな人です(笑)
でもね。ホラー映画ではね。こういう人が真っ先に死ぬんですよね…。
王様にところへ行くべく川を渡ろうとした彼女を足元から思わせぶりなカメラさんが狙っています。水がはねています。召使いは何も気がついていません。後ろからじりじりと何かが…何かが…何かが…
それは何と、巨大なワニでした!
気がついてももう遅い、映画「ジョーズ」よろしく、ワニがガッチリと女の体に噛みついて、水ん中にひきずりこんでいきます。
「Oh! Help! Help me〜!」ばしゃばしゃ
「He−−−−lp!!!」がぼがぼっ ばしゃんっ
…しーん…(赤い泡が水面に浮かんでくる)
こうして不実な密告者は川で命を落とし、王になるべき子らは、守られたのでした。
ってそれ、神様がやったんじゃ…神様…口封じのために人殺し…?^^;
+++
この後さらに、壮絶なバトルは続く。
予言を覆すべく、赤子たちの命を狙うクフ王! その魔の手をすんでのところで潜り抜け、やがて成人し予言のとおり王座に就く奇蹟の子…。古代世界の王権交代を描く、ドラマチック・歴史チック・エジプト神話!
美女暗殺者や黒魔術師も入り乱れての闇の戦い・イン・ヘリオポリス、「王都物語」は残念ながら写本不完全のため続きが語れないのであーる。
え、何、中途半端だって?
まー、こっからが面白くなりそうなところなんですがねー。実際ここまでしか残ってないんですね、ウェストカー・パピルスの物語。
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