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第二十一話 ウェストカー・パピルスの物語 

− ジェデフホル、王の御前にて話し、
ジェディ天命によりて王朝替わるを告げるのこと −



 何故か中国モノっぽいタイトルから始めてみる。第四王朝から第五王朝への移行という史実を、神話チックに語った物語。

 これは、政府刊行の神話ではなく民間伝承系の神話デス。王家の神話が、結局「王様バンザイ☆」に行き着くのに対し、民間の神話は、権威を茶化しているようなところもあり、その違いが面白いンです。
 私も平民なんで、茶化し放題。

 時は第四王朝。民間伝承では「悪者」呼ばわりされていた、大ピラミッドの建造者クフ王が、9人の息子たちを宴に呼んで、ひとりずつ話をさせていきます。(そこんとこ、ひとつ前の「難波した水夫の物語」と同じ構造です。)

 「パン千個、ビール千瓶、牛一頭と香料二山を与えよー!」
 面白い話をすると、とんでもなく豪勢なご褒美が配られています。酒池肉林。王様、金持ちなんでやりたい放題。
 王子たちは年齢順に話をしていったらしいのですが、残念ながらパピルスが途中でブチ切れちゃって、最後の三人の王子の話しか残ってません。
 その、残ってる三人のうちの最後の王子の話が本題なんで、取り合えずそっから入りますか。

 いちばん年下の王子ジェデフホルが話をする番になったとき。
 彼は何を思ったか、いきなり、父王にケンカ売るような話をはじめました。
 「今まで兄さんたちがしてきた話はもみんなウソっぱちですよ。だって過去の話でしょ? いくらでもウソはつけます。そんなんよりもっと面白い、現在の話をしますよ。偉大なる魔法使いの話です。」
 「なんと。魔法使い? それは誰のことだ。」
 「平民の出で、名はジェディと。スネフェルの町に住んでおります。今年でおんとし110歳」

このスネフェルってのは、スネフェル王のピラミッドを管理する墓守りの町でした。墓守りで魔術師。うーん。イカス。

 「110歳ということは、すでに定められた人間の寿命が来ておるではないか。死に掛けか?」
 「いいえ。このジジイ、じゃない、ジェディはとても元気なのです。今でも腹いっぱいパンとビールを平らげ、あっちのほうもビンビンです。(嘘) しかもこの魔術師は、かの知恵の神、トトの秘密も知っているのでございます。」
 「なんと…?!」

 トトさんのひ・み・つ。
 それは当時の知識人が求めてやまないイヤンなものでした。それさえあれば、あーんなことやこーんなことも出来てしまう素敵な知識。(そっらを自由に とっびたっいなっ♪ ハイ! トトさんのひみつ〜)

 「欲しければくれてやる。 探せ! すべてをそこに置いてきた!」

 神のその言葉は全てのインテリたちを狂気させ、人々を未知なる地平線へと旅立たせた。魔法によって守られた大いなる秘密<グレートリーシークレット>を探し、世はまさに大探求時代。

 歴史に残る大ピラミッド建設を目論むクフ王にとっても、これは必要不可欠なものでした。
 トト神の秘密の知恵さえあれば、そりゃーもーピラミッドなんぞガッポガッポ建設し放題! 歴史に名を残そうが永遠に生きようが、やりたい放題です。(多分。)
 王様、さっそく息子に「その魔術師を連れて来い、褒美はいくらでも取らす!」と言いつけて、送り出しました。(なんだかな。王子の計略にまんまと引っかかってる気がしなくもない。)

 やがて王宮に連れてこられたジェディ老人。まずクフ王は、この魔術師がウワサ通りの術士かどうか確かめようといたします。
 「ウワサによれば、お前は死んだ者も生き返らせることが出来るというな。オイ。(指パッチン) 」
引っ立てられてきたのは、失敗しても大丈夫なように、牢屋に繋いであった死刑囚。
 しかしジェディは言います。
 「おお、なんと恐れ多い。神の家畜を試みに殺すなど、許されませんぞ。」
いや、つーか、絶対失敗しないんなら、別に人間でやってもいいんじゃ…? 死なないんでしょ?
 「替わりにガチョウを連れてきてください。」
人間の家畜は失敗しても大丈夫なようです。

 連れてこられたガチョウをとッ捕まえたジィさん。まずはエイヤと首をはね、トリック無しとばかり、首を広間の東、体を広間の西に置いて、真ん中に立って呪文を唱えはじめました。
 「…ッはぁああああ…!」
すると、何と! 首と体が勝手に動き出し、見る見る歩み寄ってゆくではありませんか。人々ビックリ。ガチョウが、死んだガチョウが歩いてる?!

 ガチョウ「グワッ… ダック合体ー!!(カッシャーン←首と胴体が接合) ザ☆リバイバー!」

 人々「はうああああっ」

首と胴体が、一体化したー!
本物だ。ヤツは本物だよ。イリュージョンでもテンコーマジックでも無いよ。すげー!

 ジェディ「ふぅ…はぁ…ふぅ…。これぞ、我が秘伝の奥義・ザオラル(注1)でございます、王。教会まで棺おけに入れて引っ張っていけば復活可能。マジメに死んどるのが馬鹿馬鹿しいくらいですな。」
 王「ウム。見事じゃ。これで、そなたの力は証明されたわけじゃな。しかしトト神の秘密を知っているというのは、本当かな?」

クフ王は玉座からググっと身を乗り出して、いきなり本題に入りました。

ジェディ「残念ながら、王。その内容までは知りません。(知ってたら、普通の生活して無いでしょうよ^^;) しかし、それがどこにあるのかは、よく存じております。」
クフ「ナニ! どこだ、何処にあるのだ。」
ジェディ「太陽の町、ヘリオポリスにあります『記録の間』。ここに、トト神の秘密を封じた櫃が納められております」
クフ「むう、そんなご近所にか?! 探していた青い鳥さんは家の中、ルララ。よし、行って取ってくるのだ!」
ジェディ「残念ながら、それは叶いません。なぜなら、この櫃を開けることの出来る者は、既に決まっているからなのです。」
クフ「決まっている…? 選ばれし者だけに開けられる櫃か! キーブレードの勇者さんか? 誰だ! そいつの名を言え!」
ジェディ「まだ、生まれておりません。」
クフ「…は?」

ジェディはすらすらすら〜っと、こんなことを言いました。

ジェディ「その者は、サケバウの主、ラー神官ラーウセルの妻レドジェデトの腹の中にいる3人の子供たちです。彼らはこの国の優れた王となり、年長者はヘリオポリスの大司祭となるでしょう。」

クフ「!!!」

 さーてどうするクフ王よ。ただ今政権絶好調、前代未聞の大ピラミッドを築こうというときに、死者をも蘇らせる奇蹟の魔法使いが王朝交代を予言したぞ? これはどういうことなのか。予言は覆されるのか?
 神話なのに歴史ドラマ。この物語の続きは、また次回。

注1−ザオラル
「ドラゴンクエスト」という人気のテレビゲームシリーズに登場する魔法の呪文。戦闘不能になった仲間を復活させる。
ちなみにゲーム自体は古代エジプトと全く関係無い。当然、古代エジプトにそのような呪文が存在するワケは無い。

ジョオクです。




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