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第十五話 2人兄弟の物語
−別称;インプとバタの物語−
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バタが去ってから、七年の時が過ぎていました。
兄インプは、かなりいいお年頃…の、はず。女に裏切られた過去のせいか、今は妻もなく、もちろん子供もなく、寂しい生活です。
そんなとき、召使の差し出したビールが突然あわ立ち、コップの縁から漏れ出すという奇妙な現象が!
インプは、弟の言い残した言葉をとっさに思い出します。
インプ「そうか、これが…。はっ、まさかバタの身に何かが?!」
何かっていうか、死んでるんですが。
急いで谷へと向かった彼は、そこで、冷たくなった弟の遺体を見つけます。呆然とする兄。しかし、心臓を見つければきっと生き返る!
インプは必死で谷を探し回ります。弟の心臓。落ちてる心臓。しかしなかなか見つかりません。
そうこうしているうちに、三年の月日が流れてしまいました。
三年も探して見つからないほど広い谷だったのでしょうか。さしもの兄も疲れてきて、もうダメかもと思い始めます。
すると…その時! 何かが頭の中にひらめいて、インプは落ちていたアカシアの実をひとつ、拾い上げます。そうでした! それは、木の実そっくりに擬態した、バタの心臓だったのです!
そんな心臓、ねぇよ普通。
よろこびいさんで弟のもとに戻ってきたインプは、心臓をどぼんと水につけこみ、一晩ねかせて生の状態に戻します。
乾燥ワカメのような心臓だな。
さらに、3年も経っているのに新品同然でツヤツヤの弟の死体にその心臓を飲ませ、待つことしばし。
おお! なんか、ぴくぴく動き出しましたよ!
バタ、復活。
インプ「弟よーー!」
バタ「に、兄さーーん!」ガバチョ。
想像するだに凄まじい光景なんですが、本人たちは嬉しがっているので、まあ、良かったと…そういうことで…。
インプ「弟よ、一体何があったのだ。」
バタ「それが、かくかくしかじか。…で、僕は雄牛になろうと思うんだ、兄さん。」
インプ「ええ?」
バタ「あの女をこらしめてやらなくてはならないからね。(キラーン) 兄さんは、僕を王様に献上してください。」
そう言うや否や、弟は立ち上がって気合い一発。
バタ「はァァァ…! トランスフォーーム!!」
べきッ。ごきッ。ばきばきばきッ。
…人間の体が牛に変形していくところとか、考えると映像的にむッちゃ怖いんですが…SFXなら再現可能ですか…ハリウッド映画(ホラー)ですか…?
喋る牛といい、牛に変身するバタといい、この物語はモー牛づくし。
牛「もっふーん! さァ、これで準備万端です。兄さん!」
インプ「よしきた! とうっ(乗牛)」
人間の言葉をしゃべる、世にも不思議な牛/弟が誕生。インプはその牛に乗り、めざすはフォラオとその妃、ビントネフェルの住まう王都です。
この牛を見るなり、王は、その素晴らしさにほれ込みました。色艶、毛並み、どれをとっても優れもの。
エジプトでは、珍しい牛を神の使いとして崇拝する伝統があります。
聖牛アピスやブキスなどもそうですし、牛の姿を取る女神、ハトホルなどもいます。きっとこの牛は、神の化身に違いない。
ファラオは、インプにたっぷりと黄金を渡して、この牛を譲り受けました。
インプのほうにしてみれば、弟を売り払ったってことになるんですが。
この牛のうわさは瞬く間に広がり、神々しい牛をひとめ見ようと、人々があちこちから集まってきます。
もちろん王様も、妻のビントネフェルにこの牛を見せたくて仕方ありません。
さぁ、バタと彼女の再会の時… バタが取った行動とは?!
<続く>
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