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第十三話 2人兄弟の物語

−別称;インプとバタの物語−


 と、いうわけで、長い夜が明け…。
 プレー・ハラフティ「はっはっは、待たせたな人間たちよ! それでは私が話を聞いてしんぜよう。何なりと話してみるが良い!!」
太陽の神なので朝っパラから燦々、元気もりもりでハイテンションですが。
 インプとバタはそれぞれ、申し立てをします。バタはもちろん、自分は何もしていない、誘惑されたが断ったのだ、と、申し開きします。
 さぁ神様! 一体どっちが正しいの?!

 プレー・ハラフティ「弟。」(アッサリ)
 インプ「! なんですって、それでは私は妻にダマされたのですか!」

 だからさ、最初から弟の話聞いときゃいいじゃん、兄さん。あれほど仲良かった兄弟なのにいきなりキレたあんたが悪いよ。(みのもんた口調で)

 インプ「ああ、俺はなんてことを。弟よすまなかった。許してくれぇぇ」

でも2人の間にある池にはワニがうようよしていて、わたることは出来ません。

 バタ「兄さん、僕は、もう一緒には暮らせないから『松(アカシア)の谷』へ行くよ。あの牛たちをよろしく。」

と、ここまでは普通の兄弟の別れ    しかし! タダ者ではない弟バタ、さらに面妖なことを口走ります。

 バタ「僕は心臓を取り出して、松の花の上に置いておきます。もし松が切られて心臓が落ちてしまったら、僕は死んでしまうけど、お願いです心臓を捜してください。見つけた心臓を真水に入れると、僕は生き返ります。もし誰かがあなたにビールを渡して、それがこぼれたら、僕に何かが起こったというしるしです。すぐに来てください。」

…ハア?

 インプ「分かった。必ずそうしよう。お前への償いに」

 古代エジプトの信仰には、心臓を取り出して天秤に載せてみて、その人が正しい行いをしたかどうか判断する、死後の審判なんてモノがありますが…生きてるうちにソレやっちゃまずいでしょうよ。
 ちなみに松の実というのは一種の寓意で、松の実の形が心臓に似ていることに関係があるそうです。
 ま、ともあれ、水につければ生き返るってことは、バタはおそらく人間では無かったのでしょう…^^; 干物みたいなミイラだって、水につけたって生き返りませんよ、アナタ。人間フリーズドライじゃないんスから。

 とかいうツッコミは無視で、話はさくさく進みますが。

***
 そんなわけで、兄は悲しみながら弟に別れを告げ、家に帰ると、妻を罰してひとり寂しく家に暮らすことになりました。
 心優しい矢島先生の訳では、ただ単に「罰した」と書かれているのですが、忠実に訳した本を見ると、殺して死体を犬に食わせてるんですよね。てめエは離婚だけじゃ飽きたらん、殺してやる、ついでに墓もつくってやるもんか、と。兄さんてば、かなりの激情家。
 墓と死後世界にこだわる古代エジプト人のこと、死体を野良犬に食わすってのは、兄さんよっぽどおかんむりだったんだねェ。


  一方、兄のもとを去り「松の谷」へとやって来たバタはというと…?

<続く>



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