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その7:遥か島々に船を    〜海鮮パスタ 9ユーロ



さて、ヴェネツィア周辺の島々を巡るのは時間がかかるためか、あまり好、行く人がいないらしい。
行く人がいないと聞けば、いかねばならない冒険者。(まて)

まずはリド島。サン・マルコ広場横の船着場からすぐに行ける、高級ホテルの多いいわゆるリゾート地。
長い海岸線の続く細長い島は、運河もなく、橋もなく、坂もなく、教会もない―― あるのは海だけ、そう、海だけ。

そして楽しいとも思えないが島制覇のためには必要!
と、いうことで行ってみたのだが…

  つまんなかった

まず、ヴェネツィア本島には無い「車」があること。オール歩行者専用のヴェネツィア本島と違い、リド島には車道と歩道があり、信号もある。バスもある。自転車もバイクもある… はっきり言って、そこらへんの外国のリゾート地と変わんない。建物も最近のものばっかりだし、入り組んだ迷路などもない。

で、ホテルがみんな高級なので、泊まってる観光客も当然のようにオカネモティーな階級で、なんか、つんけんしてて馴染めない感じがした。

海水浴場。ただの海。
ていうかアドリア海って日本の太平洋側の海水浴場と同じなんね…。砂に交じって生えてるペンペン草みたいなのや、落ちてる貝、潮のにおい、風の感じに至るまで、すべて臨海学校の記憶のまま。
あまりに普通すぎたので、写真も撮らずに、そのまま次の島へ…。

リド島→ブラーノ島。ブラーノは手編みレース、「メルレット」の産地ですよ。

ここのピザ屋はハエたかってんのにそのままだったヨ

相変わらず傾いてます。

もうね、ヴェネツィアの尖塔は傾いてるのデフォルト。(笑) 大丈夫なのか―…。

リド→ブラーノは、かなり時間かかります。1時間ちょいかな?
この時、小雨が降りだしてましたが、しばらく歩いたら止んだ。色とりどりな家がユニークなこの島では、各所でレースが売られています。でも、土産物屋にあるのは、本物の高級手編みレースではなく、似せて機械で作ったものなんだそーな。

あれです。
エジプトで本物のパピルス紙を買おうとしたら、そこらへんの店では買えなくて、パピルス博物館か実演製作の店に行かないといけないのと同じことです。

あみあみ。あみあみ。
で、島の唯一の観光地、レース博物館へ。

中はさほど広くなく、驚くほど細かいレース細工が薄暗い館内にずらりと掛けられてます。あまりに細かいので、ちょいとビビります。どのくらい細かいかというと、ドット打ち職人の細かさに通じるものがあります。

レース手編みの実演を見てたのですが、じーっと見てたのですが、なんていうか、これはヤヴァい。一枚一枚がすごい時間をかけた芸術作品なんだと分かります。そら高いよ。一枚20ユーロとかで売れないよ(汗

レース職人は昔はいっぱいいたらしんだけど、共和国の崩壊後(つまりナポレオンが来たあとね)、いなくなってしまって、学校を作ってなんとか伝統を守ってるらしい。
学校での授業内容とか、教科書とかが博物館に展示してあった。この実演のおばあちゃんも、手編みレース学校の卒業生なのかもね。

と、いうわけで…



ヴェネツィアの手編みレースは、もっと高値で売れるべきです。(力説)


あと、ここの島で食べた海鮮パスタが美味しかった。安かったし、おばちゃんサービスしてくれたし。
レシートがソーサーに乗って出てくるのも面白かったなぁ。で、代金もソーサーに乗せて返すの。ちょっとお洒落くない?

コーヒー飲もうとしたらアメリカーノ? イタリアーノ? って聞かれたんで、イタリアーノって答えたら、なんだか濃い、苦味があるんだけど香りのいいコーヒーが出てきた。それも美味しかった。普段あんまコーヒー飲まんけどね。イタリアっつったらコーヒー(エスプレッソ)じゃろ。ということで。

ヴェネ滞在中はひたすら、安い切り売りピザを食ってたので、たまに食べた、それ以外のものが美味しく感じられた。毎日ピザ、ピザ、ピザ… って、もうねピザまみれでしたから。自分どこのディヴ星人かと、たまに自嘲したもんですよ。(*´д`*)



で、ここで死んだら一週間みつからなさそうな勢いブラーノ島から移動したのがトルチェッロ島。
今回の旅でいちばん行ってみたかった場所。ヴェネツィア集落発祥の地。

ゲルマン民族の大移動の時代、追われたヴェネツィア人の祖先が最初に住み着いた場所なんだそうな。

地図で見るとわかるんですが、この島、ヴェネツィアから見るとマルコ・ポーロ空港より遠いです。船はブラーノ島とトルチェッロの間をピストン輸送なので、いちどブラーノを経由しないと行けない。それか、お金のある人は水上タクシーで。

かつて多くの家があったというこの島、マラリアが蔓延したとき家が解体され、人もぜんぶ移り住んでしまったとかで、今は住んでる人もほとんどいない。

きれいに舗装された道や船着場、街灯、タイルで固められた運河など、設備は整っているので、中心部はさほどでもないんですが、島の奥地のほうに入っていくと、雑草と木々が生い茂る未開の地――…

写真に写っている沼っぽいものは、実は海です。せき止められて、泥沼みたくなってるだけで。なつかしのファミコン版ドラクエの沼マップみたいな。誰もいない。だがしかし、なんだか懐かしい。どこかに似てると思ってよーく考えてみると、ウチの田舎ってこんなじゃなかったっけか。
道端にタンポポ咲いてて、水溜りにサギがいて、草むらにちっこいカマキリがいる。すごい普通に田舎。

そんな田舎をぷらぷらしつつ、ヴェネツィア最古の教会、なんと基盤は7世紀に造られたという、サンタ・マリア・アッスンタへ。
ここの教会がすごい。マジオススメ。
集落とともに放棄されたお陰で質素で、豪華な芸術作品もないんだけど、木造の梁の感じや古びた石造りの壁が、じわじわと歴史の重みを染み出させてる感じ。壁のモザイクも圧倒的。12使徒が、ユダ含め全員光輪ありだったように見えたのだけど、どうなんだろう?

表のモザイク部は、大きすぎて写真におさまりきらんかったのと、人がけっこう居てカメラ構えるのが難しそうだったので写真ないです。あるのは地下の写真…

一瞬びくーり。

  教会の地下に、生々しいイエっさんがいたよ

12使徒とマリア様のモザイクのある内陣の真下。よく見ると階段があって縄も何もなかったので迷わず入る冒険者。
薄暗い階段の先に、窓から差し込む光の下、横たわるイエス像…

説明文も何もなく、そこにあるので、ある意味すごく生々しい。教会の地下なので静かで、しばらく待ってても上にいる観光客は誰も来なくて、「…はっ。まさか外に出たら時代遡ってたりしねーだろうな?!」な、不安に駆られます。って私だけかね。
この像は、島から人がいなくなるときに一緒に持っていかなかったんでしょうかね。置き去り? 由来が気になります。



トルチェッロは田舎なのに、何故かオサレなレストランが3軒もあります。
リド島あたりでリゾートしてそうなオカネモティーが、静かな島でのんびり過ごすために使うんでしょうか。
確かに天気のいい日とか、この島で一日のんびりするのは良さそうですね。
一週間くらい島にいたら、小説が書きたくなること請け合いです。
世界のどこかで戦争が起きていることなんか信じられなくなると思います。

喩えるなら
Lv1の勇者在住、出現する敵はスライム程度の島

そのくらい平和な場所でした。

で……
教会の中庭にあった、石の椅子が「アッティラの玉座(椅子)」というらしいのだが…。

子供は素直でよろしい


修学旅行の子供たちにめちゃめちゃ座られてますよ! 大人気ですよ椅子っ。歴史とか伝説とか、もうなし崩し。私も座ったがなっ。わはは。

風雨に耐え、長年座られ続け(笑)、表面はつるつる。飾りも何もない、ただの椅子型の石でした。
しかし説明もなんもないので、何故「アッティラの玉座」なのか分からない。

トルチェッロ島は、民族大移動で追われた人々の移り住んだ島。
→5世紀ごろ、ヨーロッパの民族大移動を発生させたのは、東から来た騎馬民族フン族に追われたゴート族による大移住。
→アッティラは、そのフン族の王で「神の鞭」と呼ばれた人物。
→…?

うーーん。どう繋がるのかよくわからん。

たぶん、あれです、魔王が復活したときに村長とかが、この椅子に隠された真実を語ってくれるんだと思います。
んで写真に写っている子供の誰かが勇者になって旅立つんだと思います。
それまで真実は海の彼方に。


トルチェッロからいったんブラーノへ戻り、ガラス工芸の島ムラーノへも行きました。
たぶんね、日本からの観光客はかなりの高確率で行ってると思う。だからなのか、あやすぃ日本語喋る自称ガイドの人が話しかけてキタヨ。

町中ガラス細工だらけ、工房を覗くと中で職人さんたちが仕事してて、海際の道ぞいに職人さんたちの家が並んでいる、そんな島。
ガラス細工にあんまり興味がないのと、どうせ割れるから持って帰らないよハハン、な冷やかしだったので、あんまり真剣に見てなかったりするんだけどね、さすが世界に名だたるヴェネツィアングラス、技術はすごい。



 ガラスの庭園

これはちょっと感動したね。近くで見るとめっちゃ細かいの。階段や手すり、植え込みのバラまですべてガラス。ファンタスティック。
他にも、緑色のガラスで作ったタコ型の壷や、細かい模様の入った花瓶など芸術的なガラス作品がいっぱいありました。


島=館ヴェネツィア周辺は、名前のついてない小島や、個人所有とおぼしき島も多数。

ちいさな島の上に、廃墟と化した館があったり。
家が島全体を覆っていて土地が見えないので、遠くから見ると、まるで海の上に突き出しているような家があったり。
玄関出たら即船着場、買い物いくにも通勤するにもモーターボート! なご家庭があったり。

ここの人たちは多分、日本で山間に住む人が原付免許必須なのと同じように、船舶の免許取るんでしょうね。
ほんとに船ないと生きてけないんですね。


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