中世騎士文学/パルチヴァール-Parzival

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第十三巻  アルトゥースとガーヴァーン



 ガーヴァーンは、かつて彼に一騎打ちで負けて人質にされていたリショイスとフローラントの二人の騎士を自由にしたあと、グラモフランツに頼まれたことづてを果たすべく、妹のもとへ行く。妹、イトニエーもまた、グラモフランツのことを思っていた。ただし、実際に会ったことはない、という。
 会ったことのない相手とラブラブになれるものなのか。それが中世風の愛なのか。
 よくわからないが、そういうものらしい。
 余談だが、このときガーヴァーンはフィーデルを所望しているのに、宮廷の人は誰も弾くことが出来なかった。嗚呼ここにあの人がいれば!(話違うけど。)

 人間関係は少々複雑だ。グラモフランツを殺したいほど憎むオルゲルーゼが兄の妻。兄に戦いを挑む相手が恋人のグラモフランツ。皆仲良くすれば? とは簡単にいかない。
 その頃、ガーヴァーンに命じられた小姓は、アルトゥースのもとへたどり着き、手紙を渡していた。ここでも、パルチヴァールとガーヴァーンが円卓を去ってから4年半と少し、過ぎ去っていたことが述べられている。

 小姓から、アルトゥースの宮殿の様子を聞いたガーヴァーンは、上機嫌だった。決闘の日には、アルトゥース王の家臣たちもやって来る。
 そんな彼は、ある日アルニーヴェから、魔法の城の由来を聞かされた。アルニーヴェや、ガーヴァーンの母と妹は、この城の主である魔法使い、クリンショルによってさらわれ、閉じ込められていた。そのクリンショルがどうしてそんなことをしたのかというと、かつて、ジチリエ(シチリア島)の王妃、イーブリスと不倫をしたために、王の怒りに触れ去勢されてしまったからだという。
 クリンショルは魔術師ヴェルギリウスの子孫で、去勢されてからは少々性格が悪くなってしまい、人をさらう厄介な性格の魔法使いになってしまったのだそうだ。魔法の城のあるこの土地は、グラモフランツの父・イロート王が、クリンショルから災いをこうむることを恐れて差し出したものなのだという。

 しかし、そのクリンショルの仕掛けた城の罠を乗り越えた今、ガーヴァーンはこの城の主であり、クリンショルとも和睦したことになるらしい。(この魔術師、一切登場しないわりに、ずいぶん重要な役割と見える…。)

 そうこうしているうちに、アルトゥースとその家臣団が到着。
 途中、敵と間違えたオルゲルーゼの家臣たちと戦いになったりして、ボロボロになりつつの到着である。もっと安全に到着させてやればいいのだが、ガーヴァーン的に、到着したアルトゥースに「どう? びっくりした?」と、いうのが、どうしてもやりたかったようなのだ。
 再会したアルトゥースとギノヴェーア王妃に、ガーヴァーンは、行方不明になっていたアルトゥースの母(アルニーヴェ)を魔法の城から救出したこと、アルトゥースたちが途中で戦った軍の主、オルゲルーゼは今や自分とラブラブの仲であることなどを話す。
 グラモフランツ王との決闘の日は迫りつつあった。

 ガーヴァーンは、魔法の城攻略で負った傷が十分に癒えているかどうかを確かめるため、ひとり、甲冑を身にまとい、馬を走らせていた。そして、そのことが、彼に思いがけない出会いと災難を呼ぶのである…。




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