中世騎士文学/パルチヴァール-Parzival

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第十二巻  ガーヴァーンとグラモフランツ



 さて魔法の城を解き放ち、何とか命拾いしたガーヴァーン。
 傷を癒しながら城の中を散策していたとき、偶然、遠くの景色を映し出すという魔法の柱を見つけてしまった。
 パルチヴァールの異母兄、フェイレフィースの国から運ばれてきたという、この柱に映し出されていたのは、かの公妃オルゲルーゼ。彼女が城に向かってくる姿を見るや否や、危険な城におきざりにされたこともすっかり忘れて、ガーヴァーンは再び恋のとりことなる。
 オルゲルーゼのもとに向かおうとする彼を、当然ながら城の貴婦人たちは必死で止めるが、恋する男は聞いちゃいない。(お約束)
 傷もまだいえきらぬうちから城を飛び出して、オルゲルーゼのもとへ向かってしまった。

 オルゲルーゼは、彼女に仕える護衛の騎士と一緒だった。城から出たガーヴァーンは、この騎士と一騎打ちをさせられるハメになる。これに勝つと、さらに公妃は言った、クリンショルの林に生える木の枝を手に入れよ、と。この課題が果たせれば、彼女はガーヴァーンにミンネの奉仕を認めようというのだ。
 しかし、これは思ったより危険な冒険であった。馬で飛び越せるかどうかも分からない、険しい谷が立ちふさがっていたからだ。
 オルゲルーゼに飛び越せといわれて、素直に飛び越そうとしたガーヴァーンは見事、水に転落。なんとか助かったものの、たきつけた本人、オルゲルーゼが泣いてしまうことに。
 ならやらせるな。(ちょっとしたツッコミ)

 向こう岸にたどり着き、枝を折り取ってほっとするのも束の間、この林の持ち主である、グラモフランツが現れて、待ったをかける。
 実はこの男、ガーヴァーンの妹イトニエーと相思相愛の思い人であり、かのオルゲルーセが心から憎む人物であった。なぜなら、グラモフランツは、オルゲルーゼの愛人、チデガストの殺害者だったからである。

 相手が誰なのか分かっていないグラモフランツは、自分とオルゲルーゼの関係や、イトニエーへの思いをとくとくと語り、ガーヴァーンに、枝を差し上げるかわりイトニエーに愛の言伝を伝えて欲しい、と、頼みごとをする。ガーヴァーンにしてみれば、自分の妹に伝言するのだからことは簡単だ。彼はこれを承諾する。
 しかし、グラモフランツはさらに言った。自分の父、イロート王は、ガーヴァーンの父であるロート王に殺された。(名前が紛らわしいが)
 従って、自分は仇討ちのためにロート王の息子であるガーヴァーンを討たなくてはならない…と。

 目の前に張本人がいるにもかかわらず、こんなことを言うあたり、かなり甘い。
 ガーヴァーンは正直に言う。それは自分のことである、しかし、愛するものの兄を憎むのはどうだろう、と。
 するとグラモフランツは答える、戦いは単なる仇討ちではない、互いの名誉のためでもある…と。騎士さんは名誉なんて言葉には弱い。ガーヴァーンは一騎打ちをも承諾し、枝を手にオルゲルーゼのもとへと戻ってきた。

 オルゲルーゼは、別人のように素直な女性になっていた…。
 やはり目の前で派手に水没するガーヴァーンを見てしまったせいだろうか。自分はグラモフランツを恨んでいたこと、その復讐を遂げてくれる騎士を待ち望んでいたこと、そのために、多くの騎士たちをひっかけ、力量をためしていたことなど。
 さらに、グラモフランツに復讐するため、聖杯王アンフォルタスにも近づいたが、そのためにアンフォルタスは神の怒りに触れ、今も呪いに苦しんでいること、魔法の城の仕掛けは、人をさらう魔術師クリンショルから身を守るために仕掛けたもので、この試練を乗り越える者がいれば愛を受け入れてもいいと思っていたことなど。
 なんと聖杯王の股間の傷さえも彼女のせいだったのだ。罪深い。

 力量を試すといっても、生き残れる者が少なそうな試練である。
 オルゲルーゼの国の人たちが、ガーヴァーンに思いとどまれと必死で忠告した意味も分かろうというもの。
 なお、以前ここを通ったパルチヴァールが、妻一筋で、彼女に全く興味を示さず素通りしたことをさりげに気にしていたことも打ち明けられている。

 こうして、思い三巻ぶん、幾多の試練を乗り越えたガーヴァーンはようやくオルゲルーゼを手に入れて、魔法の城の主となる。
 しかし、アルトゥース王への手紙にはそのことは伏せたまま、グラモフランツとの決闘の約束があるので、その立会人として来てくれるに、とだけしたため、小姓に託すことにした。
 叔父のアルトゥースに手紙を出したことは、祖母のアルニーヴェにも内緒であったという。




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