■アイスランド・サガ −ICELANDIC SAGA |
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「ケニング」(Kenning)は、人や物を、その属性によって彎曲に示す複合語…つまり、簡単に言うと比喩の技巧である。
たとえば、「鯨(いさな)の泳ぐあたり」といえば、海。「荒野を歩むもの」といえば鹿である。これは、叙事詩語りを聞く人々にとって共通の概念があったからこそ成立した方法であり、鯨に馴染みのない日本人や、鹿を見たことのない太平洋の島の人には通用しない。
日本で通用しそうなケニングというと…、たとえば「妖怪の住まう赤絨毯」と言って国会議事堂とかか。(冗談です)
この、比喩を巧みに使えるかどうかというのが吟遊詩人の力量を左右していたわけであり、詩人には、いわば豊富な語彙やイメージ力など、表現の才能が必要とされていたことが伺える。
ケニングにも時代ごとの流行りや個人の趣味嗜好は在り、と「船」の代称として「水に浮かぶもの」などと、ストレートに表現する、日本人にも分かりやすいものもあった。
また、単純な比喩ではなく、ちょっと考えなくては分からないような、二重・三重の複雑なケニングもあったようだ。
と言葉で言っても多分分からないと思うので、実際にどんなケニングが在るのかは、あとに挙げる、実際の使用例を見ていただきたい。
ヘイティ[heiti]について
ヘイティとは、単語を別の言葉で言い換える、代称語のことを指す。
船=「水に浮かぶもの(flota)」、といったスナオな表現がこれに当たる。機能的にはケニングに類似する。
日本語に直すと二言以上になっていても、原語で一言ならヘイティになるという。