このページをカンタンにまとめると、
「ゲルマン民族は、北欧にとどまらず、ヨーロッパ中へ移住してます。詳しくは下図を参照のこと。まぁ、ヘタな図なんで見なくてもいいですが。」
…以上。サクサクと流していきます。
えらく見難い図ですが、手ェぷるぷるさしながら描いた根性なマウス絵なので我慢して下さい。
ローマ史から見た「ゲルマン民族の大移動」は、376年、フン族に追われたゴート族が南下し、ローマ近辺を脅かした出来事のことを指しているという。 しかし、移動はこれ一回ではないし、何世紀にも渡って、ゴート族とは関係ないところでも、多くの部族が移動を繰り返していた。 原因は、北方の「気候の悪化」だったとされる。それまでも大して住みよい地域だったと思えないが、作物が育たないほど寒くなったら大問題。 暖かい新天地を求め、人々はヨーロッパを目指し、気に入った土地に国をつくっていった。 もちろん、元からそこに住んでいた人からすれば、自分たちを追い出す「侵略者」「よそ者」との戦いは必然だっただろう。 民族移動の時代は、人々が、住処をかけて激しく戦った時代でもあるのだ。 |
■各民族のアバウト解説■
例外/オレンジ色の線は、匈奴のフン族の移動。ゲルマン系ではないが、各地でゲルマン系部族やローマと衝突を繰り返しているため、無視するわけにもいかず載せてみた。さすが騎馬民族、移動距離が長い長い。ウォルムス方面へ向かった一派はブルグント族を滅ぼしたのち、フランク王国の辺りまで進出。イタリア方面へ向かった一派はラウェンナ(ベルン)の辺りでテオドリク大王(ディートリッヒのモデル)の率いるゴート族&ローマ連合軍と衝突、ちなみにテオドリク大王はこの戦いで戦死している。さらに、やるだけやって故郷に戻っていった一派もいたらしい。
デーン族/「ベーオウルフ」に登場する。シルド・シェーヴィング、ヘアルフ=デネ、ベーオウルフ(主人公とは別人)、ロースガールと4代の王について語られている。ノルウェーとデンマークの間くらい、スカンジナビア半島の南部を故郷とする。
ジュート族/同じく「ベーオウルフ」に少しだけ登場。デンマーク付近を故郷とする。
アングル・サクソン族/アングルとサクソンの二つの一族が一体化して大ブリテン島に移住。なるほど、アングロ・サクソン。ケルト系の民族とともにブリテン島へ渡り、一時期はこの島の支配権を有することになる。イギリスに残るルーン文字は、彼らの残したものなのだろうか。
フランク族/移動距離としては短い。フランス北部に自分たちの王国を作り、全盛期はかなり繁栄する。
ブルグント族/バルト3国の方面から移住。ご存知、「ニーベルンゲンの歌」のブルグント族。ライン河岸に国を作るが、フン族との戦いに敗れ南方へ逃れる。
西ゴート族・東ゴート族/元々はスカンジナビア半島にいたが、紀元前150年ごろに一部が移住を開始。もっとも移動頻度が高かった民族。ローマを席巻し、最初に文明に触れた。ルーン文字の開発者と言われる。。
この史実をもとにしたのか、ディートリッヒ伝説に登場する、ディートリッヒの叔父エルムリッヒ(エルマナリクがモデル)は、ローマの王として描かれている。ローマからは、恐るべき戦闘民族として恐れられていた。ディートリッヒのモデルとなったテオドリク王の率いた民族で、物語の中と同じく、ラウェンナを中心地として国をつくるが、フン族の急襲を受けて結果的には敗戦している。
ヴァンダル人/英語でヴァンダルというと野蛮人を意味するくらいだから、よっぽど荒っぽい人々だったのだろう。移動距離も長く、スペイン・ポルトガルを越えてアルジェリアまで遠征している。ローマ人は、フン族とヴァンダル人に挟まれて苦労していたようだ。
「ローマ庇護のもとに行われた民族移動」とも呼ばれる。
その他の資料・紀元1世紀ごろ 岩波文庫「ゲルマーニア」付属地図より。 上に描いた地図は4世紀−5世紀を中心とした移動図だが、こちらはタキトゥスの生きた1世紀ごろの記録に基づいた民族分布図。 そのままスキャナで読み込んだだけなので、画像が悪いのは勘弁。(て、いうか著作権にひっかかる?) |
一世紀には、既に多くのゲルマン系の民族がヨーロッパ全体に広がっていたことが分る。各々、それほど大きな部族では無かっただろうが。
これらの部族の移動とともに、神話が分散したことは間違いないだろうし、、各々の土地で変化して、本来の故郷へと逆輸入された可能性もある。(もし、地中海付近まで南下した部族がギリシア神話に触れ、そのモチーフを取り込んで北欧神話の中に混ぜ込んだとしたら、北欧神話はギリシア神話に似た部分を持つことになる)
ゲルマン人は、移住を繰り返した民族だった。従がって、神話もまた、その移動範囲と切り離して考えることは出来ないだろう。
北欧神話についてだけ知りたい方はここで終了。
ここから先は、補足としてアイスランド・サガについて語る。なぜアイスランドが重要かというと、現在残されている「北欧神話」の文献資料のほとんどが、アイスランドで仕上げられたものだからだ。
ゲルマン民族は移住を繰り返した。その先は、ヨーロッパ大陸だけではなく、アイスランドという「島」でもあった。
大陸がキリスト教化され、北欧神話の神々への信仰が消えていった後も、アイスランドには、古来の神々と神話が生き残っていたのだ。
そんな「神話の残された島」アイスランドへ移住した人々の実生活を物語化して語ったものが「アイスランド・サガ」である。
神話と、神話を語った人々と、双方について語らなければ、「北欧神話とは何か」という疑問に、答えを出すことは出来ない。
と、いうわけで、時間と興味のある人は付き合っていだたけると在り難い。