フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA

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勇者より強い! 賢者のナゾ




 勇者といえばだいたいが世界救ったり魔王倒したりと最強なイメージですが(笑)、「カレワラ」の世界では何と賢者が世界最強です。
 何でか、というと、賢者には知恵があるからなのです。

 剣と魔法の世界では、戦いには体力必須ですが、カレワラ世界では体力よりむしろ気力のほうが必須条件のようです。と、いうのも、人間の力なぞ所詮は自然の前にはどうしようもない…という思想があったからではないかと考えられます。

 古くから人が定住していたとはいえ、フィンランドの気候は、決して暮らしやすいものではないはずです。長い冬、厳寒の季節を乗り切るために、人々は、知恵を絞らなければならなかったでしょう。
 そこには、単に筋肉さえあれば未来が切り開けると信じている某国のような幼い信念が通用するようなスキは全く伺えません。
 強くあるためには、たとえケンもホロロにフられても、海に叩き込まれて一週間くらい漂っても、巨人に飲み込まれたり冥界から出られなくなったりしても、また立ち直って新たな道に挑むような不屈の根性が必要なのです。


 ワイナミョイネンじじいは、まさにこの不屈の精神の持ち主。ド根性。コケてもただでは起きないし、失敗しても失敗しても立ち上がり続けるお人です。
 だからこそ人々は、呪文をド忘れしたり、しょっちゅう失敗したりする彼に、一目置いていたのでしょう。
 勇者といえば、「僕はもう戦いたくない!」とか「僕じゃダメなんだ」とか言いながら逃げ出して、仲間に連れ戻されるのがパターンですが(笑)、ジジイはそんな軟弱なセリフは吐きません。自らの力で立ち上がり、ひたすら女の尻を追い掛け回します…。

 勇者 兼 賢者です。魔物も倒せます。
 その気力を別の方向に向けりゃあ世のため人のためになるだろうに、なんて、野暮なことは言っちゃいけません。ジジイにとっては己の幸せこそが全てなのです。なんたって彼はエライですからね。ルールは自分で決めるのです。自分が幸せになるためなら、冥界のオキテだって何だって無視無視。
 自分が幸せになるついでに、他の人も幸せになれば? と、いう感じ。

 …なんだか、彼って、賢者っていうより、むしろ魔王かな、という気がしないでもないですが…
 だからこそ、物語の終わりには、人間によって追放されてしまうのかもしれません。




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