フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA

サイトTOP2号館TOPコンテンツTOP


ワイナミョイネンの天地創造



 「カレワラ」では、ストーリーを一本化するために多くの部分を省いたり、つなげたりして再編成しなおしているのですが、リョンロットが採集した原型の歌では、「ワイナミョイネンが天地を創造した」ことになっているものもありました。


 「カレワラ」の序章では、イルマタルの膝の上に生みつけられた卵が転がり落ちて割れ、天地を作っているのですが、原詩では、第6章でワイナミョイネンが射落とされ、海に落ちるシーンのあとに続けて、こう。

 
 哀れな惨めな鳥
 みじめな鳥はトゥルヤの土地で
 舞い上がり 飛びかすめ
 巣の場所を探していた
 海の中に黒いものをみつけた
 波の上に青いものを。

 巣の場所をさがしていた
 乾いた草をかきたてた、
 3つの卵を産みつけた
 3つの金の卵を。
 こすり孵そうとした。

 さて老ワイナミョイニは
 膝が焼けるのを感じた
 自分の膝をゆすったとき
 卵は水中へ転がった。



…と、なっており、イルマタルの役は本来、ワイナミョイネンがしていたことになります。
 乙女の膝ならともかく、海の中に座り込んでるジジイの膝に卵を産む、って…いやいや。そこはツッコミ入れちゃダメですか。

 これが、「英雄ワイナミョイネンはかつて神だったのではないか」と、いう説の一つの根拠にもなっているわけですが。

 さらにワイナミョイネンは、本来、水の母イルマタルから生まれたものではなかったようです。
 「母の胎内に30回の夏も留まった」のは、ワイナミョイネンの父、トゥリラス。生まれることが出来ず自分から母の子宮を裂いて生まれてきたことになっています。リョンロットは、このトゥリラスをそのままワイナミョイネンに置き換え、異常妊娠をイルマタルに置き換えて、序章部分を作り上げたのだと考えられています。

 とすれば、ワイナミョイネンは世界のはじまりから居た男ということになりますし、風で孕んだ子ではなく、父親もいたことになります。
 原カレワラでのワイナミョイネンは、「新カレワラ」よりも、神に近い存在だったのかもしれません。



前へ   <   戻る   >  次へ