フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA

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天の神ウッコの世界創造


 ふつう神話というと天地創造、世界の始まりから語られるものですが、「カレワラ」は、主人公ワイナミョイネンの誕生から始まっています。
 では、主人公たちのいる世界は、一体どのようにして作られたのでしょう?
 この「創世」の部分の物語は叙事詩の最初の部分ではなく、「カレワラ」本編の中では第9章に間接的に出てきています。ワイナミョイネンが、老人に鉄の起源について語るシーンです。
 この創世神話を、少し詳しく出してみましょう。

 かつて、世界は大気の中にあった。
 そこに、世界の創造主である大気の神ウッコが生まれ、ウッコは、大気の中から水を別ち、海を作った。水から陸地を切り離し、大陸を創ったが、そこにはまだ物質というものがなかった。
 そこでウッコは手をすり合わせ、左の膝小僧にあてた。すると、3人の乙女たちが誕生した。


 と、いうことは、フィンランドの創世神話では、世界は大気から誕生したことになりますね。海や水から始まるパターンは結構あるのですが何もない大気からというのは珍しいかもしれません。しかも、この記述からするに、ウッコは単体で生殖を行える神だったことになります。
 エジプトの原初の神アトゥムも似たようなやりかたで、体の部分部分で性別が違ってたりするので、手が男で膝が女でも、別に不思議じゃないですけどね。神様だからオッケーです。(本当?)

 さらに創世の伝承は続きます。

 ----3人の乙女たちは雲間から乳を搾り、長女は黒い乳、次女は白い乳、三女が赤い乳を搾って大地に落とす。それぞれの乳からさまざまな鉄が生まれ…

 と、なっているのですが、果たして生まれたのは鉄だけだったでしょうか。少し疑問があります。
 フィンランドの伝承は、キリスト教が伝わったときにはなりの部分が失われたとあり、「カレワラ」に記録されたのは、かなり限られた部分です。もしかすると、この3人の乙女は、他の物質も生み出していたのではないでしょうか…?
 この創世の神話が語られているのは第9章「鉄の起源」という部分でのことなので、鉄のことしか詳しく語られていませんが、鉄以外の物質の起源はどうなっていたのでしょう。ウッコ自身が生み出したのか、乙女たちなのか、それとも、彼女たちが生み出した別の存在なのか。

 3人の乙女は、「自然の乙女」とも呼ばれています。
 と、いうことは、自然界の物質は彼女たちが生み出したのだ、という考え方もできます。たとえば木とか、草とか…。

 創世の伝承は独立してさまざまな形式が語り継がれているようなのですが、他のものは、カレワラ世界につながっているかどうかの自信がありません。

 なお、天の神ウッコは、絶対の最高神ではありませんでした。
 この人に関係なく天地の作られる物語もあります。 それは次で説明することにしましょう。




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