■シャルルマーニュ伝説 |
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つっこみルネッサンス
アンジェリカは、聞くも涙、語るも涙なこれまでの体験を、サクリパンに語った。
自分がどうして、こんな遠く離れたフランスにいるのか…町の包囲を抜けるためにオルランドゥを利用したので、ハッキリ言ってオルランドゥは捨て駒だったことを強調した。「あんなのどうでもいいの。私にはあなただけよ」と、言わんばかりのセリフまわしでサクリパンを誘惑した。こんなんで引っかかる男も男だ…
と、その時、藪をわけて近づいてくる騎馬の音が。
ハッ、として怯えるアンジェリカ。剣を抜くサクリパン。だがそこに現れたのは、純白のスカーフをつけた見知らぬ騎士。騎士と見たら勝負せよ、それが騎士の掟也。
サクリパン「勝負だー!」
見知らぬ騎士「……。」
二人はろくに物も言わずに対峙した。そして槍をかまえて、一気に突撃ー!
…したところが、あまりに衝撃が激しくて、サクリパンの馬はショック死してしまったのだった。しかもサクリパンの上に倒れてきた。これは重いですよ〜ヘタすりゃ圧死です、圧死。
そんなサクリパンなんか眼中に無い、とばかり、悠々と去っていく白い騎士。ようやく死んだ馬の下から抜け出したサクリパンの目の前を優雅に通りかかったのは、フランスの国の使者だった。
「もし、騎士様。ここを白いスカーフの騎士が通りませんでしたか。」
「ああ、通ったよ」
サクリパンは超不機嫌。
「そいつが私をこんな目にあわせたのだ。奴の名を知っているなら教えてくれ。あれは一体、誰なのだ?」
「はい。美しいご婦人、勇士リナルド様の妹ご、ブラダマンテ様です。」
「……。」
「ところで、ブラダマンテ様はどちらに行きました?」
方角を教えられると、使者はさっさと行ってしまった。残されて悔しがるのはサクリパン。女に負けた…!(ショックでけぇ)
しかも馬まで失って。
「くそう。どうすりゃいいんだ。馬が無ければ我々は!」
「待って。あの音を聞いて。あれは…」
そう、このとき、リナルドはいなくなった自分の馬を探して森に入っていた。彼らがいるのも、その森だったのだ。
主人からはぐれた馬、バヤールは、アンジェリカを見つけて駆け寄ってきた。
遡ることだいぶ前、苦労のすえアンジェリカのもとでよい待遇を受けていたバヤールは、そのことを覚えていて、挨拶しに来たのだった。やはり馬らしからぬ馬である(笑)
これはチャンス、とばかり近づくサクリパン。だがバヤールはサクリパンには何の恩義も無い。
しかもタイミング悪くリナルドまでそこに到着してしまい…
リナルド「見つけたぞ、盗人め。オレの女と馬を返せ!!」
…馬は兎も角、女のほうは。
サクリパン「上等だ。この馬も女性も、貴様ごときには相応しくない。我が剣にかけて、貰い受ける!」
アンジェリカ「やめて! お願い、はやく逃げましょう。彼と戦ってはいけないわ」
サクリパン「何を言います。私に、あいつからあなたを守る力が無いとでも思いかっ?!」
アンジェリカ(まさしくその通りだっつーの馬鹿! アンタじゃ敵わないでしょうがッッ!)
…さっきリナルドの妹に一撃で負けたことを忘れてるんだよ、この人は。あーあーあー。
アンジェリカは今さらながらに、こんな奴に頼った我が身を呪った。この時、彼女の恋愛運は人生最低調。
かくして戦いは始まった。
当たり前というか戦う前から分かってたことだが、リナルドのほうが優勢だ。リナルドの持つ名剣・フスベルタは、相手の防具をやすやすと切り裂き、今や勝利は時間の問題。
魔法の泉の力でリナルドを心の底から嫌悪しているアンジェリカには、リナルドのものになるなんて、到底考えられなかった。
「そんなことになるくらいならっ…!」
男たちが戦いに夢中の間に逃げ出すアンジェリカ。
そして走り続けた彼女は、森に住む隠者と出会う。隠者には魔法の心得があり、切羽つまって男から逃げてきたらしい美しい乙女の願いを聞き届けてやった。彼はもちろん、アンジェリカがこれまでどんなことをやらかしてきたのか知らないわけだし、いつの世も、意にそわぬ結婚から逃げ出す若い娘てぇのは、いるわけで(笑)
「よかろう。では私が、そのシツコイ男とやらを遠ざけて進ぜよう。よっせ、と」
隠者は魔法でゴブリンを召喚。ゴブリンはお百姓に変装して、戦っているリナルドのところへ行き、こう告げた。
「もし! そこな、戦っておられるお方。何をぐずぐずしてられるのか、早く国に帰られい。今やオルランドゥは、アンジェリカ姫をさらって帰国しつつあるぞい」
「…なに?! あっ、そういやアンジェリカがいない!!」
遅いよ。君。
意外とアンジェリカのことなんかどうでもいいのな。戦いのほうが大事なんだ^^;
いまや敗北明らかなサクリパンをほったらかし、リナルドは自分の馬バヤールに飛び乗って、とっととその場を後にした。
「オルランドゥ…ぶっころーーす!」
疾風の如く、一日20時間ぶっ通しで走り続け、たった一日でパリに着く在り得ない馬・バヤール。(笑)
もちろんパリに戻っても、そこにオルランドゥの姿は無い。
さきの戦にボロ負けしたシャルルマーニュは残った手勢を集めており、リナルドも、当然、負け戦から戻ってきたものとして大帝に見られていた。
途中でみちくさ食って同士討ちしてたことなんて、言えるハズもなかった。
「ちょうどよいところに戻ったな、リナルドよ。奴らはまた攻めてくる。その前に援軍をたのまねばならぬ。今すぐ、イングランドへ向かってくれ」
「…イングランド…?!」
上司の命令とあっては、行かねばならぬ使命の旅へ。リナルドはこれでひとまず舞台を降りる。
[次回は、ロジェロを探すブラダマンテの旅の続きから。]