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■シャルルマーニュ伝説 |
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つっこみルネッサンス
前回リナルドは、一騎打ちしていたアルジェリア王ロドモンに逃げられ、その後、ロジェロと戦って別れた。
しかしブラダマンテと同じく、敗走する軍には追いつけなかったのか、ひとり、決闘のケリをつけたくてアルデンヌの森の中を彷徨っていた。二回も勝負を中断されたので、気の短い彼はかなりキレていた。
「誰でもいいからオレと勝負しろーー！…ん？」
目の前に、なにやら人影が。…裸の子供だ。こんなところで、何してるのか？
踊っていた。
子供は美しい少女たちと手を繋いで、マイムマイムに打ち興じていた。（嘘だって） リナルドが近づくと、子供たちは突然、バラの百合の花を投げつけ、リナルドを落馬させた。（花で落馬？）
さらに落ちたリナルドをひっぱりまわし、花の枝でさんざんぶちのめした。
「な、なんなんだ一体…」
「愚か者、あなたはすべての者が従う＜あのお方＞の力に反逆した報いを受けたのです。＜あのお方＞を拒むことは何者にも許されない。行きなさい、＜あのお方＞を受け入れるためには、泉の水を飲むのです！」
「あのお方って…。」
「そのお方の名は＜愛＞と言います」
「……。」
もう、いい加減昔の話なのでリナルド本人も忘れていたかもしれない。
かつて、アンジェリカを追ってこの森に入ったとき、彼は偶然から「憎悪の泉」の水を飲んでしまっていた。そして、その瞬間からアンジェリカのことが死ぬほどキライになってしまっていた。
騎士に必須なのは愛・勇気・信仰！
愛を拒絶した彼には、騎士にとって絶対無敵のミンネ婦人からの報いを受ける理由があったわけだ。
（でも、その泉ってもとはといえばマーリンが作ったモンだし、「立ち入り禁止」の札もたててなかったマーリンが悪いよなァ）
愛の花でしたたかに殴られた彼は、全身傷まみれ。よろよろしながら泉に這いよった。その泉は「愛の泉」、甘い味のする、愛を蘇らせる泉だった…。
飲んでいるうちにリナルドは思い出した。アンジェリカは、あんなに良くしてくれたのに、自分はすべてを拒絶した。
「なんてことを！ あぁ勿体ねーー！」
蘇りくる記憶。自分に言い寄ってくる絶世の美女を無視った愚かな所業の数々。据え膳食わぬは男の恥！ そりゃ、愛の神に叱られるわけさー。
慌てたリナルドは愛馬バヤールに飛び乗って、アンジェリカの国を目指した。今までの非礼を詫びるために。今度こそ、彼女の愛を手に入れるために。
それより少し前、オルランドゥ。
仲間たちはみんな国へ戻ったのに、一人だけアンジェリカの国に残ったオルランドゥ。しかしアンジェリカの心は、以前飲んだ「愛の泉」の水のせいで、リナルドだけに向けられている。
戦争はいまだ終わらず、町は包囲されたまま。このままでは城は陥落すると思ったアンジェリカは、オルランドゥに「一緒にフランスへ渡って欲しい」と懇願した。
もちろん、リナルドに会いたい一心で。
だが、オルランドゥは、そのことに気がついていなかった…。
なんだか、もう結末が見えてきたような気がする＾＾；
フランスへついたオルランドゥとアンジェリカは、ひと休みするためにアルデンヌの森へ入った。そして偶然から、アンジェリカは木陰の泉に立ち寄った。その泉は「侮蔑の泉」、愛する相手をとことん嫌ってしまう、魔法の泉だった。
リナルドとオルランドゥ、双方が出会ったのは、まさにこの森、この瞬間。
リナルド「おお、愛しのアンジェリカ！」
アンジェリカ「いやああっ、あなたのものになるくらいなら死んだほうがマシよーー！」
彼らの感情は、今の今までと全く逆のものに入れ替わってしまっていたのである。（笑）
逃げる女と言い寄る男、これで世の中にありがちなパターンへと収まったことはともかくとして。
オルランドゥ「ふざけるなリナルド！ 彼女は、この俺がフランスに連れて来た。お前の好きにはさせん！」
リナルド「何だと？ この噛ませ犬め。彼女はオレを愛している。オレにだけ良くしてくれたのだぞ！」
アンジェリカ「今は違うわ！」
オルランドゥ「そらみろ。貴様は己のあつかましさを知れ！」
なんかもう、この騎士さんたち、ひたすら口ゲンカしてるってカンジ。＾＾；
キレた二人の若者は、次の瞬間には剣を抜いて、「文句あるならかかってこいゴルァ」…と、たちまちすごい闘いになってしまった。
あまりの迫力に、アンジェリカは怖くなって逃げ出した。
♪おお〜愛は風のごとく 追いかければにげてゆき、逃げようとすれば追いかける〜♪
愛は〜愛は風のごと〜く〜 そして彼女は去ってゆく〜♪
（※中学の時の演劇で、Ｓ君が書いたギリシア神話ネタの脚本ヨリ。分る人にしか分からない）
アンジェリカが逃げ込んだのは、よりにもよって、シャルルマーニュのテントだった。まあ正しい選択です、親分のテントなら。
そのときシャルルマーニュは、スペインから攻め込んでくるマルシリウスの軍を防ぐため軍を率いていた。話を聞いた王は戦っていた二人をなんとか引き離し、この戦いですぐれた働きをしたほうに彼女を与えるから、しっかり戦え、と言ってやった。
でも無駄だった、戦争に負けちゃったんだもん。
シャルルマーニュ側の軍は、いたるところで敗走し、混乱の機に乗じてアンジェリカは逃げた。逃げて自分の国に帰るつもりだったのだ。
森の中で休息を取るアンジェリカ。魔法の指輪は、以前小人に奪われて、失われてしまっている。どうすれば一人で国へ帰れるだろうかと、思案していたところだった。
そこへ通りかかる見覚えのある騎士。
それは…チュルケスの王、サクリパンだった。
アンジェリカ恋しさに戦争と国ほっぽらかして追いかけてきたはいいものの、アンジェリカはすでにシャルルマーニュの保護下にあると知り、がっかりしていたところだった。（さすがの彼も、単身シャルルマーニュに勝負を挑む気にはならなかったらしい）
それを見ていたアンジェリカは、少しくらい、この人の好意を利用したってバチは当たるまい、と思った。
とことん悪い女である…。
サクリパンにちかづき、これまでのことを話し、「オルランドゥの護衛を利用しただけよ、彼を愛しているわけではないわ」なんて囁き、希望を持たせ、「一緒に国へ帰って欲しいの」とか紛らわしいことを言ってその気にさせた。
ああ、かわいそうにサクリパン。
ただ利用されているだけなのに。
[そして始まる、サクリパンの不幸。]
