2005年6月13日
「妻籠宿(つまごじゅく)」
長野県木曽郡南木曾町
地図
撮影 OLYMPUS E-10
馬籠宿に続いて訪れたのは妻籠宿(つまごじゅく)。 歩くと遠いけど、車でも細い登りのクネクネ山道 なので、けっこう時間がかかった(30分くらい)。 ここの駐車場はすべて有料(500円)。 3ヶ所あるようだけど、写真のここは中央駐車場。 有料駐車場ってのはどうなんだと思ったのだけど、 帰るときにはこの500円は安いなと思った。 こちらは大型バスの姿もなく、意外と閑散としてる。 たまたまだったのかもしれないけど。 |
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入ってすぐ、おおー、これは……。 しばし、立ち尽くした後、 いいな、とつぶやく。 こりゃいいや。 |
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うーん、素敵だ。素晴らしい。 感心することしきりの私。 町のたたずまいといい、建物の様子といい、 江戸時代の空気感をかなり保っているに違いない。 と思わせるだけの説得力がある。 歳月を経た本物感が色濃く、 すげえなここ、と思わずうなる。 古めかしさにほとんどスキがない。 |
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建物に寄ると、更に本物感が強まる。 江戸時代のものをよくここまで保存したものだ。 やはり実際に使っているからだろう。 家は住まないとすぐ駄目になるというけど、 ここは実際に宿屋としても、民家としても、 ほとんどが今現在使われてるから、 それでここまでもっているのだろう。 手入れも大変だろうし、不便も多いと思うけど、 その思い入れは訪れる者にちゃんと伝わる。 単なる観光客たのための見せ物じゃない。 |
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延命地蔵。 これまた古い。 この奥の上に光徳寺というお寺さんもあったけど、 そっちへは寄らなかった。 行っておけばよかったな、と後から思った。 しだれ桜の老木があるらしいから、 桜シーズンに行った際にはぜひ寄りたい。 |
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屋根。 よく知らないのだけど、板葺きだろうか。 江戸時代の長屋の屋根みたい。 そのへんの河原で拾ってきたような石が いい感じ。 |
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妻籠宿という宿屋さんかと思ったら そうではないらしい? もしかして一般の民家だったか。 なのに、勝手に撮影。 境界線が曖昧なので、撮っていいところと そうじゃないところの区別が難しい。 ある程度は覚悟してるというかあきらめてる のだろうけど。 室内も著しく雰囲気を壊すものは入り口付近に 置けないから大変だ。 |
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上嵯峨屋という当時の宿を保存、 展示してあるところ。 ここは誰も住んでないはず。 18世紀中頃のいわゆる木賃宿の姿を 当時のままとどめているらしい。 そういえば最近、木賃宿という言葉を 耳にしなくなった。 庶民の宿ということで、安宿の代名詞として わりと最近まで使われていたと思うのだけど。 |
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宿場町にはつきものの、枡形(敵の侵入を防ぐ という目的で、道を直角に曲げてある場所)あたり にある松代屋。 いい雰囲気出てるな。 かつて、映画『座頭市』シリーズでここが使われた というから、今度観るときは気をつけてみよう。 現在は旅館として営業中なので、 ここに泊まることもできる。 |
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お土産屋さん通り。 手作り感覚あふれる小物などが たくさん並んでいる。 が、あまり商売気は感じず、 雰囲気作りの役割の方が大きいかも。 もちろん、売れればそれに越したことはない。 注目すべき点は建物の細部だ。 悪く言えばボロボロのガタガタなんだけど、 この風合いが素晴らしい。 クレイジーケンバンドの横山剣かってくらい イイネ! イイネ! と連発する私であった。 |
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たまたま人がたくさん集まっているシーン。 ここだけ見ると賑わっているようだけど、 他の大部分は歩く人も少なく、とても落ち着いた 雰囲気に包まれている。 大勢の人がぞろぞろ歩いてた馬籠とここは 明らかに空気感が違う。 こちらはとってもなごむ感じ。 |
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枡形の出口あたり。 手前のは常夜灯かな。 奥の大きな建物は何だろう。 「かどや」という店だったか違ったか。 これもすごいと思ったのは、全面的に木で 出来ているところだ。 当たり前といえば当たり前なんだけど、 オール木製。戸も手すりも板もその他も。 超木製だぜ、とわけの分からない感想を持つ。 |
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奥の方へとやって来た。 こっちは更に人が少ない。 住人の人が木製のベンチに座って おしゃべりをしたりしていて、 普通の生活が垣間見える。 このあたりに妻籠宿本陣や脇本陣奥谷があって、 それぞれ中に入るには300円と600円かかる。 私は入ってない。ちょっと高いし。 個人的には内部や資料よりも外観好きなんで、 こういうところは入らないことが多い。 |
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奥へ行くほど生活感が強まる。 こんなふうに洗濯物が干してあったり。 住民の車が庭に置いてあったりもする。 ただ、それはそれで面白いと思う。 こういう歴史的な建物で現代的な暮らしをする ギャップを想像するのも楽しい。 これは外から見えてもOKだろうけど、 これは駄目かもな、とかいう葛藤も きっとあるに違いない。 通りに面したとこにBSアンテナは つけられない、とか。 |
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郵便受けまで木製。 このあたりの徹底されている様は気持ちがいい。 住民全体で町並みを保存しようという 意志が感じられる。 笑ったのが木の板に書かれた注意書き。 「ご用のない人は戸を開けないでください」 これまで散々勝手に開けられたり、 入ってこられたりしたんだろうな。 普通に生活してるところに突然ノックもせず 見知らぬ人が入ってきたら、分かっていても ちょっと怖いだろう。 |
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これは郵便ポストだ。 黒塗りで鉄製だろうか。 ここに手紙を投函すると、妻籠宿の飛脚さんが 集めにきてくれるようになっている。 本物の飛脚の格好をした人が確かいたはずだ。 あれは郵便局員なんだろうか。 でも実際、手紙を配っていることは確か。 南京錠もいかにもという感じだ。 |
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これもいいなと思った。 何に使うのか分からないけど、 木をくりぬいて、流した水をそこにためるように してある。何かを洗ったりするためのものだろうか。 全体からティテールまで、演出は申し分ない。 |
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ちょっと前後したけど、ここが妻籠宿本陣。 うっかり入っていきそうになって、 横の窓口に人がいることに気づいて 思いとどまった。 いかん、いかん、有料だった。 すぐ隣のトイレに入ってお茶を濁す。 トイレは近代的なものだった。 ここまで江戸時代風にされてしまうと、 それはちょっと困る。 |
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ここの通り全体、すごい数のツバメが 飛び交っていた。 ちょうど子供が生まれる時期のようで、 巣もたくさんあって、子ツバメがエサをねだって 鳴き、親ツバメが戻ったりまた飛び去ったり、 忙しくしていた。 ツバメたちもここの雰囲気に馴染むものを 感じているのだろう。 |
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一番奥を突き抜けたあたりにある、「鯉岩」。 かなり巨大。 明治時代の濃尾地震で頭の部分が 落ちて形が変わってしまったらしい。 中山道の三名石の一つだったとか。 |
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戦国時代、関所があったという口留番所跡に 咲いていた、ユキノシタ。 たぶん自生だと思うけど、どうなんだろう。 河川環境楽園で見たのは植えられたものだった。 野草としては初めて見る。 面白い格好をしてる。 |
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最後に振り返って、もう一度この宿場町を 心にとどめ置いた。 ここはいいとこだったなぁ(しみじみ)と 思いつつ、妻籠宿を後にした。 |
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馬籠宿と妻籠宿を比較してどうこうということはあまり意味がないのかもしれないけど、近くにあって、同じような宿場町を保存してあるところなので、やはりどうしても比べてしまう。 両方行って自分で比べてみるのが一番ではあるけど、個人的には断然妻籠宿が気に入った。古さが本物で、それを町の人間が力を合わせて保存していこうという姿勢に好感が持てる。観光地である以前に、好きでここに住んでいるのだろうと想像する。 観光地であることを前面に出している馬籠宿とはそこが一番大きな違いなのかもしれない。 ただ、馬籠宿にはあちらにしかないよさがある。それはなんといっても周りの雄大な景色との一体感だ。あれは妻籠にはない。 あと、妻籠の道がアスファルトなのに対して馬籠は石畳なのはやはりよかった。 というわけで、結局のところ、両方行くのが一番ということになる。どちらにもそれぞれのよさがあるから。 車で移動すれば30分もかからないし、どちらの宿場町通りも、往復ゆっくり歩いても1時間かからない。 宿から宿まで歩いて移動できればもっといい。 またお気に入りのスポットがひとつ増えた。特に妻籠宿は誰彼となくオススメしたいスポットだ。 季節はいつということはないのだけど、写真ということを考えると、事情が許せば雨上がりなんかが最高だと思う(この日は日差しが強くて建物が暗い分、かなり白飛びが激しくなってしまった。 泊まれるなら、夕暮れ時なんかもとってもよさそう。まだ空に明るさが少し残っていて、宿屋の灯りがともり始めたときなんかが。 所在: 長野県木曽郡南木曽町吾妻2159-2 時間: 終日(ただし、店や資料館などはそれぞれ営業時間があるはず) 入場料: 妻籠宿自体は無料、一部有料施設あり 定休日: 基本的にはなし、一部例外ありだと思う 駐車場: 有料500円 公式ページ |