雑感書評-音楽

井上陽水「陽水Ⅱセンチメンタル」


昭和47年12月10日発売 ポリドール
井上陽水と言うと、最近は変なおじさんの様にしか思われていないかも知れないが(流石にそんなことはないか)昔からかなり良い歌を歌っている。今回採り上げたのは、彼のセカンドアルバムの「陽水Ⅱセンチメンタル」である。

日本初のミリオンセラーアルバムは皆様御案内の通り3rdの「氷の世界」だが、私はこちらの方が好きでよく聴いている。彼はその後ポリドールから独立して、小室等等とフォーライフレコードを設立するが、私はポリドール時代の井上陽水の方を好むようだ。それはいかにもフォークっていう感じがモクモクと臭ってくるし、歌い方も素直だからなのだが、ここらへん異論のある向きもあるかも知れない。でもフォーライフ以降も好きですよ。

さてこのアルバムは1曲目の「つめたい部屋の世界地図」からいきなりの名曲である。この切なさが分からないようでは人間とは言えない、と言いたいぐらいの名曲だ。何故これが「Golden Best」に入ってないのだろうか。「東へ西へ」は本木雅弘が突然カヴァーして歌っていて驚いた。この曲ぐらいから、段々歌詞が分からなくなっていく(行き着く先は「アジアの純真」)。「夜のバス」も凄い曲。田舎の山道を夜中に独りでバスの最後尾に乗っているような感覚に襲われてしまう。そして「能古島の片想い」。いいなー、と浸ってしまう。ちゃっぷーん、ちゃぷちゃぷ。因みに「のこのしま」と読みます。実在。

本作は、1枚目の「断絶」は荒削りだけど、3枚目の「氷の世界」は売れ筋系になりつつあるなという2作に挟まれた微妙な点に位地にする。更に言えば、井上陽水のアルバムの中で唯一シングルになった曲が入っていないアルバムでもある(註)。それでいて、これだけの作品群…。とにかく初期・井上陽水を知りたい人はベスト盤も色々出てるけど、それと併せて本作も鑑賞すれば完璧でしょう、と言うか必携。


(註) 「能古島の片想い」は、平成2年に能古島の「のこのしまアイランドパーク」でのみ地域限定のシングルとして発売された。

(文中敬称略)


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