〜オープンシステムとの出会い〜
出会い
建築情報誌CCIを読んで”建築革命宣言オープンシステム”を知った。自宅の地鎮祭を2000年1月末に終わらせ2月着工、日々の設計と自宅建設と忙しい日々を送り、3月になり確定申告で妻が事務所にくるようになり、事務作業の合間にCCIを熱心に読んでいた。”私に読んで見て”と言うのである。私はさっと読んで、”へーこんなシステムあるんだ。こんな人もいるんだ”と思った。それが、最初の出会いであった。
一生一度の我が家
4月入居の賃貸住宅の開発検査、建築、消防検査と悪天候で工事が進まない中で、現場監督さんへのアドバイスで追われていた。平行して、小規模のRC分譲住宅の設計、RC賃貸ワンルームの設計で、自宅の現場をじっくり見る状況ではなかった。その時期、事務所は隣の大宮市に在るから、自宅の打ち合わせのために、また戻ると言う繰り返しは、かなりの時間のロスであった。職人さんの親方の都合で10時、2時、4時と言われて困っていた。監督さんは、それに合わせて来ればいいが、私にはきつかった。
しかし、一生一回の我が家である。そこで、考えたのは、5軒先に住まいを借りていたので、朝の現場打ち合わせをすることである。近所の迷惑になるので、8時からの作業開始だが、職人さんは7:30には来ているからである。
自分が情けない

原価公開により経費を掛けて払うことは、建主には不利である。しかし、契約し始まったのだから後戻りはできない。原価公開とは建設会社が間違えてコンクリートをはつり、壊すことになったら、建主が払うのである。間違い、やり直し、やり残しは原価にひびいてくると分かったのは、始まってからである。間違いの責任を追及しても何もならない。そこで職人さんが来ている毎朝7:30から8:30ぐらいを打ち合わせ時間として、チェックもその時間とした。現場はスムーズに動きはじめたのだ。設計士、建主、職人さんは新しい関係を持ち始めた。昔、棟梁や現場監督さんがやっていた関係を、やり始めたのだ。分業化され、若い現場監督は今の若者の考えを反映してか、担当の若い現場監督さんは8:00前に来るのは難しいらしい。古参監督は今回の実験住宅に非常に興味をもっていたし、自宅をRCでやってみたいと言っていたので、できる限りの協力をしてくれたに違いない。しかし、他にも現場を持っている。全面的に監督さんを当てにはできないのだ。文句をいうより自分でやるしかない。社長、古参監督に若い監督の面倒を見てくれと頼まれたが、私は疑問を持つよりも、この先不安になってきた。
自宅を任せた自分自信が情けない。

建設会社には、我が家の思いはないのか

しかし、我が家は成功させる以外にない。屋上の雨漏り検査(水張り検査)の不手際で我慢できなくなり、一同(監督さん、社長さん)に集まってもらい、”ひとごとで仕事をしてませんか”と言ってしまいました。考えると建築士だから構造的問題等に気がつくのだが、かなり社長さんは怒っていました。構造的欠陥を生むかも知れない重大なことで、私自信せっぱ詰まっていました。若い監督さんは心入れ替え一生懸命になったが、それでも朝はやはりだめだった。”原価公開”すら心配をしたが、その会社は信用第一でお客様第一主義をうたっているし、社長、経理担当、また古参監督も正義感溢れる人たちに違いないと信ずる他なかった。現場の方は、朝の監督不在の現場打ち合わせで動き出し、鉄筋工事の配筋違いもなくなり、型枠の手戻りもない、大工さんは今日の仕事で納まらないところを相談し、内装工事業者は納まらないところがあっても、次の朝に聞くようになり、どんどんと作業を進めるようになった。分担した仕事を終えそうな職人さんは、前日チェックをした。掃除をしっかりやって終える職人さんもいるが、全部ではないので、掃除は若い監督さんもやったが、休日、または、職人さんの来ない日は私がやった。監督の仕事は、専門業者を監督すると思い人もいるが、基本は、技術者の資質をもったひとが、現場と職人の仕事を見ることだ。現在の建築現場は、受けた仕事をいかに効率用よくまっとうするかではなく、受注金額からいかに苦しくなっている建設会社の利益確保を優先し、建設会社は、職人の仕事振りの評価より金額優先、依頼主の方は受注時点から、目が移っていく。施主主導の家づくりは、契約段階から、建設会社、工務店主導の家づくりと変化する。あいまいな仕様での一括請負は、危険である。また、このような原価公開方式は、私が建築士であるからできたので、普通は、大変務難しいだろう。

職人さんは違っていた

工程は職人さんの要望をきき、監督さんの工程表を時には直してもらった。私が思うに、この現場に限らず、現場の把握ができない監督の工程表に、職人さんがついていくのには、同業者の応援を頼む、夜仕事をするようになる等、よい仕事が出来ないようにまた、コストアップを監督がしているような気さえしてくる。若い監督さんには、いつもやっている請負だから、コストアップにはつながらないとおもっていたらしいが、我が家は請負ではなかった。だから私は、品質、コストの事を考えて工程表を直して貰うようにした。発注業務は古参監督さんがしているから分からないのだ。工程が1ヶ月遅れても、借住まいの家賃が10万円増えるだけだから、しっかり工事してくれるよう頼んだ。そんな頃、建設会社の社長さんからすべての現場を効率よく、進めるようにとの方針が出ていたとの事で、若い監督さんはただ工程を詰めろと思ったらしい。現場の職人さんと監督不在の現場進行のなかで、職人さんの汗と工夫と責任感を見つけることができた。職人さんと建築士、施主のシンプルな関係を築いた気がした。

建設会社って何だ

職人さんは分かっていてくれたと思う。少ない土地の住宅建設で、庭付き(屋上)、地下付きのローコストRC実験住宅であると言うことを。若い職人さんは自宅を”できればこんなふうにつくりたい”といってくれた。そんなこんなで、”地下1階地上2階のRC住宅は工事がやっと終わった。終わって1月後、古参監督さんがすべての請求書と経理台帳の写しを持って来た。月々請求書を見ていたので、追加金が三百万程でるとは聞いていた。”思ったより安くできました”と言った。私は、いろんな事があったが本当に原価公開をしてくれたこの会社に感謝しました。しかし、安くできたから、はじめから経費の中に入っていた監督給料をもっとみて欲しいとの提案が始まった。安くできたのは、ローコスト設計をこころがけ、現場でのチェックでロスを少なくした結果が大きいと私は思っている。よって私は即答はしなかった。後日、社長さんに前回の提案を断った。当初の予算よりかなり大きな増額であったが、足らなかった建築工事原価と経費分も上乗せし、契約どおり、公庫の入金を待ち支払った。

原価公開で分かったこと

原価公開で、若い監督さんの携帯電話購入料、この現場だけでなくこれからも使うだろう新しい機材購入等の現場経費、業者さんの請求書だって私はねぎたっり、文句は言わなかった。原価公開してくれた事に報いるために業者さんに払う金額にそのまま経費を上乗せして支払った。請求書に載っていたが、この現場では使っていないレッカー代と、間違って請求されていた左官工事人工(にんく)を指摘しただけだった。それほど利益が出なかったかも知れないかが、建設会社にはなんのリスクもない、監督給料だって経費で十分まかなえる金額と私は思っている。建説会社の経費って一体なんなのか。経費とはこんなにかかるのか。私は、もっとみてくれないかの話し合いの中で、保証の問題がでてきた。私は”今年4月以前の契約であるが保証はいらない。私が設計、管理した建物ですからその必要はありません。”と言い切った。なぜなら、ほとんどの建設会社、工務店は何かあったら業者さんに無料で修理させ、原因のほとんどが現場管理によることさえ気がついていないのですから。それより、公庫の火災保険といっしょに地震保険に入った。その方が安心であると考えました。

建主主導の家づくりを求めて

長い、長い、前書きになりましたが、その建築会社には、お互いの信頼関係で原価公開してくれたこと、そして住宅が完成したことに感謝しています。しかし、そんな現場経験から、雑誌CCIのオープンシステムの記事を何度も読み返す事になるのは、自然の成り行きと思います。建築士が建主になり、冷や冷やの実験住宅のお陰で、
オープンシステムの必要性を実感し、オープンネットにアクセスし、山中代表に会いたいと思う私の心情、分かってもらえる人多いと思います。