沖 縄 好 日
(10) 漢那の夕暮れ

 泊先の駐車場で天秤座さんをお見送りし、前回散歩の途中で出会った犬・ビンゴの飼い主さん宅を探しに行こうとしたら、保育園の先生にお声をかけて頂く。先生のお子さんも卒業生の一人だったのでした。恵ちゃんに来ていた園児はもう帰っていたので、そのままお家探しに出かけることにして歩き出す。急坂を上りきって「あの辺り」と指された建物に近づくが、教えて頂いた名前の表札は見あたらず。どこのお家だろう?とドア前を通過すると中から一声「ワンッ。」リーチか?しかし、動物が動いている気配はしない。もしかしたらこのお家かもしれない・・・と思い切ってチャイムを鳴らす。ビンゴーッ!!ドアが開くと犬のビンゴと飼い主のビーママ(ビンゴ・ママ)が顔を出す。
 ビンゴの写真は役場の方からビーパパ経由で渡して頂けたとのこと。今夜のお夕飯は是非家でとお呼ばれされるが、連絡せずに訪問したことと、恵ちゃんのオムライスが200%お腹に入っていたこともありお断りして、夜になったら改めてお伺いする約束をする。ビンゴ家を離れて建設中のタラソセンターを横目に見ながら漢那ビーチへ到着。今日の夕暮れは漢那の海で見ようと決めていたのだ。んが〜、ちょっと現実に戻ってアンテナの状況が良いところで会社の上司と同期へ電話。3日ぶりに聞く知っている人の声・・・。
 薄暗くなりかかった浜辺を歩きながら、ビュンビュンと吹く風に煽られる。海の向こうの方に伊計島なのか、ポツポツと明かりが揺れている。そのまま夜が満ちるまで海辺にいてから、国道へ出ることにした。途中でお刺身やさんを発見するが、醤油を持参していなかったので何も買わず・・・。未来・ぎのざまで歩こうかと思い、国道沿いを歩き始めると商店を発見。ヨーグルトと沖縄でやたら見掛けるカップ麺を購入する。沖縄そばとか豆腐が欲しかったが、大量すぎて帰る迄に消費できる見込みが無かったので諦め。お会計の後に「かじまやー」のお家を聞くと「漢那地区会館、わかるでショ?その道をまっすぐ進んだあたりよ。」と言われる。おお!「あなた、本土の人ね?」と確認されなかった。珍しい。
 泊先に向かって歩き始めるともう一軒商店を発見。夜の闇の中にこうこうと明かりが漏れてきている。中を見るとおばぁが店番をしていて、こぢんまりとした昔の駄菓子やさんを思わせる良い雰囲気。冷たい牛乳が欲しかったので、小さいパックを購入する。普段スーパーで買うときは後ろの方の日付が新しいものを取るけれど、ここでは前の方から順番に取る。おばぁにお店の写真を撮りたいと伝えると一瞬躊躇した様子。
「おばぁはもう85だし・・・、もうお店もたたもうかと思っていたから商品だって少ないし・・・。」
やはり失礼だったかなと思ったら、おばぁはいそいそと髪をなでつけながら、
「それでも良ければ、どうぞ。」とにっこり笑ってくれた!
その笑顔の可愛いさ!友人Kのおばぁを思い出してしまった。
 泊先に戻ると部屋の換気をして、約束の時間になるのを待つ。オムライスはまだ120%位お腹にあるゾ。そろそろ良い時間になったので泊先を出る。昼間は急坂を経由するより原っぱを横切る方が近いと教えて頂いたが、もう真っ暗なので舗装された道を進む。途中に家型のお墓があるので立ち止まる。実は沖縄に到着した日は旧暦1月16日、あの世のお正月ということらしい。恵ちゃんにいた人達が宜村は新暦で行うから関係ないよ〜と説明してくれたのだが、もしかしたら私がビビらないように気を遣ってくれたのではないか?と思っていたのだ。旧暦で考えるとまだお正月の松の内ということになるのだろうか。ふとそんなことを考えたのだが、気にせず進み、ビンゴ家のチャイムを鳴らす。ビーママは若いお客さんなんて珍しいからとビーパパとお買い物に行って缶チューハィを冷やしておいてくれた。羽田で購入したキティのチョコがけブルーべりーを「溶けたかもしれない」と言い訳してから手渡す。んん?ビンゴが私のジーンズを嗅いでスリスリと寄ってきた。我が家には室内小型犬2匹と猫が1匹いるのだが、どうやら匂いがするらしい。
 ビーママさんは旦那さんのお仕事がきっかけで沖縄へ移住された方で、以前は私と同じ関東圏に在住していたこともあるそうで、お子さんは私と年齢が近く丁度母子くらいの世代差ですが、色々お話しをしました。社会人になるとどうしても同業態の方とばかり親交が深まり、仕事に関係が無い、同年代で無い方とお話しをする機会というのは稀なことです。ビーママはビーパパの出張が多い時期は海岸で貝を拾ってシェルアートを作成しているそうで、何点か作品も見させて頂きました。沖縄のこと、学校教育のこと、親が子供を良い学校に進学させたいと考える理由や、男性の母親としての意見など、日常ではなかなか伺うことが出来ないお話しができてとても良い時間を過ごしました。気が付けばもう3時間近くお邪魔しています。時計の針も12時を過ぎているのでお暇しようとしたら、もうすぐ会合からビーパパが帰ってくるのでと引き留められる。
 ビーパパが帰宅したのでご挨拶をして、ビーパパの沖縄でのあらら?話をお伺いする。ビーパパが20年近く前に仕事で沖縄へ来た時のこと、民宿の朝ご飯はなぜか?朝からステーキであった。お昼は高齢者の方もいるのでステーキとロブスター!夜もまたまたステーキ!でなんと一日三食ステーキ!ビーチパーリーに招待されて行ってみたら、砂浜は暗くて顔が良く見えないし、沖縄口もまだよく解らない。輪の中に入ってお酒を飲んでいたら、知人達は沖縄タイムで集合してきた。じゃあこの人たちは?と良く見てみたら全然面識が無い人達!な〜に、構わないさ〜!とお酒を注いでくれたのだそうな。その他、八重山で秘密めいたお祭りを見学したことなど、昔の沖縄の話を教えて頂きました。きっとお二人が移住された頃、沖縄は今よりもずっとずっと沖縄の薫りに包まれていたのでしょう。

 ビーママお手製のおつまみを頂きながら、再びおしゃべりに花が咲き、気が付けば時計の針はもう2時!お二人は普段は3時過ぎまでこうしているからと引き留めて下さる。ここ3日間ですっかり沖縄タイムというか、沖縄気質といえば良いのか?普段と感覚が変わりつつあることを自覚している私ですが、さすがにこんなに遅くまでお邪魔しているので、お暇することにする。さて帰り道、急坂を経由するのもツライが、それよりもこの時間に家型お墓の前を通過するのがよりツライ。「こちらのお墓は怖くないでしょう?」とお二人に聞かれるが、そうなんです。役場前にあるような亀甲墓は大丈夫なのです。入り口のところが家型になっているのは、扉がバターンと開くような気がして、しにかん恐ろしい。(泣)更にこの時間、草木も眠る・・・ではないか〜!?(大泣)
 ビーパパが近道を提案してくれた。それは・・・犬がいるお家の庭を突っ切ることだった。確かにそのルートはお墓の前も通過しないし、急坂を経由するしんどさもない。しかし、お家の人達だってもう眠っている時間。不法侵入+安眠妨害=迷惑・・・。すいません、私は迷惑となることに決めました。ガレージの入り口付近まで歩くと、ビンゴ家の前で見守ってくれているお二人に会釈して、反対側の出口を目視する。頭の中に鮮やかな盗塁をイメージする。呼吸を瞬間止めて、脱兎のごとく駆け出す。ああ、やはり賢い番犬であった。
「わおん♪わおん♪」「アォォォオーン♪」「ワンワンワン♪」の三重唱。不審者に吠えるというより、遊んでいけ〜という叫びで、なぜか尻尾をふっている。犬もフレンドリーなのだろうか。アッ!この犬たち、12月の最終日に犬を3匹連れいているすごい叔父様がいらしたので、写真を撮らせて頂いたのだが、その時の犬達だ!しかし、立ち止まることは出来ない。反対側の門も開け放してあった為、無事通過。敷地の外に出た瞬間、賢い番犬は吠えるのを止めてしまった。う〜む、賢い・・・。飼い主ご一家様、ご迷惑をおかけしまして、失礼致しました。あの時、犬を騒がせたのは私です。
 そのまま泊先の自分の部屋まで駆け上がり、鍵をかけてからビンゴ家に無事到着したことを電話する。ビーパパは「次からはもう吠えられないでしょう」と電話口の向こうでニコニコしている様子。すっかり沖縄人なコメントだ・・・。明日の午後、海が引き潮になる頃、ビーママが海で何かを捕ろうと提案してくれていたので、お昼過ぎに再びお伺いする約束を確認して、電話を切る。連絡すると言っていた人達に、既に電話をできる時間ではないので、メールをして布団をかぶる。
 ここ3日間で、自分の中の感覚が確実に変わってきている。そんな気がしてならない。今朝は時計を持たずに出かけて、時間の感覚を無くしてしまった。明日は地図を持たない旅人になって、帰り道さえ忘れてしまうのではないか。いや、しかし終焉の地は自分の故郷であるべきだ。学生時代に読んだ繍乾の「地図を持たない旅人」を思い出した。沖縄の薫りに包みこまれながら、眠りについた。
雲が多い漢那の夕暮れ フラッシュ焚かないと
これ位真っ暗
帳簿つけも
バッチリ!!です
カメラ目線でニッコリ♪