2020/03/20 新型コロナ感染症と考える力(その2)
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⇒先日(3/15)の記事では次のような予測を立て、「この予測が外れ、下方修正されることを期待している」と締めくくった。
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予測 |
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3月10日の患者数は492人なので |
18日には1,000人を超えていると予測される。 |
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さて 3/18 12:00 までのデータがまとまったので見てみよう。
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もくじ |
- 患者数の増加率が一気に下がった
- 積極的に対策を公報する北海道と大阪などに注目
- 平日だけのデータでグラフにすると 意外な結果が!
- 結論 全国一斉休校+自粛は有効だったか?
- 指数近似で予測すると 7営業日で 患者は倍になる
- 患者数のデータは人為的に制限されている
- 最後に
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予測は見事に外れ、患者数の増加率が一気に下がった。指数近似予測1,000人に対し、実測は789人と200人以上少なく済んだ。
次図の右上に上昇する黒い矢印が予測であったが、実際は、ピンクの矢印のように上昇角度が緩やかになっていた。
縦の白線から右側の6日分(3/13〜/18)をみると、3/15から大きく外れはじめた。その傾向が3/18までの4日間続いていることから、感染が減少しつつあると見て取れる。
安倍首相が全国小中高の休校を要請したのが2月27日のこと。その日から感染が抑制され始めたと仮定し、新型コロナウイルスの潜伏期間が最大14日程度(横向きの白線矢印)であることを加味すると、2月27日から2週間後の3月13日ごろから休校の効果が表れ始めると想定することができる。3月13日ごろ以前の患者は、休校要請前に感染していたものが陽性に転じたと考えられるからだ。
こうした解釈が成り立つかどうか、さらに詳しくデータを解析してみた。
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北海道は独自に緊急事態を宣言して対策を公報してきた。大阪府の動きも頻繁に報道され始めた。北海道と大阪は患者数が突出している地域である。
患者数の多い上位5都道府県(北海道、愛知県、大阪府、東京都、兵庫県)の患者数推移を観察すると、東京都を除いて、ここ1週間の患者数の伸びが鈍化していた。
そこで、北海道、愛知県、大阪府、兵庫県の4つの道府県を除いた残りの都府県について患者数の推移を解析した。データは、患者数の和が100人を超えた2月28日からの3月18日までの3週間とした。
それが次のグラフである。
2月中旬までに陽性判定された中国在住者9人と不明2人を含む
横軸が日付で、縦軸が日ごとの累積患者数である。青色の三角△は日曜日と月曜日の集計である。
全国のグラフと比較するとは2つの特徴を持つことが分かった。
- 全国患者数の増加鈍化傾向は、これらの都府県では見られない
- 全国患者数の増加鈍化傾向は、上位4道府県の動向を反映したものと思われる
- 図の水色三角形△で示した部分は、前日からの患者増がほぼない
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保健所などの公的施設では、土日が休日であることから、土日の陽性判定がほとんどないのは自然なことだろう。そこで、土日を飛ばした平日だけのグラフを作ることにした。
このとき、元データの日付はその日の正午(12時)までの集計であることに留意すると、金曜日の午後に確定した陽性結果は翌日土曜日にカウントされ、月曜日の午後に確定した陽性結果は翌日火曜日にカウントされていることになる。
そこで、休日(土日)の影響は日月のカウントに影響すると仮定し、日月をのぞく火曜から土曜までの患者数のグラフにした。
その結果が次のグラフである。
破線は指数近似で、3/19以降5日分(3/25まで)の予測も示した
赤色の三角形△が、その日の12時までの患者の発生数である。多少の凸凹はあるものの、指数近似曲線に寄り添うように上昇していることがわかる。
特に注意すべきは、先の全国のデータで現れた3月15日以降の減少傾向がみられないことである。
この現象をどのように考えればよいだろうか? いくつかの可能性を示しておきたい。
- 北海道、愛知、大阪、兵庫の4つの道府県は、対策の効果が出始めた
- 患者数の多い東京は、人口が多いだけに、今後の展開が心配される
- 患者数がまだ少ない大半の府県は依然として指数的な増大傾向にあり、北海道や大阪のようにならない施策が望まれる
ところで、病院などでは、休み明けの月曜日に外来患者が増える傾向にある。土日の分が月曜日に集中するからである。この経験からすると、土日に発症した患者のPCR検査が月曜日に集中し、その結果が翌日の火曜日となる場合もあることを考えれば、月火の数値上昇が予測される。
しかし、上のグラフを見る限り、月火の盛り上がりは見受けられない。この現象はどのように解釈できるのだろうか?
- 新型コロナウイルスは、土日はお休みするので患者が出ない
- ・・・これは考えにくい
- ・・・曜日に関係なく患者が出ているとするならば・・・
- 検査結果は、患者発生(感染、発症)の状況をそのまま反映していない
- つまり、検査はあくまで選択的部分的で、見過ごしているものがかなりある
- もしこの仮定が事実に近いとすれば、感染状況は数値化されておらず、言われているよりももっと深刻なのだろう
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少ないデータですべてを結論的に述べることはできない。
しかし、公表された患者数の推移を見る限り次のことが言えるだろう。
- 患者数が急増していた北海道や大阪では効果が見られたのかも知れない
- しかし、その他大半の府県では、目に見える効果は見受けられなかった
以上が、限定的な情報で掘り下げてみた結論である。
より正確で全般的な調査と情報公開を望ましい。
国と国民の信頼関係をしっかり作ることが、感染症に打ち勝ち、すでに深刻化し始めている経済的困苦を乗り越える王道であろう。
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北海道、愛知県、大阪府、兵庫県の4つの道府県を除いた残りの都府県の、直近3週間のデータから算出された近似式 で計算すると、患者数は7.22営業日で倍になることがわかった。
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まとめ |
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2月下旬から3月中旬までの3週間のデータによれば、 |
北海道、愛知県、大阪府、兵庫県の4つの道府県を除いた残りの都府県の |
コロナ感染患者数は7営業日(9日)で2倍になる。 |
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これを敷衍すると、次のように予測される。
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予測 |
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北海道、愛知県、大阪府、兵庫県の4つの道府県を除いた残りの都府県の |
3月18日までの患者数は349人なので |
25日には600人ほどに増えていると予測される。 |
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この予測が外れ、下方修正されることを期待している。
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今回の解析で見えてきたことは、多くの識者が指摘してきた検査の問題点でもあると思われる。
土日をはさんで停滞しているだけで、休日明けに増大していないデータは、患者数のデータが人為的に制限されている可能性を示唆している。
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識者からは、「数千人規模のランダムな調査が行われていない。現状の検査は選択的部分的なので、公開データを統計的に解析する意味がない」旨の主張があります。
この記事では、今「手に入るデータから何がわかるだろうか」と言う視点から解析をしています。
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2020.03.21 グラフなど加筆修正
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