ところで聞きやすさを決める要因は、音声の質、発話継続時間と速度、発話内容への親密度、雑音の程度、視覚情報の有無、そして外国語学習者の語学力などさまざまである。e-ラーニングの学習履歴にはエラーログ(どこをどうに間違えたか)が記録されている。これを、どの要因が聞きやすさを阻害しているか、特に語学力との関わりに焦点を当てて調べた。たとえば、誤答率39%(58人)の問題文「I dare to hope so.」では、「I dare」の次「to」を聞き漏らした者が33人(誤答者の58%)にも及んだ。実際の音声では dare に強勢があって to は圧縮された弱勢であり、音量音質ともに聞き取りにくい。しかし正答者(61% 91人)が正しく聞き取っていることを考慮すると、dare to 〜 と言う語法が身に付いていれば聞き取れたであろうと推測された。こうした事例研究から、音の塊から意味のある単語列を想起する語学力が、聴解力の重要な要因であることなどを示す。