アメリカ西海岸の旅
4日目 mexico pt.2
グレイハウンドのバスディーポ
グレイハウンドのバスディーポ

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[ORA! TIJUANA]
=人間不信=

 豆知識:メキシコはアメリカよりも更に物価が安い。と言ってもニセモノばかりだけど。ガイドブックには買い物は全て交渉だから、向こうが提示してくる価格の、思い切って10分の1位の値段を言ってみよう!と書いてある。そして対外この街のお店ならアメリカドルで支払いが可能だ。

 やがて人気の少ない、少し奥にあるお店に入った。そこにはサングラスや時計などは無く、置物などのお土産品しか置いてない。お店の人も別に絡んでこない。おおぅ!ここは隠れた穴場スポットだ! 僕は壁に掛けてあるものが気になった。店員に聞くと、その複雑な模様をあしらったこの壁掛けは、アステカの暦、カレンダーであると言う。ゴソゴソと引き出しをあさって、カレンダーの読み方の日本語訳の紙を見せてくれた。何やらとても複雑だが、神秘的だ。さらにお店の主人はこれはどこぞのなんたらという、ソコソコ貴重そうな石で出来ていると言う。

 まだメキシコに来て、何も買い物をしていなかったので、ここら辺でいっちょうお土産でも買おうかなと、しげも欲しいと言うので二人で商談に入る。向こうは40ドルと言ってきた。僕等は頑張って値切る値切る。かなり粘りまくって結局10ドルで購入。なかなか頑固な主人で、ガイドブックのようにはいかなかった。が、気に入っていた物だし、まぁ1000円位ならよい買い物が出来たと納得したのだった。

 また人通りの多いメインストリートに戻ってノリの良いお店に入ると、ナント!今買った「アステカのカレンダー」が売っている。サングラスが置いてあるようなお店に! 恐る恐る値段を聞いてみると、「10ドル」!!!!! ヤラレタ!

 ここのメキシコ人は最初から僕等が頑張って値切った値段の「10ドル」と提示してきたのだ。と言う事はここから交渉という事になる。しげと僕は相当なショックを受けた。・・・アノヤロウ! 

 すっかり踊らされてしまった。 あの、奥にあって他の店とは違うという雰囲気。店員が絡んで来ず、本物っぽく見せるテクニック。そこで完璧にやられているのにいきなり高金額の提示で、何の疑いも持たずに高いシロモノだと信じてしまった自分。全て向こうの思惑通りだったのだ!   ・・・・二人ともショックでうなだれる。くっそーっ。悔しい!

 いっきに疲れが出た為にファーストフードに立ち寄ってドリンクを飲む。メキシコでもカップはXXLサイズで、おかわり自由だ。そんでもって、モチロン店内禁煙。

 僕はタバコが我慢出来ずに外に出て一服する事にした。何とも複雑な気持ちをケムリと一緒に吐き出した時、若い、クールなメキシコ人が火を貸してくれと、僕の前で立ち止まり言った。僕は注意深く、ライターを渡さないようにタバコに火をつけてやると、「サンキュー」と言って足早に去っていく。う〜ん、別に注意するほどの人でも無かったなぁ。と少し自分に反省。

 すると今度はアメリカ人らしい人が近付いて来て、何やら英語で話し掛けてくる。この人の英語は分かりにくい。そのうえ、この人はなんだかとても“うさんくさい”空気を出している。話し方が世間話のような雰囲気では無く、むしろ“ワルダクミ”の感じなのだ。怪しいと感じた僕は途中で耳を傾けるのを止め、日本語で追い返した。 しげが出てきたので再び歩く。

 
[良い人々]

 次こそは値切りまくって格安でテキーラの国メキシコの“ショットグラス”を手に入れてやる! と、復讐にも似た新たな決意を胸に秘める。

 最初はハイテンションでアホなメキシコ人も商談となると目つきが変わる。とにかくさっきの分をチャラにしたい僕は、片っ端からお店に入り、駆け引きを試みた。しかしだいたいどこの店も2ドルが限界値だった。このまま引き下がる訳には行かないのだ。こっちもメキシコ人の様に粘りが必要そうだ。

 と、またまた怪しい裏通りを発見し、二度も同じ手をくらうかよぅ、とばかりにグイグイと進入すると、これまたサングラスなどを置いてないお土産屋に、無口な女主人のお店発見。とりあえず入ってみると、“ショットグラス”が1ドル25の値札付きで置いてある。値札があるから商談は無い。が、他のお店で値切りまくっても無理だった値段だ。ラッキー!こんなお店もあったんだ。女主人と話をすると、「まったくイヤになっちゃうでしょ?この街の人ときたら」なんて、かなり良心的な人。親戚が日本に行っているなどとつのる話しもして、念願の“ショットグラス”を4つ購入。いやぁ、いるんだ、こんなイイ人も。

 しげ念願のジッポを売ってるお店も発見する。ちゃんとショーケースに入っている。ここは他のお土産屋という感じではなく、雑貨屋という雰囲気だ。結構どれにするのか悩んでいるしげ。また僕が1人で外に出て一服していると、しげが出てきた。買ったの?って聞くと首を横に振る。しげは、もしや?!と思ってショーケースの下に顔を覗き込むと、ジッポの底にあるべき「ZIPPO」の刻印が無く、意味不明な英語が書いてあったそうな・・・。この街にはジッポは存在しないらしい。

 あるお店に入ると、そこにいた男の子達が近寄ってきた。別に押し売りではなく、単に僕達に興味がある感じだった。カタコトの英語同士での会話が続く。今までおちゃらけたメキシコ人ばかりを相手にしてきたから、照れたような緊張したような感じのメキシカンキッズ達との会話は新鮮だった。しかしメキシコ人はカッコイイと思う。目がパッチリしていて真っ黒な髪にキリっとした眉毛。女の子もとても可愛い。ただアメリカ同様、大人になると何故にあんなに太るのだろう・・・。

 男の子に習った言葉:【ケッタール】初めまして 【グラシアス】有り難う 【アスタラビスタ】さようなら

 ショットグラスを求めて同じ所をグルグルと何回も歩いていると、当たり前だが何回も同じお店の前を通り掛かる。最初の頃に立ち寄って何も買わずに出てきたお店のメキシコ人達が僕等の顔を覚えてしまったらしく、お店の前を通り掛かる度に僕等を見つけてはデカイ声で叫ぶ。

 彼等曰く、日本人男性は「田中さん」か「係長さん」で、日本人女性は全員「ノリコさん」なのだが、彼等は僕等を見つける度に「田中さん」と声を張り上げるのだ。毎回毎回「違うっつーの!」って言ってるのに。5回目位にそこのお店の前を通ったら、「違う」って言葉を理解したのか、それにしても何処で仕入れてきたのか、僕等に向かって叫ぶ声は「田中さん」では無く、『スケベーーー』になっていた。それには僕等も笑った「それは間違いでは無いけどさーっ」って。本当にメキシコ人は底抜けに明るい。

 僕は香水も欲しかったけど、香水は安いと言っても支払いはカードになる。なんとなくカードを使うのが嫌だったから諦めた。今思えば買っておけば良かった!

[エロス]

 結局ジッポも香水も諦めた所で、しげが面白い通りがあるから行こうと言う。そこは売春婦が立ってる通り。メインストリートからどんどんと裏の方に入っていく。段々とメインストリートにいたような愛嬌のある人がいなくなっていく。というより、近寄りがたい人がどんどんと増えていく。うー、ちょっぴり不安。

 やがて細いくせにやたらと人が行き来する通りに出る。そこが噂の通りらしい。人の流れにそって歩くと1m間隔でずーと女の人が立っている。なんとも時代錯誤というか、ベタというか、厚化粧で派手なボディコンを着ている。正直オソロシイ。お値段は20ドルらしい。2000円だ。安いけど、キビシイ。 しげがしきりに「サングラス外して、目を合わせてみな!」と言ってひじでつついてくる。交渉は気に入った人と商談するらしいが・・・こんな方々と商談はしたくない。どうにか雰囲気だけ味わって通りを抜けた。ふぅ。

[本場の激辛]

 そろそろ日が傾き始めた。最後に「タコス」を食って帰ろうと言うことになってゲートの方に向かう。

 タコス屋発見!3つで1ドル。ビーフとポークがあるらしい。2人でそれぞれ頼む。ビーフは串に刺さった幾重にも重ねてあぶってあるのをナイフでそいで取るのだ。肉汁がジュワジュワいっててとても旨そうだ。別の人が芸術的なスピードと正確さでタコスに野菜やタレ等、沢山の材料を仕込んで肉係りの人まで持っていく。あとは肉を挟んで出来上がりだ。

 多少 衛生面に不安はあるものの、とにかく旨そうだ。一口頬張る。辛っっ!!!めっちゃくちゃ辛い。が、めちゃくちゃ美味!!! とても匂いのきつい葉っぱが入っていて、それがなければ日本人受けも相当良いだろうな、とも思ったが、ここはメキシコ。これが本物。とにかく美味しかった。一応交換して、ビーフもポークも両方食べたけど、ビーフの方が旨かった。日本に帰ってもしばらくサルサソース依存症になるくらい美味しかったのだ。

[アスタラビスタ]

 いよいよゲートに向かって歩き出す。物乞いの子供達は最後の最後まで絶える事は無い。街の人がお店を閉めてもいるのだろうか。 ゲートが見える。そこに大型お土産ショップがあったので最後に寄る事にした。

 うぅっっ!“ショットグラス”がある。・・・1ドルを切っている。あの女の人までもが・・・。くぅぅ。 テキーラを筆頭に、お菓子や、何なのか得体のしれない(食べ物に見えない)食べ物、日常生活品などが沢山置いてあった。 僕はお土産用のお菓子を、しげはお土産用のテキーラを買っていよいよメキシコともお別れだ。

 またまた高い壁に挟まれた通路を通ると、今度は人がいる。その人にパスポートを見せて、よく分からない事を聞かれ、ボケボケしているウチにパスポートを返して貰って再びアメリカに戻ってきた。

 アメリカの国境の街に出て、今度は「グレイハウンドバス」のターミナルがある『サンディエゴ』に移動するべく、「トロリー」に乗る事となる。すっかり日が沈んでしまった。僕等は「トロリー」のキップを買って乗り込んだ。

 「トロリー」が走り出し、僕は窓の外に目をやると、窓の外にはメキシコの夜景が見える。なだらかな斜面に数え切れない程の灯りがどこまでも拡がっている。超感動的な夜景だ。普通は高い場所に行って夜景を見下ろすのだが、同じ目線から、滑らかにせり上がっていく光の丘が見えるのだ。丘というより“光を放つ山”のようだ。

 その灯り1つ1つが、とても日本的な小さな家から洩れる灯りなわけで、その灯りの下で、とても陽気でファミリー大好きなメキシカン達が「今日きた日本人がさ、」なんて話ながら晩飯を食ってたりするわけで・・・。どこまでも拡がる夜景をいつまでも眺め続けた僕がいたわけで。

[SAN DIEGO]

 サンディエゴに着いた。建物はスペイン風で、ゴージャスで、もの凄い綺麗な街並みだ。今まで居たメキシコとはうって変わり、道路にはゴミ1つないし、ルンペンもいない。さすがに治安が良いと言われているだけある。もう夜なのに街全体が相当明るい。街灯や照明が多いし、開いてるお店も多そうだ。

 まず晩飯を食べる事にして、まるで迷宮のような複雑な作りのショッピングモール、「ホートンプラザ」に入る。4軒のデパートと150のテナントが入ってるらしい。お店も色々と見たが、やはりここにもめぼしいのはなく、なんとか迷わないように歩いているとドアに「お茶あります」という張り紙を発見!日本を離れてからは炭酸飲料しか飲んでいない。ココロオドル!そこで晩飯を食べる事にした。ステーキサンドを注文したが、お茶は無いと言われた。結局ステーキサンドと炭酸飲料になる・・・。ちっ。

 トレーを受け取って広場のベンチで晩飯を食い、まったりと残金の確認をしたところ、見たことのないコイン発見。掃除のおばちゃんが居たから訪ねてみると、メキシコのコインではないか、との事。メキシコのコインを持っていてもアメリカでは使えないし、メキシコの方が物価が低いからそのコインの値打ちは低い。メキシコ人が故意にこのコインをお釣りに混ぜたのならば、まんまとしてヤラレタわけだ。くっそ〜っ!!まったく気付かなかった自分が悪いんだけど、最後の最後までメキシカンにはやられっ放しだ!

 しばらく休んだ後、シーポートビレッジに行こうという事になった。どうやら港らしい。そこに行くには今いるダウンタウンから、ガスランプクォーターを抜けて行く。

 ガスランプクォーターは通りの両側になんとも高級そうなオープンカフェじゃなく、オープンレストランが建ち並び、街灯のようにガスランプが並んでいる。なんとも暖かい灯に包まれた通りだ。しかし通りには高級なレストランに紳士と貴婦人がガスランプの下でワインなんぞをお召し上がりつつ、のんびりと会話を楽しんでおられるご様子で、その前をリュック背負ってひた歩く僕はなんとも後ろめたい気持ちになってくるのだ。まぁガスランプの灯は僕等にも平等にやさしかったけど。

 メキシコでまる1日歩き回っていたから歩くのがかなり辛かった。意外に遠いのだ。結構歩いてやっと着いた。シーポートビレッジは港ではあるが、どちらかと言うとヨットハーバーっぽい。

 かなりの疲労感の為、ベンチでボケーっとする。僕等の前をときおり金持ちそうなカップルや夫婦が通り過ぎる。当然だろう、桟橋にくくり着けられたヨットに、水面に映る高級ホテルなどの眩しい灯り。海辺にとけ込む洒落た店。なんともノスタルジックなエリアなのだ、ここは。 ・・・僕等はホモカップルに見られたに違いない!

 ふいに眠気が襲ってきた為、横になろうと閉まった店の店先で横になる。何かが気になって、ふと板がはられた横たわってる地面を見ると、板の隙間からカサカサとゴキブリが!!しかも何匹も・・・。このノスタルジックな空間にも陽と陰があるのだ。急に恐怖で飛び起きて、ベンチで横たわる事にした。しばらくするときつい口調で誰かが話し掛けてくる。この治安の良い街で何事かっ、と目を開けると、警備員が立っている。うわぉっ。

 警備員がいるのだから治安が良い筈。しかしこちらの警備員は墨(tatoo)が入ってたりする。「誰かと待ち合わせか?」なんて聞いてくる。「そこで寝てる奴は大丈夫か?」「ここでは寝るなよ。」 結局追い出しをくらってしまった。 仕方無しにダウンタウンに戻る事にした。

 またあの道のりを歩くのかと泣きそうになったが、途中映画「トップガン」の撮影をされたというお店の前で記念写真を撮ったりしつつ、なんとか戻ってきた。今日は予定通り、バスターミナルで寝る事となる。

  再び書ききれなくなってしまった為、続く。

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