アメリカ西海岸の旅
4日目 mexico pt.1
手前はアメリカ、向こうはメキシコ
手前はアメリカ、向こうはメキシコ

←BACK   NEXT→

[GREYHOUND LINES]

 今日は朝7時出発。昨日寝る前に、昨日買ったばかりのリュックに昨日買ったばかりの着替えを入れて準備は万端、気合いも充分だ。まず目指すはロスのダウンタウンの郊外にある『グレイハウンドバス』のバスターミナルだ。このバス会社は長距離バスで、これに乗っていざメキシコに!ダウンタウンまでバスに乗って行き、そこから乗り換えてバスターミナルに行く。

 とりあえずバスでダウンタウンまで行く。そこで乗り換えのバスに乗り込む。ダウンタウンを外れると、本当のロスがそこにはある。ここに足を踏み入れたらタダゴトでは済まないな、と思う光景がある。本当に今まで居た所はマトモな所だったらしい。朝からおかしな連中がタムロってる。街並みの空気も違う。夜は相当ヤバそうだ。

 バスの中でのアメリカンなエピソードをここで1つ。

 バスの中の状況は、運転手が黒人さん。僕等の近くの座席にも黒人さんが2人いる。その2人の黒人さんは多分面識は無い。が、ここはアメリカ、何やら軽めの話からいきなり意気投合。話のネタは分からないが、盛り上がり始めた。声が段々とデカくなる。

 すると盛り上がる黒人さんのテンションに合わせるかのように、僕の耳に何やら音楽が聞こえてきた。最初外から聞こえてきたのかと思ったが、バスの中から聞こえてくる。どうやらバスの運転手の黒人さんが自分の存在を示すために掛けたのだろう。すると意気投合してテンションの高い黒人さん2人組が、大好きな曲だったのだろうか、曲に合わせてリズムを取りながら歌い始めた。カッコイイ。ってバスの中なのに・・・。他の乗客は2,3人いるけど文句は出ない。でかい声で運転手と後ろの黒人さんが1言、2言会話をかわして笑ったり相づちを打ったりしている。すげー日常だぁっとアメリカを実感。

 やがてバスターミナルに到着。朝も早いが大勢の人がいる。カウンターでのしげの会話を良く聞いて、同じ事をカウンターのおばさんに言ってチケットをカードで購入。15ドル。今回のバスは超快適だ。と言っても日本の観光バスと同じって事。長距離バスなのでトイレも付いている。チケットを見せてバスに乗り込む。

 しげの話通り、バスの中は冷房をガンガンに効かし、冷え冷えだ。忠告通りに用意してきたトレーナーをリュックから引っ張り出して着る。バスの中は朝早く寝てる人が多いのか、とても静かだ。バスがフリーウェイに入ると、僕はずっと窓から流れ行くアメリカの景色を眺めていた。当たり前だが、いくら眺めていても見慣れた「田園風景」は見えてこない。同じく山々の間をクネクネと走るという事は全く無い。トンネルもない。果てしなく、だだっ広く拡がるのは建物の群れや、草原、湿地帯。横を抜きさっていく車と言えば、映画でしか見たことのない超長い“コンボイ”など。映画と違う点は、どれもこれもボロボロだった事。

 途中、ディズニーランドやナッツベリーファームの辺りを抜けて、海岸線に掛かる。ビーチでは無い。延々と拡がる麦畑の向こうに海が見えるのだ。そしていよいよフリーウェイから降りた。

 バスは何時間かぶりに街中に入った。どうやら国境の街に行く前に一回「サンディエゴ」で休憩があるようだ。サンディエゴのバスターミナルにバスが停まった。タバコを吸う為にバスを降りる。

 外は暑い。するとアイスの自販機を発見!速攻で買う。 しかし日本と違う自販機。さすがアメリカ、自販機はとても頑丈そうな檻の中に入っている。自販機荒らしどころでは済まされなく、自販機泥棒がいてもおかしくない気はするが・・・。完全武装した自販機。

 再びバスに乗り込み、いよいよメキシコ国境の街、「サンイシドロ」に向かう。

[BORDER AREA]
=San Ysidro=

 メキシコ国境の街“サンイシドロ”に着いた。浅黒い肌の人の数がググッっと増えたが、雰囲気は全然アメリカだ。国境の街の僕のイメージは、アメリカ半分、メキシコ半分の雰囲気であった。だからここではかなりメキシコの雰囲気が味わえると思っていただけに意気消沈。僕等が行くメキシコは、メキシコといっても国境のすぐ脇の街だから、メキシコらしく無く、アメリカナイズされた街なのではないだろうか・・・。そういった不安がよぎった。

 この街には「トローリー」と呼ばれる路面電車が走っている。昨日の晩に引き続き、今日も「カールスJr」でハンバーガーで腹を満たして、いよいよ国境を越える為に歩き出す。

[ORA! TIJUANA]
 =メキシコ入国=

 メキシコ入りするための通路を歩き出す。階段を上ると国境のゲートが一望出来る。ゲートと言っても車用のゲートだ。アメリカからメキシコへは車で越える事が出来るのだ。ゲートの向こうにでっかいメキシコの旗がなびいている。記念にパチリと写真を撮って先に進む。大きな国境の川を越えていよいよ階段を下りる。

 両側を高い壁に囲まれた通路を歩く。ドキドキしながら。と、一気に景色が拓けた。んん???パスポートはどこで見せるの?!・・・フリーパスでメキシコ入りをしてしまった。どうやらアメリカから出るのは簡単らしい。その替わりにアメリカに入るのには厳しいらしい、と言うことをしげから聞いた。

 という訳で、あっさりとメキシコ入りを果たした僕の目の前に拡がるメキシコと言えば、先ほどの街でよぎった悪い予感(アメリカっぽいメキシコ)は見事に大外れし、雰囲気がガラガラっと音がしそうな位に変化した。

 なんだかとても懐かしい感じがするのだ。家はとても小さく汚く、狭い場所に密集して建っている。道路も狭いし、汚い。まだ3日間しかアメリカにいないのに、すっかりアメリカナイズされていたらしく、とても日本的な家や道路に懐かしみ、親しみを覚えた。

 
[第1印象]

 ひたすら感動している僕の手を掴む手があった。フト見下ろすと小さな女の子だ。僕の手を掴んだのと反対の手と目は、“何か頂戴”という感じで僕に向けられている。

 事前にしげから聞かされていた、「物乞いの子供には参る」という事がメキシコ入りしてわずか1分足らずで理解できた。まだ幼稚園位の歳の子だろう、とても大きな目をパチクリさせながら付いてくる。とても可愛らしいのだが、「悪いねぇー、お兄さんも貧乏でねー」なんて日本語で言ってもずーっと付いてくる。僕が考えているよりもかなりしつこい。いや、粘り強い。3分位一緒に歩くとやっと諦めて母親の元に走っていった。母親の周りにはそんな子供達が5、6人はいる。どうやら母親が子供達に指令を出しているらしい。おいおいっ!お母さん!!

 狭く汚い道の両側には、お土産屋さんがギュウギュウにひしめき並んでいる。手作りの木彫りの人形だとか敷物、南国フルーツだとか、そういった類のものだ。やっぱりメキシコの第1印象は、「貧しい国」と言うイメージだ。

 言い忘れていたが、タイトルの説明。『ORA:オラ』は、ハァイ。つまり日本語で「どもっ。」とか「うぉいっすぅ〜っ!」って感じかな。後ろのはチト違う気もするが・・・。『TIJUANA』はティファナと読む。つまり今いる街の名だ。

 今歩いている所はまだまだティファナの入り口。序章なのだ。しばらく同じようなお土産屋台がひしめく通りを歩くと、いよいよティファナのメインストリートだ。やっと車が走っている通りに出る。ここでもやはりアメリカとは違う!! 

 ここで緊急比較!車の実体に迫る!

 日本:
【外見】とにかく綺麗で、ドレスアップしてる車が多い。
【音】マフラーいじっててうるさいのが多い。

 アメリカ:
【外見】綺麗な車も多いが、汚い車も多い。ドアミラーがプラプラしてるのも見た。
【音】日本と違って静か。但し、バスは凄い!

 メキシコ:
【外見】とにかくボロくて汚い。日本で走ったら目立つ程。
【音】改造とかでなくうるさい。素で。

 とまぁ、車を見ただけでアメリカとの違いを感じてしまう。10分も歩けばアメリカなのに。タクシーは特にインパクトがあって、よくテレビで貧しい国が映るとよく列車やトラックに大量に人が乗っているのだが・・・そのものだった。

 メインストリートの両側にはビッチリとお店が並んでいる。「アメ横」そのまんまだ。なにせビッチリと並んでいるお店に売っているものは何処のお店も同じ。皮製品、サングラス(思いっきしパチモン)、時計(こちらも勿論コピー品)、あとは民芸品だ。

[メキシコの人々]

 なんともワクワクした気分で結構な人混みを歩いていると、突然「こんにちわぁ!(頭にアクセント、尻上がりの発音で)」という日本語が!!! 声の主は両腕に時計をいっぱい巻いたメキシコ人だ。「ホンモノ、ホンモノ!」「やすぅい、やすぅいっ!」などと言いながら僕等の行方を塞ぐ。時計の本物偽物はともかく、どこで学んだんだ、その日本語! ちなみにメキシコではスペイン語で、英語を話す人はそれ程いない。まぁアメリカまで徒歩10分の街“ティファナ”ではそこそこ英語でも通じるだろうけど。

 ここは観光地、しかもメキシコ。相手のメキシコ人も、こっちが日本人だと理解をしたうえで寄ってくる。これはとてもラクだ。アメリカにいる時と違って、言葉は日本語でOKなんだから!

 とにかくメキシコ人ってのはテンションがメッチャ高い。1人のメキシコ人につかまったら最後、すぐに4、5人のメキシコ人に囲まれてしまう。4、5人のメキシコ人に腕やシャツの袖を引っ張られて「トモダチィ〜、トモダチィ〜」言われて店内に引きずり込まれる。とにかく楽しいのだ。手を繋いで物を乞う子供同様、とにかく粘る。明らかに買わないって態度を出しまくってるのに、全然引き下がらないのだ。

 こっちは「いらない、いらない、金無いし」とか言うと「トモダチィ、トモダチプライス」とか、「これビンボープライス」とか言って商品を手渡して来る。手に取ったらその上から他の商品をガンガン手に乗せてくる。超ハイテンションなメキシコ人に取り囲まれてこの状態。笑える。こっちのテンションも上がる。向こうもイマイチ本気で売ろうとしてるのか、笑わそうとしてやってるのか分からない位に楽しんでいるように見える。なんとか振り切って通りに戻る。

 しげを置いて先に店から出て、やれやれなんて顔をしていたら、アメリカ人観光客らしいおっさんが「まったくメキシコって所は。」みたいな感じで同じような顔をして話し掛けてきた。「日本から来たのかい?」「アカプルコには行ったかい?」などなど。ここメキシコで、今まで僕がアメリカでそうだったように、客としている1人のアメリカ人は何故か話しやすい。しばらく話して別れた。

 歩いているととにかく笑える色々なカタコトな日本語が飛んでくる。よく聞くのは 『コンニチワァ』 『トモダチ』 『ビンボウ』 『見るだけタダ』 『アメ横より安ぅい』 『チョット待て!』まったく、日本語講師でもいるのだろうか・・・。でもこの街の雰囲気がただでさえ日本っぽいのに日本語で話し掛けてくるメキシコ人に、とても親しみが湧く。なんとも憎めないキャラの持ち主ばかりなのだ。

 また、笑える事は、例えばサングラスの話をすると、サングラスの超有名ブランド「オークレー」がどこのお店にも置いてある。他のサングラスも沢山置いてあるのだが、「オークレー」だけは別のショーケースに入れて、別格といった感じで置いてある。これは日本でもアメリカでも同じだった。しかし決定的に違う所、それは先程も述べたけど、「ニセモノ」って事。僕は本物の「オークレー」を所持しているからちょっと見ればそれがすぐにニセモノと分かるけど、メキシコ人と来たらわざわざ“パチモン”の「オークレー」だけを他のと違うショーケースに入れて、「本物、本物」と言い張る。他のサングラスと値段も変わらないのに。なんだかやり方がとても単純で微笑ましい。d

 しげが「「ZIPPO」でも買おうかな」と言ったからお店に入る。またもやメキシコ人がワラワラと群がってくる。まるで見当違いの物を怒濤の勢いで勧めてくるから「違う違う!ジッポ。ジッポつーのは無いの?」と必死に応戦する。店内見渡してもジッポらしい物は1つも無い。

 仕方無いから僕の「ZIPPO」を見せて、「これがジッポ、これが欲しいの。置いてないんならいいよっ!」って言って店から出ようとすると、メキシコ人はカタコトで、「ジッポOK。ちょっと待ってて、すぐに戻ってくるから」と言い残してどっかに行ってしまった。その間にも他のメキシコ人とワイワイどつきあいながら楽しんでいると、先ほどのメキシコ人が嬉しそうな顔で戻ってきた。そのメキシコ人が嬉しそうに広げた両手の平の上には金色やら細いのやらの、ガスライターが5、6個乗っている。「も〜っっ。全然違うじゃん!!」「さっきジッポあるって言ってたじゃん!」ってつっこむ。メキシコ人も違うの分かってるくせにそれを買わせようとする。だいたいどこから手に入れてきたのよ??? 本当に商売の為ならなんでもするのねん。

 長くなってしまった為、2部に分ける事にしました。後編へ続く!!

←BACK   NEXT→

TRAVELS PAGEに戻る TOP PAGEに戻る