戦闘パート
 第一シーンでの花見の許可を取り、買い物を済ませた一行は、第二シーンで花見の準備をし、上野公園までぞろぞろと移動します。そしてそこで、巧みにシーンポイントを手札を温存した椿姫が、ラッシュにでました。
椿姫
「ポイントを消費して、桜吹雪を起こすかな。夕日に照らされつつ、それをバックに恥ずかしそうに微笑みかけるよ」
一樹
「引いたのはクラブの6」
椿姫
「ハートのQをあげよう」
牡丹
「あれ。もう山札なくなっちゃった。勢いがついたせいかカードの流れがはやいな」
GM
「(捨て札を切って山札に置く)基本的にハートはPC間で動くから。実質枚数も減るしね。美蘭や牡丹みたいのもいるし(*1)」
美蘭
「だってこのシーンの後は戦闘なんだもん」
牡丹
「今回は胡桃と椿姫にヒロインの座は渡しといて、主役シナリオを待つとするよ」
美蘭
「それに僕らは……ふふふふふふ」
牡丹
「しー。内緒内緒」
胡桃
「なんかたくらんでますね」
椿姫
「まあいいや。『少尉殿……自分は、今日まで日本を守る軍人として育てられ、そして生きてきた。だけれども、ここにきて、もう一人の自分に気づいてしまったのだ。……自分は、女、なのだと』」
一樹
「『椿姫ちゃん……』」
椿姫
「『もし、高村少尉殿・・・・・・いえ、一樹、さん。あなたが……』」
サフ
「状況の変化って2点?」
GM
「キャラシートの右下に書いてあるだろ」
サフ
「じゃ、2点な。爆音がして、椿姫の台詞は遮られたよ」
椿姫
「なにい?」
サフ
「で、今の2点でシーンポイントは0、と。どこかからか『うわー、化け物がー!』って悲鳴が聞こえるよ(*2)」
牡丹
「しまった! サフランのシーンポイントってそんなに減ってたか?」
サフ
「来る途中の路面電車で結構使ったからさ」
牡丹
「しくじったー。まだ信頼ポイント足らないよー(*3)。もう少し引っ張らない?」
サフ
「これ以上のラブシーンはサターンでは発売できなくなるべや」
牡丹
「そりゃそうか」
椿姫
「こっちはまだ7点なのに〜」
サフ
「終盤ラッシュは待ってやったろ? さ、戦闘戦闘」
美蘭
「こいつ不思議と9点たまってるんだよなあ」
椿姫
「お前もな」
美蘭
「へへへ〜(*4)」
 
 GMはへクスに適当な障害物として桜や照明を書きこみ、敵のチットをおきます。
GM
「雑魚が6体、ボスが一人ね」
牡丹
「なんか言えよ」
GM
「『帝国華撃団、今日こそ叩き潰してくれるわ』(*5)」
椿姫
「うわダサ!」
牡丹
「バイオマンの幹部かよ」
GM
「うるさいな。降魔が確認されると、劇場から轟雷号が発進して、とりあえずマップのそっちはじ、3へクス以内、好きなところに乙式光武が射出されるよ(*6)」
椿姫
「『大変だ! 少尉殿お急ぎを!』」
一樹
「『え? ちょっと待って、今なんて言おうとしてたの?』」
椿姫
「『頭切り替えんかこの軟弱モノー!』殴りつけて自分の機体に走ります」
GM
「カード引かないの?」
椿姫
「引いていいの?」
GM
「いいよ(*7)」
椿姫
「ダイヤのAだ」
一樹
「クラブの10」
椿姫
「ハートの押しつけ〜。うん、これで晴れて9点だ(*8)」
GM
「では戦闘開始。最初は隊長にイニシアティブ順が回るまで作戦は林だからね。出撃位置が決まったら信頼ポイントを割り振って」
一樹
「あ! サフランに対する信頼ポイントが、よく見たら5点しかないぞ(*9)」
サフ
「まあ無理もない」
美蘭
「そう思うならもう少し何とかしてやれ」
一樹
「失敗したな……」
GM
「信頼ポイントは割り振った? じゃあ、イニシアティブを振ろうか。2d6を行動力に足して」
椿姫
「あ! ……1ゾロ。合計12じゃARMSゲージが足らない」
美蘭
「椿姫の光武のイグニッション回らなかったのか!(*10) 最大火力なのに」
椿姫
「最大火力だから、なんだよ。武器だけで14消費するんだもん。動かすだけで大変なんだよ」
GM
「はーい、じゃあ動ける人だけイニシアティブおしえてー」
美蘭
「22〜」
牡丹
「18」
サフ
「私も18」
胡桃
「17」
GM
「こっちは19と13。まずは美蘭どうぞ」
美蘭
「ジャンプユニットふかして最大移動。終了」
一樹
「20で俺の番ね。作戦を風に変更。で、前進します」
GM
「こっちも移動で終了」
牡丹
「全然届かないな。前進」
サフ
「同じく前進。でも、抑え目でいこう。2歩だけ(*11)」
美蘭
「手順18? なら美蘭もだよ〜。MAX移動」
一樹
「俺もだ。前進」
胡桃
「17で移動します」
美蘭
「16で3歩前進。接して攻撃」
GM
「もう動くのか?」
美蘭
「だって風なら移動のARMSゲージ消費が2点までだもん。雑魚に必殺技(*12)。『万国吃驚大幻影』!(サイコロを振る)命中してダメージは35点」
GM
「一撃死だなあ」
美蘭
「大勝利」
一樹
「よーし、負けてられないな。前進」
サフ
「前進。むう、美蘭突出してない? 装甲薄いし、危ないんじゃない?」
美蘭
「危ないよ。だから早く来てくれ」
胡桃
「今行きます。15で前進」
GM
「残念でした。ボスが15で動くよ。ここまで動いて、必殺技だ(*13)。範囲はここまで。サフランと椿姫以外全員はいるね」
サフ
「ああ、みなさんお達者で」
椿姫
「ごっめーん」
GM
「お! クリティカルだ(*14)。全員40点ダメージ」
全員
「いきなりボロボロだあ!」
一樹
「14で回復(*15)」
牡丹
「同じく」
サフ
「前進してボスに攻撃。命中して、17点」
GM
「むう、よけられないなあ。食らい」
一樹
「13で作戦を火に変更(魔織註1)。ボスに接触。切ります」
サフ
「じゃあ協力攻撃(*16)」これでゲージはぴったり0(魔織註2)」
 
 協力攻撃は、ターンの最初でイグニッションの回らなかったPC(この場合は椿姫)を除き、目標敵機に射線が通っていれば誰でも宣言できます。しかし、発動のためには、お互いの手札から同じスートのカードを切らなくてはなりません。
 どのスートのカードを切るかは話し合わず、一度手札から裏返しに出し、同時に開いてスートを見比べます。
一樹
「じゃあ、俺はこのカードで」
サフ
「じゃ、あたしはこれを。せーの!」
GM
「両方ハートで成功だね(*17)」
 
 このとき、スートが同じなら成功ですが、違うと協力攻撃が発動せず、両者のカードは手札に戻ります。
サフ
「隊長、わざわざハートの絵札かい。ありがとうね」
一樹
「あれ? 意味あったっけ?」
サフ
「戦闘中に使ったカードは、回復以外全部感情を動かすんだよ。だからサフランへの思いを2点上げておいて」
一樹
「そうなのか。このときハートじゃなかったら、どうなってたの?」
GM
「たとえばスペードなら、サフランの隊長への尊敬が1点上がって、隊長の信頼は変化なし。隊長から隊員への信頼は、面倒だから恋愛感情に一本化してあるんでね」
胡桃
「回復以外全部ってことは、さっきの美蘭ちゃんの必殺技は?」
美蘭
「ばれたか。実は全部の信頼が少しずつ上がってるんだな。あれで。ちなみに美蘭と椿姫で協力攻撃しても、隊長への信頼が上がるよん」
GM
「じゃ、ダメージくれ」
一樹
「(サイコロを振る)あ! 外れた!」
サフ
「(サイコロを振る)命中。17点ダメージ。『いいフェイントですよ。このまま多のみマスね』」
一樹
「お、おう、フェイント。フェイントに決まっているよ。うん」
牡丹
「調子良いな。こっちは雑魚に移動して攻撃。命中。24点」
GM
「さて、雑魚が動くぞ。射撃タイプだから結構範囲にいるなあ。美蘭、隊長、胡桃に1発ずつ。(サイコロを振る)胡桃だけはずれ。あとは全員1回ずつ命中」
美蘭
「死むー。死んでしまうー」
一樹
「はいはい。かばうよ」
 
 隊長は、いつでもARMSゲージを消費せず、自分も含めて仲間をかばうことが出来ます。かばうときにはカバーリングポイント(以下CP)を消費しなくてはならず、一回の戦闘のCPは隊員の2倍。1点の消費で3d6のダメージを軽減でき、また一度の攻撃に複数消費することも出来ます。消費されたCPの数だけ、かばってもらったキャラはカードを引くことが出来ます。
GM
「美蘭に20点」
美蘭
「回避……一応クリティカル。でもこれって……」
GM
「12なら回避だけど、10以上はダメージの減少に1d6足せるだけ」
美蘭
「HP3点しか残ってない〜。一応10点防ぐけど……」
一樹
「1点でいいだろ。(サイコロを振る)あ!」
GM
「出目7。ぴったり撃墜だね」
美蘭
「ばか、そこでケチるかよ。『うわーん。お兄ちゃんごめーん!』」
GM
「美蘭機除外、と(*18)。牡丹には22点、隊長には20点ダメージね」
牡丹
「たーいちょー。念の為1点頂戴」
一樹
「ああ。俺も。1点使っておく。カード補充するね」
牡丹
「わーい。カード引き放題ー」
GM
「1枚だけだぞ」
牡丹
「でもうち前衛だもん。このまま戦う間はずっとかばってもらわないとさ。そのたびにカードが引けるわけでしょ」
GM
「そうだけどね」
牡丹
「で、必殺技や協力攻撃で、じゃんじゃん信頼ポイントが増えるって訳。やっほう」
胡桃
「前衛キャラ有利の法則? アドベンチャーパートでおとなしいと思ったら、そういうことだったわけですね?」
牡丹
「まあそんなところ」
美蘭
「でも予想外の部分もあったよ。隊長がけちんぼだとこうして撃墜するしね、言うほど有利じゃないや」
一樹
「わるかったよ」
 
 こんなかじで、ボスのHPが0になるか、隊長撃墜などのゲームオーバー条件が満たされるまで戦います。
 今回の場合、最初は苦戦しましたが、椿姫が戦線に現れたターンで椿姫自慢の「88ミリ霊弾砲」が協力攻撃で火を吹きまくり、毎度30前後のダメージをたたき出して簡単に決着をつけられてしまいました。敗因はボスの突出です。
 しかし、それでも2時間近いプレイ時間がかかりました。GMはいろいろ考えず、適当にやるくらいがちょうど良いようです。
椿姫
「『わははははははは!』」
一樹
「『こらこらこらこら! 撃ち方止め! うーちーかーたーやーめー!』」
椿姫
「『む、いかんいかん自分としたことが。冷静に。冷静に。了解であります、少尉殿』」
 
*1
 このときの手札はスペードの5、クラブの8、ダイヤのJ、ハートの7でした。本来アドベンチャーパートでは、ハート以外のカードは意味を持ちません。ルール上はハート以外のカードも押しつけられますが、それは何の有利もうまないからです。しかし、この後戦闘になると、美蘭は手札4枚で戦闘に突入できます。いきなり必殺技を放つことも出来ますし、カードのスートがばらけているので、相手に合わせて自由に共同攻撃ができます。
*2
 本来ならGMの仕事のように見えるこの処理ですが、このゲームにおいてはPLの仕事です。特に戦闘シーンの直前のシーンは、0になるなり戦闘になるのですから、気をつけて消費しないといけません。どうしても思いつかないときだけ、GMに頼りましょう。
*3
 このときの牡丹の信頼ポイントは6点。これを攻撃、防御、行動に割り振りボーナスとします。MAXは3点までですから、9点あればそれ以上のカードのやり取りは必要ありません。結局牡丹はポイントを攻撃と行動に3点ずつ割り振りました。ダメージが6点、イニシアティブに3点のボーナスがつきますが、ダメージの減少には信頼によるボーナスが入りません。
*4
 実は良いシーンを大掛かりに演出するより、細かく萌えを刺激するシーンをたくさん入れるほうが、カードを引く機会は増え、信頼ポイントが上がりやすい。一番大切なのは、たしゃのロールプレイに神経を使い、カードを押しつけるタイミングと、押しつけられるタイミングのバランスを取ることである。サフランと美蘭のPLは、とにかくこれが上手い。
*5
 このGMはロールプレイに並々ならぬ羞恥心を抱いている。マスターをしたいけれど、NPCのロールは恥ずかしいし面倒くさい。デザイナーがこんなんだもの、こんなゲームになるのも納得がいくというものである。
*6
 面倒ならば、GMが位置を決めてしまうのも良いだろう。このあたりは自由に決めてしまってかまわない。TRPGなんて、どうせ集まってだべるための口実だし、サイコロを振るのだって照れ隠しじゃん。ね? 大切なのは楽しく、かつ面倒くさくないことである。
*7
 本来は、アドベンチャーパートは終わってしまっているため、ここでカードを引くのはルール違反だし、システムのバランスを崩す。しかし、GMの頭の中に「ぴろりろりん」と感情低下の音が流れてしまったため特別な処置。このことからも、戦闘パート直前のアドベンチャーシーンでは、光武に搭乗し、出撃するところまで終わらせてしまうことが望ましい。
*8
 牡丹のほうが信頼ポイント低いんだから、代わってやれよ。
*9
 隊長の信頼ポイントボーナスは、隊員ごと別々に管理します。全隊員のなかで、最も低い信頼しか抱いてないキャラクターが、戦闘のとき、隊長のテンションを決定します。このとき、サフランは隊長に対して9点と、並々ならぬ好意を抱いているのですが、隊長はサフランに対して5点しか行為を抱いていません。このとき牡丹に8点、美蘭には9点、胡桃にも9点、椿姫にいたっては11点分の好意を抱いていましたが、この場合意味がありません。結局信頼ポイントによるボーナスは5点。隊長は行動に3点、行動に2点を割り振りました。
*10
 ARMSゲージの起動値に、イニシアティブが満たなかったときは、そのターン一切の行動ができません。これを「イグニッションキーが回らない」といったりします。信頼ポイントによるボーナスはここに最大値である3点を割り振ることが多いでしょう。なぜなら、霊子甲冑設計のとき、このボーナス3を目当てにして設計しないと、ろくな武装を持つことが出来ないからです。とはいえ、椿はやややりすぎ。
*11
 移動を選択した場合、1マスごとに1点のARMSゲージを消費します。サフランは2点を消費します。MAXは作戦次第で、このターンの最初に美蘭は6歩移動しましたが、消費したARMSゲージは4点だけです。
*12
 美蘭は手札を4枚捨てなければなりません。このために美蘭はアドベンチャーパートの終盤、カードを確保していました。ARMSゲージ消費は4。ほとんどの場合普通に攻撃するより少ないはずです。必殺技は命中値も3と低く、敵味方とも回避できません。
*13
 GMは戦闘の最初に必殺技を持つボスクラスの敵にはそれぞれ4枚ずつカードを引いておきます。あとはPCと同じように戦うのですが、このため敵のボスは最初の接触で必殺技を使うことが出来ます。
*14
 命中判定で2d6し、10以上が出たらクリティカルでダメージが+1d6、つまり2d6になります。これがあるので、絶対命中の特徴を持つキャラクターも、命中のサイコロは振ったほうが良いでしょう。
*15
 手札にハートがあるときは、それを切って3d6点回復できます。ARMSゲージの消費は1と、大変お得。
*16
 射線と通っている目標に仲間が攻撃する際、協力攻撃を宣言できます。消費ARMSゲージは4で固定。このため、1ターンに1回撃てるかどうかという大口径武器も、振り回し放題になることがあります。サフランの武器、呪いのインド棒は使用にARMSゲージ8点を消費するので、もう撃てなくなっていたはずなのですが、こうして最後っ屁を撃ちこめるようになるわけです。
*17
 回復にも使えるハートのカードはもったいないようにも思えますが、このとき隊長の手札にはハートしかありません。戦闘パートに入る直前にそれを確認していたサフランの、頭脳プレイです。また、このとき失敗してもカードは手札に戻りますから、自分の持つカードをみんなに教えるために、あえて協力攻撃をし続けるのも、テクニックのうちでしょう。
*18
 撃墜した機体はヘクスから除かれます。このとき、キャラクターの生死判定などは考えていません。これは当然原作のゲームが、戦闘中の脱落によるキャラクターの死亡がないためです。しかし、スリルが足りないというなら、ルールを自作すると良いでしょう。
 
魔織註1
 ルールミス。
 本来であれば隊長が作戦を変更できるのは、1ターンに一回のみ。
 そのタイミングはそのターンの隊長の一番初めの行動の直前です。
 ルールブック14ページを参照。
魔織註2
 ルールミス。
 協力攻撃に同調したからといってARMSゲージが減るわけではありません。
 ARMSゲージが減るのは、協力攻撃が成立した場合です。
 このケースではサフランが協力攻撃を成立させているため、結果的にはOKですが。
 ちなみに、協力攻撃が成立していれば、命中判定の成否にかかわらず、ARMSゲージは減少します。
 ルールブック15ページ参照。