アドベンチャーパート
GM
「さて、今日はなんの話にしようか?(*1)」
牡丹
「隊長の赴任ばなしじゃないのかい?」
美蘭
「えー? またー?(*2)」
胡桃
「わたくしたちはいいんですけれど、GMはまた米田中将のあの台詞をやるんですか?」
GM
「う。それも飽きたなあ」
一樹
「じゃあこうしよう。赴任話はやったことにして、今回はみんなでお花見だ」
椿姫
「えぇ〜?(*3)」
胡桃
「さんせーい。それならいろいろ見せ場がつくれますわ」
GM
「じゃ、スタートはいつもどおり帝国劇場からいこうか。今回のシーンは全部で3つ(*4)。オープニングと企画シーンまでやったら、自動的に戦闘シーンになるから。じゃ、カメラは常に隊長からだからね。いってみようか」
一樹
「最初は隊長室?」
GM
「自由に決めて。最初の登場キャラも、隊長の指名で。その場合は、シーンポイントは消費しないで良いから」
一樹
「じゃあ、胡桃さんと一緒に、舞台の掃除をしています」
胡桃
「『すみません。手伝わせてしまって…』とかいいながら、雑巾がけしています」
一樹
「『なあに。いいんですよ』」
胡桃
「まあ、なんて優しいのかしら、と思ってカードを引きます(*5)。クラブの5か。ハートじゃないと戦闘のときには役にたたないのに」
一樹
「これは俺も引くの?」
GM
「隊員が引いたときくらいしか、隊長が引く機会なんてないから、そうしておいたほうが良い」
一樹
「OK。お。ハートの3だ」
胡桃
「じゃあ早速攻撃に移らせてもらうか。シーンポイント消費。雑巾がけをした床に足を取られて隊長の方へ転びます。受け止めて」
GM
「他者への行動強制になるかな。2点」
胡桃
「『きゃ。あらあら。すみません高村さん』。カード引くと…ダイヤのK」
一樹
「じゃあハートに変えてもらおう。僕のハートの3はあげるから、そのダイヤのKは捨て札にして(*6)」
胡桃
「これでやっとハートをあげられるようになった」
美蘭
「じゃあ、シーンポイント消費。登場します。隊長がそうして鼻の下伸ばして感触を楽しんでいるところに、天井からロープでするすると、目の前に下りてくるよ。逆さになって。視線が隊長と重なったところで……『おにいちゃんたのしそー』と、じと目で」
一樹
「え!? あ、いやこれは別に!」
美蘭
「カード引いておきます。クラブの8」
胡桃
「ハート押しつけ。これで信頼ポイントが上がる」
椿姫
「美蘭に押しつけると、美蘭への愛情が上がっちゃうんの?」
GM
「隊員同士の感情なんかあか○り大先生の設定通りに決まっとろうが。押しつけて上がる信頼ポイントは、対隊長の感情、それだけです」
美蘭
「ますます接待ゲームだ」
一樹
「ついでに感情カードを引くか。スペードの2」
美蘭
「これは今手元にあるカードを押しつけられるの?」
GM
「同時発生の感情だから、まだだめ」
椿姫
「じゃあみんな集まってきたっぽいし、登場するか。『こんなところで何をしている!』」
一樹
「や、やあ、椿姫くん。舞台の掃除をね」
椿姫
「『舞台の掃除?』といって様子を見ると、胡桃と隊長が抱き合ってるわけ?」
胡桃
「さすがに離れてるよ」
椿姫
「なに? それだと怒る理由がなくなる。抱き合ってなさい。2点消費」
胡桃
「断固断る! 3点消費」
椿姫
「くっそう。出損か。うーん、だとすると、……そうだ。『男の癖に掃除など……惰弱だ! そういうことは胡桃に任せておけば良いのだ。今までもそうしてきた』」
一樹
「『そうはいかないよ。生活空間をきれいに整頓することも大切だよ。船乗りは掃除が仕事みたいなものだからね』」
椿姫
「カード引きます。お! ハートのA」
一樹
「クラブの9」
美蘭
「クラブはハートにしておこう」
椿姫
「へー、優しい人、とか思ってちょっと赤くなりつつ……『惰弱な! これだから海軍の連中は…!』」
サフ
「『何の騒ぎです?』と登場。そうだなあ。舞台袖の大道具の後ろで居眠りしていたことにしよう。『眠れないじゃない』」
椿姫
「『こんな真っ昼間から寝てるほうが悪い!』」
サフ
「『相変わらず大きな声ねえ』と大あくび。『でも随分とおそろいで。どうかしたの?』」
一樹
「『胡桃くんと、ちょっと掃除を』」
サフ
「『ふーん。ところで、お花見いかない?』」
美蘭
「まてこら!」
サフ
「何?」
美蘭
「なんだよその唐突過ぎる話題のふりかたは!」
サフ
「だって……今日はそれがテーマなんだろ?」
胡桃
「強引すぎだ、馬鹿」
サフ
「そうかなあ。ごくごく自然な話題の転換だと思うけどなあ」
牡丹
「あいかわらず、独特の周波数を受信してるなお前は」
一樹
「まあいいや。相変わらず変わった子だなあと思ってカードを引くよ。スペードの4」
椿姫
「早速押しつけ! これで3点だ(*7)」
サフ
「じゃ、ついでに引いて、と。ハートの10.『こんな暖かい春の日に、お花見もしないから椿姫はそんなにかりかりするんです』」
美蘭
「『椿姫はいつも起こってるよー』」
椿姫
「『うるさい! 誰のせいだと思っているのだ。いつもいつも貴様らがたるんでいるからいかんのだぞっ。少尉殿も、もっとしっかりしていただかないと!』
一樹
「『真面目なのはいいことだけど、もっと気楽に構えないと、身がもたないよ?』」
椿姫
「お、いいこと言うね。カード引きます。ハートのQ」
一樹
「スペードの9」
サフ
「ハート押しつけ」
一樹
「ハートで一杯になっちゃった(*8)」
牡丹
「『まあそうかりかりすんなよ。怒鳴り声が鍛錬所まで聞こえてきたぜ?』と、登場。『せっかくの隊長と胡桃の逢瀬を、みんなして邪魔しちゃ悪いぜ?』」
一樹
「『そ、そんなんじゃないよ。ねえ、胡桃さん?』」
胡桃
「聞かれて『えっ?』と驚いてから、赤くなってうつむくかな。カードはダイヤの7」
一樹
「じゃあそれは押しつけて…」
GM
「感情の発生は同時処理だから、先に一枚引いて」
一樹
「ダイヤの9だ。うわしまった。ハート捨てなきゃ。もったいない。3かな(*9)。で、そのあとで押しつけは?」
GM
「今引いたカードを押しつけるのでない限り、問題ない」
一樹
「じゃあ、Aを胡桃に。ダイヤの7は捨てて」
牡丹
「『それより隊長よお、こんなに天気がいい日にみんなで掃除でもないんじゃないのか?』」
サフ
「掃除してんのは二人だけだけどね(*10)」
一樹
「『牡丹くんまでお花見かい?』」
牡丹
「『分かってるじゃん。花の命は短くてって、歌にもなってるぜ? 今のうちに行っておかないと、損じゃねえか』」
一樹
「『とはいえ、言ってみれば僕らは戦闘待機状態だし』」
牡丹
「『支配人に許可取ればいいのさ。誘ってやれば酒も飲めるし、きっと喜んで許してくれるぜ?』」
一樹
「『そうか。駄目元で頼んでみるかな』」
牡丹
「『そうこなくっちゃな』。カード引くよ。スペードのA」
一樹
「ハートの10押しつけー。僕の引いたカードは、クラブの2」
胡桃
「じゃ、ハートのAを押しつけます」
一樹
「シーンを切り替えるよ。米田中将の支配人室に」
GM
「隊長の移動はポイント払わないで良いよ」
サフ
「ならこの時間経過だの状況変化だののポイントは、いつ使うんだ?(*10)」
GM
「隊員がシーンを強制的に変えたいときだよ。宴会のはずがいつの間にか二人っきりで川辺にいたりすることにするために使う。さて隊長、支配人室には誰を連れていく?」
一樹
「みんなで掃除をした後で、一人で行くよ」
GM
「『おう、高村どうした?』」
一樹
「『失礼します。実は、隊員たちにせがまれまして、花が散る前に、みんなでお花見にいけないかと』」
GM
「『へえ。結構じゃないか。いまだと上野公園がいいぜ』」
美蘭
「シーンポイント消費、登場。『わーい! お花見お花見ー!』とかいって、天井からくるくる回って落ちてくると、ハイジのやぎみたく跳びはねまわって喜ぶよ」
一樹
「『こ、こら、美蘭』カード引いておくかな」
椿姫
「これでこのシーン終了?」
GM
「シーンポイントが0になった人が出るまでだらだら続くよ。まだ続く」
椿姫
「このままじゃ話に絡めないな。シーン変更を要求する! ということで時間経過のシーンポイント使用」
牡丹
「同感。2点必要なアクションだから、1点こっちが肩代わりして消費するよ」
GM
「じゃあ隊長、次のシーンを適当に決めて。おれちょっとトイレ行って来る」
一樹
「隊長がマスターみたいなもんだな、このゲーム。じゃあ、食堂にみんな集合。『ということで許可がとれたから、明日はお花見だ』」
椿姫
「『用意が必要ですね。古来より、準備を怠って勝利した例はありません』」
牡丹
「『んーな堅い考えすんなって。楽しくいこうぜ』」
胡桃
「『では、明日はお弁当を用意しないとですわね』」
サフ
「「なら話ははやい。買い物に行きましょう。ジャガイモ、にんじん、たまねぎ、牛肉、ガラムマサラ…』」
美蘭
「弁当カレーで決定かよ!」
胡桃
「大体ガラムマサラは無いんじゃないか? 太正に」
サフ
「ガーン! ……じゃあ、サフランはガラムマサラを探すたびにでるよ……」
牡丹
「そこまでカレーじゃなきゃだめなのかよ」
サフ
「だめさ! だってカレーしか作れないもん! もういい!『あ、ガラムマサラはここにありました』シーンポイント消費したから(*11)」
胡桃
「『ガラムマサラって、何ですの?』」
サフ
「『こういう香り付けの葉っぱですよ」』
美蘭
「待て。お前月桂樹と間違えてるぞ。ガラムマサラはスパイスだ」
サフ
「嘘! はずかしー! 『これは月桂樹でした。ガラムマサラはこれです』さらに1点」
牡丹
「第一カレー作るならまずターメリックだろ」
サフ
「『ターメリックもあります』1点」
胡桃
「ポイント無駄遣いするな!(*12)」
サフ
「『そして、出来上がったカレーがここにあります』大鍋一杯にどん! ふう、4点も使っちゃった」
美蘭
「あんまり爽やかに笑うな。殴りたくなるから」
一樹
「『じゃあせっかくサフランのカレーがあることだし、みんなで昼飯を食べながら午後の買い物リストを話し合おうか』」
胡桃
「『むむ、ここで料理を食べておいしー、なんてことになったら家事系キャラの私のアイデンティティが侵害されてしまう。1点消費。『大変ご飯がありませんわ』」
サフ
『ふふふ。1点消費。『大丈夫。うどんを茹でておきました』」
牡丹
「これが後に帝劇の名物料理となり、カレーうどんとして広く紹介され、後世の洗濯屋を喜ばせることになるのであった。何点?」
GM
「1点で良いよ」
椿姫
「とりあえず買い物リストの一番上に、米ってでっかく書いておくよ。何点?」
GM
「その程度ならなんの強制力もないもの、シーンポイントは必要ないって」
 
こうして、誰かのシーンポイントが0になるまで、ロールをし、各人カードを溜めていきます。
 
*1
 このゲームでは、GMはシナリオを組む権限がほとんどない。PCがシーンポイントを消費して勝手にアイテムやNPCを登場させてしまうためだ。どんな方向性の話にするかは、最初PLを交えて話し合うのが良いだろう。
*2
 最初のシナリオは隊長赴任話にしていたため、テストプレイのたびに隊長赴任ばかり10回以上やっていたりするのだ。我々は。
*3
 椿姫のPLは前日会社のイベントで花見であった。
*4
 この数字は、マスターが決める。ゲームの時間制限を気にしよう。
*5
 この程度のできごとでも積極的にカードを引かないと、感情の変化はない。ときめきが十分にないと戦闘でまともに戦えないので気をつけること。
*6
 感情の押しつけ。これにより、隊長の胡桃に対する信頼が上昇する。逆ではないので注意。カードは持っているだけでは信頼ポイントに関係しない。じゃんじゃん押しつけて上昇させていこう。
*7
 信頼の上昇分は、数札1点、絵札2点、Aは3点です。
*8
 活発にカードを引けば、隊長はすぐにハートで手札がいっぱいになるはずです。もしここにカードを増やす時は、ハートを捨て札にしなくてはならないことになります。隊員のカード引きには俊敏にハートをおしつけるのが良いでしょう。
*9
 でないとこうなります。
*10
 山形弁は普通に表記すると標準語と区別がつきにくい。山形弁のイントネーションで読んでほしい。
*11
 シーンポイント1点の「自分の行動」は、時間に関係しません。なんらかのアクションを事前にしていたことにできますし、隠し設定をその場でごり押しすることもできます。
*12
 全くです。では無駄でない消費とはなんでしょう。それは、信頼ポイントの変化、すなわちカードを引くきっかけになることに、ポイントを使うことです。しかしサフランPLのこの行動には隠された意味もありました。シーンが冗長になったために、さっさと自分のシーンポイントを0にして、シーンを打ち切ろうとしたのです。こういう使い方も、裏技的にアリといえなくもないでしょう。