旅のまにまに
その七・プリクラ大作戦
先日、パスポートの期限がいつの間にか切れていたのと、ボーナスがちょっとだけ出て
予算に余裕があったので、当分の間は海外に行くことはないのだがミレニアム記念にね、
なんて思って大阪は谷町4丁目にあるパスポートセンターへ。
ちょうど余っている写真もあったので、それを指定サイズの大きさに切って、申請書や
ハガキと共に『整理券窓口』という名のチェック窓口に出すと、ものの3秒もしないウチ
に突っ返された。
なんで? ちゃんとそろえてるで、と文句を言うと、係の女性が間髪入れずに、
「この写真の顔が大きいのです」
と、写真にものさしをあてる。なんと、顔の大きさが規定より0.5_程大きいだけな
のだ。悪かったな、顔がデカくてよ! (怒)
しかし、ほんのわずかだけ大きいだけだし、規定誤差以内と言えば言えなくもないぞ、と
反論すると、
「ダメです、ここを外に出られると向かいの建物に旅行用品店がありますので、そ
こで写真を撮ってもらってから再度来て下さい。もう、後ろがつかえてるので早く
して下さい!」
と、逆ギレされてしまい、渋々その場を後にして隣の旅行雑貨店へ。
すると、たった2枚のちっちゃい写真がなんと、千二百円! さらに律儀に消費税まで
別途請求する念の入れよう……おいおい、今時そんな値段とらんぞ(激怒)。
これはどーも胡散臭い、絶対にパスポートセンターの係官と旅行雑貨店はつるんでるに
違いない、そう思わんと納得がいかんのだ。
この話を、某旅専門書店の店主に話すと、「パスポートセンターの前で露天写真屋をす
れば、儲かるんじゃないか?」
なんて言ってきた。うーん、いい考えやけど、日本じゃリスクが大きそうだしなぁ。
かなり脱線してしまったが、この写真で想い出したことがある。
インドからネパールへ抜ける際、国境の町ラクソウル(バールガンジ)のネパール側イ
ミグレでビザを申請しようとした時のこと、私の手前にいたニュージーランド人の番にな
った途端、何やら大声で喚きだしたのである。どうやら、写真が無いのでをビザ申請を拒
否されたらしい。しかし、彼の持っているインドビザはシングル・ビザらしく、インドを
出国してしまったので無効となり、もう後戻りできないため必死だ。
そして、それを見計らったのか、どこからともなく怪しいオヤジが近づいてきて、
「フォト・サービス〜ぅ」
なんて言ってきてる。おいおい、ここは国境の中間地帯やぞ(汗)。が、彼はそんなオヤ
ジなど眼中にない(まぁ、ボラれるの見えてるしね)ようで、一歩も引くことなく文句を
言っている。そして待つこと10分、とうとう係官が根負けしてビザを与えたのである。
おっ、これはオモロイなぁ、なんて思ってしまった私は、ワザと写真を付けずに申請、
「写真は?」
と、聞かれたので、
「見つからないんだ」
なんてとぼけると、しかめた顔をしながらも
ポン! とビザを発給してくれたのである。
あまりにものアッサリさ故、あ、あったわ、と慌てて写真を取り出すと、係官がニヤリ。
いや、ちょっとした悪ふざけやったんや、ごめんなぁ。
今でも、インド側イミグレを抜けたらスグに見える『Welcome
Nepal』の文字が忘れら
れない。
と、それから数年後、私はカンボジア・プノンペンのポチェントン空港にいた。
旅立つ前、カンボジアのビザは空港で取れるとか無理だよ、などいろいろ聞かされていた
が、皆共通してるのは『結構アバウトだ』の一言。。。ほ、ほ〜ん(ニヤ)。
と、なにやら閃いた私はスーツにネクタイ姿になるや、急ぎゲームセンターへ。
そう、当時はあのプリクラが大流行していた時で、私もそれにあやかって、
『プリクラ写真でビザをもらえるか?』
という壮大な実験を考えついたのである。
だが、実行しようとすると、ゲームセンターの前でプリクラ待ちをする女子高生の列に
混じって男一人・スーツ姿はかなり異様だし恥ずかしい。しかも待てども彼女たちは何枚
も何枚も撮り続けるので一向に列は減らないし、怪しい男がプリクラ待ちをしているので
なにやら囁いてるし……あぁっ!
しかし、ここで立ち去っては男がすたる、と待つこと半時間ほどでやっと私の番に。早
速『フレーム無し』を選択するや、速攻で撮影終了。が、シールが出てくるのをを待つ時
の流れの遅いこと、もう、いやだぁ(涙)。
という具合でなんとか撮った虎の子のプリクラ写真が今、このポチェントン空港で活躍
する場がやってきたのである。
ビザ発給窓口には8人の係官が座っている。既に機内でビザ申請書と入国カードを貰っ
て記入していたのでスグに終わるだろうな、なんて思っていたのが大間違い、なんと受け
取りは一番左端の係官だけで、彼に申請書とパスポートを渡すと、右へ右へと一人一人が
順繰りにチェックするのだ、そしてやっと右端の係官にパスポートが到着してはじめて、
20jと引き替えにビザを押したパスポートを返してくれるのである。
当然、我々もパスポート動きと共に移動せねばならず、不便この上ない。端から見ると
パスポートの行方を追いながら心配そうにしているみんなの姿はかなり滑稽ではあるが。
そして、やはりここはカンボジア、写真を持っていなくてもビザを貰っている人もいれ
ば、国連のマークが入っているだけでなんだかよくわからないファックス用紙を高くかざ
して無理矢理に突破しようとする人もいたりと、飽きないくらいに面白い。
けど、ずっと人間観察している訳にはいかない、やっと空きはじめた頃に私も申請書を
出す。もちろん写真はプリクラ君だ。
しかし、順調に右へとパスポートは流れていくも、3人目の係官の表情が変わった。
「この写真はダメだ」
といきなり書類を投げ返してきたのである。 おいおい、そりゃないだろう、
「これはね、日本で撮った最新式のデジタル・フォトだ、それでもダメなのかい?」
と言うと、係官、
「小さくて、見えないんだよ」
と一言。しまった! 作戦は大失敗に終わってしまった……打ちひしがれた私は、バック
から予備の写真を取り出した。。。
あの後、ビザはちゃんと貰ったが、あまりにも悔しかったので、あちこちの掲示板にこ
の顛末を書き込んだところ、数ヶ月ほど経って見知らぬ方から一通のメールが。
「あなたの書込を見てから、私も気になってプリクラ写真をカンボジアへ持ち込ん
で申請したところ、何一つ文句も言われずにすんなりとビザをいただきました。ど
うやら運次第ってやつですね。」
だって……ちくしょー、悔しいじゃねぇか!
今度はなぁ、山ほどプリクラ写真持ち込んでリベンジだぁ(笑)。
※ ちなみにネパール・ビザはシール式です。