8/25(土) 【美しい街Part3】
ローマの話にもう一日お付き合いください。
教会、遺跡、白馬に乗った警官・・・。ローマは街そのものが美術館と言ってよかった。茶色の木立が古い建物によく似合うと思った。
2日目は日曜日だったので、バチカンに行くことにした。入場料がお安くなるのだった。前日、夕陽の美しいスペイン広場に酔いしれた私たちは、朝のスペイン広場にも行かなくては・・・と、誰ひとりいない、それはそれで爽やかな朝のスペイン広場を味わってから、ひたすら歩き、バチカンに向かった。システィナ礼拝堂の天井画と壁画に会うために。
システィナ礼拝堂は、暗くて厳かで、威圧感があり、歓声を上げる余裕もなかった。天井画の1枚1枚を確かめるどころか、その空気をまともに吸い込むのに必死だった。呆然と天井画(「魔女の条件」で、ヒカルが好んで見ていたあの絵もその1部なのです。余談ですが、あの絵を愛する役は、大野クンの方がお似合いだと思うのですが。)と壁画を眺めていたら、突然ビーッと言う音がけたたましくなった。一瞬何事かと思ったが、なんと閉館の合図だった。何処でお茶したしたわけでもなく、1分1秒無駄にせず、ひたすら順路に沿って歩いた結果、非情のベルに追い出されたのだ。それほど、バチカンは広くて、見応えがあった。
システィナ礼拝堂の威圧感に驚いている場合ではなかった。サンピエトロ寺院に入った私たちは、あまりのその巨大な空間にめまいを起こしそうだった。何処に自分の視点を定めたらいいのか、気が遠くなるほどだったのだ。宇宙空間に放り出されたら、こんな感覚に陥るのだろうか・・・とふと思った。何だか自分の存在が吸い込まれて消えてなくなってしまうようだった。
3日目はまたバチカンとサンピエトロ寺院に向かった。幾分前日よりは効率よく見たものの、システィナ礼拝堂に着いて間もなく、やっぱりまた非情のベルがなった。どうも冬は閉館が早いらしい。カノジョがどうしても見たいと言っていたラファエロの絵がたくさんある絵画館も、結局、涙を飲んであきらめた。
サンピエトロ寺院の近くでヤケクソの昼食を取った。前の日は昼食を取る暇もなかったので、ワインも2日分、いつもの2倍飲んだ。
で、相当酔っぱらった状態で、サンピエトロ寺院に行った。あの吸い込まれるような、自分が消えてなくなっちゃうような感覚をもう一度味わいたかった。地下も堪能したし、今日は、ゆっくり座って・・・と思ったら、何だか天井の方で、豆粒のようなモノが動いてるのにカノジョが気がついた。遙か上方を人が歩いていたのだ。「ドームに登れるんだ。」
酔っぱらってることをすっかり忘れ、エレベーターに乗り、すぐさまドームに向かった。上方から階下を眺めるのも、なかなかだった。宇宙遊泳感がさらに増した。最後は、ドームの曲面に当たると思われる狭い螺旋階段をぐるぐる登ることに。屋上に出られるらしい。「しまった!ワインが!」口を押さえながら、やっとの想いでたどり着いた出口。
ローマの街が一望できた。外の空気に触れた開放感からか、二人とも思いっきり歓声をあげた。空はオレンジ色になっていた。
下に戻って、ラファエロの絵をもう一度見てくるとカノジョが言った。私は礼拝席に座って待った。何だか知らないうちに夕方のミサが始まった。厳粛な雰囲気に浸った。きっといい未来が訪れるに違いないと思った。
あれから3年、私の生活は、ホントに楽しくて充実した毎日になった。
春の埼玉アリーナで、広い会場でただただ大野クンの姿を追いかけながら、あの時のまるで宇宙空間に吸い込まれるような感触をふと思い出した。
次のコンサートはどんな何処であるのだろう。ドームだったりしたら、豆粒ほどの大野クンにしか会えない。でも、あの吸い込まれて消えてなくなってしまうような感覚をまた味わえるとしたら、それも味なモノかもしれないと思う。
相葉ちゃんの後ろにデーンと構えるサンピエトロ寺院は真っ白で実に美しい。私が行ったときは、外壁修復中で、ビニールみたいな布で覆われてた。ホントに美味しいお仕事をいただいたんだな。大野クンのパリ絵描き修行も夢でないかも。
8/20(月) 【美しい街Part2】
先々週だったか、USOジャパンで、ローマの骸骨寺を取材してた。凄い!と思った。あの2人はなんて美味しい仕事をもらうんだ!と思った。
3年前の冬、「借金してでも海外旅行には行きなさい!」と母に励まされて、貯金がスッテンテンなのに、カノジョと旅行することになった。で、どこに行こうか。
その年、信じられないほど仕事に追われ、そして、数年前に行ったインド旅行で、何だか精魂吸い取られたって感じだった私は、何処に行くか考える元気がなく、カノジョに旅先の選択権を譲った。
カノジョは真剣に悩んでくれた。行きたいところは山ほどあった。「トルコのカッパドキアに行きた〜い。パムッカレを見てみたい〜。」「でもトルコは夏がいいらしいよ。」「シナイ山に登って、朝陽を見たい〜。死海にも入ってみた〜い。」「おいおい、予算は15万円なんだけど。」「そうだった・・・。」
で、とりあえず、1都市滞在型の格安ツアーに絞った。
パリ。その夏、サッカーのワールドカップに死ぬほど行きたかったカノジョは、どうして今パリなのよ・・・とまず却下。
ウイーン。本場のクリムトの絵を見たかったし、エリザベートも観たかったので、いいな〜と密かに期待したが、クラシックに弱いと情けなくなるから・・・とやっぱり却下。
で、結局、ローマになった。ラファエロを描いた漫画にはまってたカノジョは、システィナ礼拝堂を絶対見に行く!と、突然絵画研究家になった。
「本場のカルボナーラを食べられればそれでいいよ。」と私は、ナンの下調べもなく飛行機に乗った。
「あっちに行ったら、アナタの後をついていきます!」と飛行機の中で、突然カノジョが言い出した。「ゲッ。私が道案内するわけ?」「そう。」「何で?」「何でも。」「へ!」ってなわけで、それからがもう大変。ワインで酔っぱらう暇もなく、ガイドブックとにらめっこ。
で、私の目を惹きつけたのが、骸骨寺だった。
「ウヒャ〜、なんか、骸骨だらけのお寺があるんだってサ。」「やめてくれ〜。」「アナタの後についていきますって言ったじゃん。」「へ!」
教会ってこんなに暗いんだ〜って感じの本堂(?)をグッと眺め、何だかホントの中世のヨーロッパをちょっとだけ味わった気分に。で、骸骨は何処だ!
どうも地下にあるらしい。
地下に降りて、イキを飲んだ。今までに見たことがないような美しいモザイク模様の壁、壁、壁。それもすべて骸骨でできている。天井にも一面のモザイク模様。頭蓋骨だけでなく、腕や腰の骨を実にうまく組み合わせている。鳥肌が立つかな〜と期待したが、出るのは「美しい!」という言葉とため息だけ。なんだか信じられないけど、とっても美しいのだ。霊感がなさ過ぎるのも考えものか。
ビデオにもカメラにも収めてはいけないらしい。絵はがきを買いたかったが、財布の紐は「気味悪〜い!」と連発してたカノジョが握ってたので、小心者の私は「買って!」と言えず、ただただ脳裏に焼き付けて骸骨寺を後にした。
あの骸骨寺に、まさか、USOで会えるとは思わなかった。内部もしっかり映してくださって。大・大・大感激でありました。あの回、確か大野クンはあんまり映ってなかったんだけど、お宝ビデオの一つになりました。
「シチリア島にミイラ寺ってのもあるんだって。」と早速カノジョに報告。「へ〜。」とつれないお答え。
また、いつかイタリアに行けるといいな〜。今度は緑豊かな季節に行ってみたいものだ。
8/17(金) 【美しい街】
私は、旅に出ると、極力地下鉄やタクシーは利用しないで、時間の許す限り、そして、体力の続く限り歩くことにしている。
海外を旅行しても、JTBでいただく街路マップをボロボロにしながら、歩く方向にくるくる合わせ、ひたすら歩く。街のにおい、街の音を全身で感じながら、歩き回る。何回も同じ風景に出会ってると、不思議とずっと前から、その街を知ってる感覚に陥る。素敵な錯覚だ。
御堂筋からちょっと脇に入ったところにあるホテルに泊まった。大阪の街をはじめて歩いた。想像していた以上に美しい街だった。中之島や御堂筋は昔ヒットした歌のイメージからか、もっと演歌っぽくて色っぽい街なのかな・・・なんて想像していたのだった。とんでもない誤解だった。
街路樹の緑も美しく、とてつもなく凛々しい。思わず背筋を伸ばしてゆっくりと歩きたくなる。品格と風格のある通りだった。
昔、雑誌か何かで、京都、奈良、大阪の街が、ローマ、ロンドン、パリとそれぞれ似ているというような記事を読んだことがあった。ローマもそれはそれは重みのある美しい街だった。何年か前、ローマを訪れたとき、この街の落ち着きと奧の深さは、京都か、それとも奈良か、どっちだろう・・・と友達と悩んだことがあった。奈良の街は京都にはない何とも言えぬのびがあって、私は、大好きなんだけど、ロンドンには行ったことがないから、それぞれの街がどの都市と似てるのか、結局わけ分からなくなってしまった。
大阪の魅力はもっともっと奧が深いのだろうけれど、御堂筋と中之島を歩いた限りでは、パリの雰囲気にちょっと似てるな・・・と思った。喫茶店やお食事何処で出会う人の笑顔もとてもにこやか。
おうどんもお好み焼きも考えられないくらいお値段が安いんだけど、これがまた、とびきり旨い。私は、根っからのご飯党なので、普段は、おうどんを滅多に食べないんだけど、関西に行くとあの薄味のつゆ目当てに食べずにいられない。昼も夜もおうどんを絶対食べてやる!と凄い意気込みだったのだ。
結局、大阪駅のレストラン街できつねうどんを1回食べただけにおわってしまったが、あの感激は忘れられない。できれば白い器で出していただきたかったな。なんて、360円のおうどんの器にケチ付ける私は、究極のイケズオバサンか。
あと5センチ舌が長かったら、私は器の底をなめちゃってましたね。
大阪は、大阪なんだなって帰る頃になってやっと気がついた。パリを彷彿とさせる雰囲気はあるけど、やっぱりパリとも違う。世界中でたった一つしかない都市、大阪なんだなって。
造幣局の通り抜けは最高らしい。いつかぜひ訪れてみたいものだ。