宇宙戦士バルディオス全話レビュー


第33話「破滅への序曲(後編)」

ストーリー

 地球はアルデバロンが開発した人工太陽が北極と南極で作動したため、膨大な量の氷が蒸発または溶け、それによる大津波や激しい豪雨に見舞われていた。
 ガットラーは大津波や豪雨がおさっまた時点で総攻撃をかけるべく、アフロディアに戦闘準備を命ずる。
 一方、ブルーフィクサーでは、一部の隊員が家族を助けたい一心で、マリン達バルディオスチームに銃を向けて、バルディオス出動を脅迫する。しかし、月影長官やクインシュタイン博士の身を挺しての行動で事なきを得る。大津波等がおさまった後に予想されるアルデバロンの総攻撃に備えての戦力温存のため、バルディオスは出動できないのであった(救出に向かっても、もう間に合わない)。自然の猛威の前にはバルディオスといえど無力であった。

 今回の大津波で、ブルーフィクサーゆかりの人々が次々と命を落としていく。世界連盟のモーガン代表はハーマンに後の事を託すと連盟ビルと運命を共にする。オリバーは妹エミリーからの手紙で、彼女がロイとの間に男の子が生まれたことを知る。だが、彼女達が住んでいると思われる北アメリカが水没したとの報に、涙を流す。ジェミーの父親のバード国王も、ジェミーに対して通信で言葉を送って最期を遂げる。世界放送のエミーは、燃料が切れるまでヘリで中継を行い、最後はブルーフィクサーに望みを託す言葉を語って、海中に没する。

 2週間ほどが過ぎて大津波や豪雨もおさまり、久振りに太陽がのぞく。ジェミーは父を失った悲しみをこらえようとするが耐え切れず、そばにやってきたマリンの前で泣く。

 そのころ、ガットラーは新しい地球の地形を眺めていた。すると、一つのことに気づいた。何と、S1星の地形と瓜二つなのであった。はたして地球とS1星の関係は?。

感想

・ブルーフィクサー隊員
 ブルーフィクサー隊員達も、今回は非常につらい立場にあります。もしかしたら、自分の家族を救えるかもしれないと思わせるような力があります(実際は間に合わないと思うが)。だから、マリン達に銃を向けてバルディオス出動を脅迫してしまう隊員が現れてしまうわけです。ですが、私情を挟むわけにはいきません。ブルーフィクサーという地球を守るための公の部隊にいる以上、時には家族を見捨てねばならない。頭ではわかっていても本当につらいですね。

・月影長官
 家族を救うために、銃でバルディオス出動を脅迫する隊員の前で、撃つなら私を撃てと言うのは、前話での作戦ミスに対する償いの意味もあるでしょう。「私の判断ミスがなければ、この者達の家族を死なせずにすんだ。」との思いが込められているような気がしてなりません。
 本人も、奥さんと子供を失ったわけですが、もし、自分の判断ミスではなく、他人の判断ミスだったら、マリンに銃を向けた隊員と同じような行動に出たでしょうか?

・クインシュタイン博士
 屈強な男達よりも堂々としてたような。いくら、本当に撃つ気はないとわかっていても、銃を向けられて、あそこまで堂々とするのはなかなかできるものではありませんよね。
 あと、クインシュタイン博士は身寄りがないんですかね?。ネルドやデビットの死で親しい人を失うことになれたか、それとも、そういう状況でも平常心を保てるか、または雷太のように身寄りがないとか。

・オリバー
 大切な妹を今回で失ったと思われるオリバー。妹エミリーからの手紙の住所から、水没した地帯に住んでいると判明したのでしょう。彼の流した涙が印象的です。

・雷太
 身寄りがないために、オリバーやジェミーほどはつらい思いをしていません。ということは、雷太の両親も身寄りのない人同士で結婚したのか、なければ一人っ子同士とか。でも、雷太もリトルジャパン(第13話)やアメーダス(第26話)の件で、大切な人を失う悲しみは体験しているんですよね。

・ジェミー
 ジェミーは実の父親であるバード国王を失ってしまいました。しかも、父の国そのものも水没により失ってしまったわけです。第9話でバード国王が実の父親と判明した時、ブルーフィクサー一員としての道を歩むため、父親のもとで暮らさなかったために、助かってしまうとは。複雑です。

・エミー
 エミーと他2名のスタッフがすごいと思ったのは、生存者のためにヘリコプターの燃料切れで墜落する直前まで立派に中継していたことです。燃料切れで墜落することがわかっていただけに、その恐怖に耐えながらの放送ですから頭が下がります。しかし、燃料切れで墜落して海中に没した後、爆発したのは・・・。
 ところで、エミーの声ですが、第15話で増山江威子さんでしたが、なぜか小山茉美さんに代わってます。別に小山さんがいやというわけではありません。増山さんの声のイメージが出来上がっていたので、ちょっと違和感が。スケジュールが合わなかったのかな?

・バード国王
 自分の国が水没していく中で、必死に娘のジェミーに言葉を残している姿が目に浮かびます。双方向で通信できれば、せめて最後にジェミーの声を聞かせてあげたかったです。なのに、ブルフィクサーからの通信を傍受できないなんて。
 ところで、バード国王のレニア国は高い山がないのかな?。すべて国全体が水没したので。

・エミリー
 エミリーに関しては、私は勝手な推測をしています。エミリー達が住んでいる家(小屋?)に津波が押し寄せているシーン。あれは、オリバーの想像であると。エミリー達はたまたま、その時は津波の心配のないところに出かけてたと。そして、自然の猛威や食料の問題等を乗り越えて、いつか、オリバーと再会する日がくることを。これって、やっぱり現実逃避?。ちなみに、エミリー達の新居はオリバーが悲痛の思いをしているシーンから推測するに北アメリカのどこかですね。

・月影長官の家族
 津波に脅威から逃れるために避難を開始していましたが、間に合わず、巨大な大津波にのまれてしまいました。月影長官が自分達をアルデバロンの脅威から救ってくれると最期まで信じていただろうに。

・モーガン代表
 月影長官の作戦ミスをハーマンに話していましたが、それ以上は月影長官のことを責めることなく、むしろ、自分は避難せず連盟ビルと運命を共にしました。大津波や豪雨による崖崩れ等で世界中の多くの人々の命が失われているのに、自分が助かることを良しとしなかったのかもしれません。以前は都合のいい時だけ、ブルーフィクサーを誉める調子の良いおじさんだと思ってましたが、この最期の姿を見て認識を少しあらためました。

・ハーマン
 モーガン代表が月影長官を非難した時、「敵は我々の想像を超える卑劣な手段を取ってきた。私でも月影長官と同じ判断を下した。」という意味の発言をして月影長官をかばっていました。ですが、アルデバロンの今までのやり方からすれば、このような作戦をとるのは想像できるはず。今はそのような言い争いをしている時ではないとの判断からでた言葉でしょう。
 あとモーガン代表をおいて避難したときは、とても辛かっただろうと思います。いくらモーガン代表の意志とはいえ、自分達だけが助かろうとしているみたいな感じになりますからね。

・アフロディア
 地球の非戦闘員を心配するような発言が聞かれました。第31話以降、アフロディアはあきらかに変わりました。それらのシーンをTV本放送時に見たかったです。

・ガットラー
 亜空間エネルギーが残り少ない事から、ある意味で追い詰められているガットラー。それだけに、なりふり構わないという感じで、今までに迫力さえ感じます。しかし、ラストで新しい地球の地形がS1星とそっくりなのを見てがくぜんとした顔も印象に残っています。

・北極
 北極は海に浮かぶ巨大な氷と聞いていたのですが、人工太陽が燃え尽きた後の北極地点の様子をモニタに映し出したときは陸地がありました。私の認識間違い?。それとも、モニタに映し出されたのはグリーンランドあたりの映像?。

・地球とS1星  今まで地球=S1星かもとを思わせる伏線はありましたが、これで、ほぼ決定的に。あとは放射能汚染されているか否かの違いです。もっとも、私は地球とS1星はパラレルワールドの関係と思い込んでいるのですが。
 現在の海の水位が約65m上昇すると、本当にこのような地形になるのでしょうか?。実際に調べたらおもしろいかも。

・マリン
 今回の攻撃により、マリンは肉親を失う悲しみはないにしろ、今までの戦いを通して知り合った人々等を失ってしまいました。助けに行けるのであれば助けに行きたかったでしょう。しかし、最終決戦に備えて待機せねばなりません。
 ラスト近くで、涙を必死にこらえるジェミーにやさしく接するシーンがあります。これでは、ますますジェミーはマリンのことを思うようになってしまうのでは。まあ、マリンとしては同志を慰めている感覚でしょうが。

・今回の作戦
 ところで今回の作戦ですが、美しい地球を奪うために核兵器を使用せずに地球人を抹殺するのが目的です。しかし、原子力発電所まで大津波で海中に没してしまいます。放射能関係は本当に大丈夫なのでしょうか?。この件は、以前、どなたかが某BBSで触れていたのを、今回、思い出したので載せてみました。


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