宇宙戦士バルディオス全話レビュー


第29話「地球氷河期作戦」

ストーリー

 ある日、木星の衛星であるガニメドが突然、木星の軌道上から消滅した。しかし、地球側はこの事態を知りつつも、アルデバロンとの戦闘での余裕のなさから、この事実を無視せざるをえなかった。

 一方、ブルーフィクサーでは、月影長官がある人物をマリン達、バルディオスチームに会わせていた。その名はデビット。彼はマリンのスペアとして、パルサバーン操縦のための訓練を受けていた。雷太達は、またマリンを追い出すために、今度はマリンの代わりになる人物としてデビットを派遣してきたかと想像したのか反発する。そんな中、アルデバロンが現れたとの報が入り、マリンは自分の腕前を見せるためにデビットも搭乗させる。

 バルディオスはいつものように、アルデバロンの透明円盤を粉砕していくが、突然、皆既日食がおこったかのように辺りが暗くなっていき、マリンは驚く。
 調査の結果、木星の衛星であったガニメドが太陽の陽射しを遮るような軌道上に現れたことが判明した。これもアルデバロンの仕業である。クインシュタイン博士は世界中の頭脳を集結させて、事態打開に取り組む。そして、ガニメド破壊用のメカとして完成したのがフィクサー1であった。

 しかし、フィクサー1は一向に出撃する気配がない。実はフィクサー1はガニメド破壊のための特攻メカであった。しかも、その操縦技術の難易度が高いため、マリンかデビットしか乗りこなせないものであった。マリンは地球のためにフィクサー1に乗り込む決意をするが、そこへデビットがフィクサー1のパイロットを志願してきた。
 デビットはマリンと二人きりになると、学生時代からクインシュタイン博士を愛していたことを告白する。そして、地球のためではなく、クインシュタイン博士のために死にたいということも語る。影で二人の会話を聞いていたクインシュタイン博士は悲痛な思いでその場を立ち去る。
 地球人が死に絶えるのも間近にせまっていた。そのため、ついに月影長官はデビットに翌朝にフィクサー1での出撃を命令した。デビットは出撃までに間があることを利用して、クインシュタイン博士に学生時代から想いが変わっていないことを告げる。クインシュタイン博士は、死に行くデビットの想いをかなえようとしたのか、午前1時に部屋のカギが開いているとデビットに告げる。

 やがて午前1時になる。デビットはそっとクインシュタイン博士の部屋の前に立ち止まり、クインシュタイン博士が言ったとおりに、部屋のカギがかかっていないことを確認すると、部屋には入らずに立ち去る。そして、朝まで待たずにフィクサー1で出撃する。マリン達、バルディオスチームも急いでデビットのフィクサー1に合流する。

 ガニメドに向かうメカを確認したアフロディアは、ガニメドを破壊させまいと透明円盤等を繰り出し迎撃しようとする。が、デビットの操縦技術とバルディオスの活躍により、何とか切り抜ける。いよいよ、ガニメドが目前にせまった時、バルディオスは亜空間に避難し、デビットも最後の準備にはいる。そして、見事、デビットのフィクサー1はガニメド破壊に成功する。

 地球に太陽の陽射しは戻ったが、デビットが何の理由で散っていったのか、その真実を知るものは極わずかである。

感想

・デビットの第一印象
 デビットファンには怒られるかもしれないが、最初に登場した時は、あまり良い印象は持っていません。なぜなら、マリン達に向かって、かっこつけて話しているのが気に入らなかったのです。

・デビットのクインシュタイン博士への想い
 教師時代のクインシュタイン博士は、学生の心を奪うような存在だったようで。それが顕著だったのがデビットですね。私自身、デビットのようにある程度年上の女性にここまで憧れたことはありませんが、ラブレターを出したり、ネルド博士失踪後は自分がネルド以上の科学者になることを誓ったり、彼の真剣な想いが伝わってきます。挙句の果てに、クインシュタイン博士がブルーフィクサー基地に勤務してからは、パイロットの修行をしています。デビットにはクインシュタイン博士以外の女性は眼中にないのでしょうか?

・午前1時のデビット
 午前1時、デビットはカギは開いていたのにクインシュタイン博士の部屋には入りませんでした。その気持ちは何となく、わかるような気がします。たとえ、死に行く自分に対しての同情の念が混じっていたとしても、約束を守ってくれた、または自分を受け入れてくれた、その気持ちがうれしかったのでしょう。その気持ちだけで充分。これで、心置きなく、博士のために出撃していったわけですね。

・もしものデビット
 もし、午前1時、クインシュタイン博士の部屋のカギが開いていなかったら?。これを考えると、ちょっと怖い気がします。なぜなら、博士に受け入れてもらえなかったショックで、フィクサー1を乗りこなしきれなくなるのではと思ったからです。

・マリンとデビット
 二人とも科学者出身ですよね。それなのに、パイロットとしての腕前は天下一品。なぜ?

・クインシュタイン博士
 恋人であったネルド博士に続いて、教え子であって将来を非常に有望視していたデビットにまで死なれてしまったクインシュタイン博士。いつも冷静沈着な彼女も、このような局面では動揺します。ロボットアニメ史上でも、類を見ない程、多岐にわたって、その優秀さを見せてきたクインシュタイン博士もやっぱり人の子なんだなあと思いました。
 ところで、彼女が午前1時に部屋のカギを開けていたのは、死に行くデビットの最後の望みをかなえてあげようとしたのでしょうか?それとも、本当にデビットの愛を受け入れたのでしょうか?私は前者と解釈しましたが、皆さんはどうでしょうか?

・飲酒運転
 デビットがフィクサー1で出撃する直前、オリバーと雷太は酒を飲んでましたね。ジェミーは操縦しないからいいかもしれないが、オリバーと雷太は完全に飲酒運転ですね。それでも、マリンとともに立派に任務を果たしました。もしかしたら、クインシュタイン博士あたりが酔い覚ましの妙薬を開発していたのかもしれません。

・アルデバロン
 木星の衛星であるガニメドを亜空間を経由して太陽と地球の間に転送する技術もすごいと思うが、どうやって、地球に陽射しが当たらないように軌道にのせたんでしょうか?。また、こんな科学力を持っているんだったら、とっくの昔にこの作戦を実行していれば、かなり有利に戦いを進められたのでは(多くの兵士の犠牲はいったい・・・)。でも、地球人が寒さと飢えで死に絶えたとしても、その後の地球は住み心地はいいのだろうか?


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