オーストラリア現地報告
第2日 3/17(木) メルボルン到着
LAST UPDATE  2005-03-31

 「星空がきれいだったよ」
 と生徒が俺に教えてくれたけど、よく眠れなかったようだ。僕も時々目が覚めて伸びなんかしていたが、どうも寝づらかった。いや、寝る時間なんてほとんと無かったのだ。

 関西空港を発ったのが16日の午後8時38分。すぐに寝付けるわけもなく、生徒たちもすぐに寝るわけもなく、「Welcome Ceremony」のスピーチ原稿を書き終えたのが午後11時すぎ。早朝の乗り換えだから少しは寝ておこうと思ったのだが、先の生徒の声で目覚め、そのうち軽い朝食。それが午前3時30分。日本時間でいえば
午前2時30分なのだから、眠いはずだ。そのうちスクリーンに映りだした「GAGS」というお笑いいたずらフィルムについつい笑ってしまう。オーストラリア北東部ケアンズへは予定より10分早い午前4時35分着。日本とケアンズととの時差は1時間だから、日本時間の午前3時35分。眠くて暑い。外は24度とのことだ。ケアンズは熱帯雨林に位置しするのだから、いくらエアコンが効いているからといって、春先の日本から約6時間35分で訪れた身にはやはり暑かった。

 ケアンズは、Great Barrier Reefへの玄関口で多くの観光客も来るはずなのだが、夜明け前の空港には人影は少ない。2時間あまり空港で過ごすが、ここで買った「1000 Questions & Answers about Australia」(As$12.95)はスーツケースを爆発寸前にまでさせた数々の本の第1冊目であった。おっと関西空港で「英語訳つき おりがみ」(山口真著、池田書店、1155円)を買ったのだが、折り方が英語でも説明されているというのが、オーストラリア人には好評で、姉妹校に寄贈してきたけどね。空港のカフェでくつろぐうち、夜も白み、6時55分発のシドニー行きに乗り換え。窓から見えるケアンズの海岸がくっきりと美しい。

 オーストラリアの時制はちょっとややこしく、地域によって時刻が違う上、シドニーやメルボルンはちょうどサマータイムの季節。ケアンズは日本より1時間早く、シドニーやメルボルンはケアンズよりさらに1時間早い。しかも、僕たちの滞在中にサマータイムが終わるとあって、帰りのシドニー空港では、まだサマータイムのままの時計があったりして、旅行者にとっては混乱のもとであった。しかし、滞在中は、夕食前後の時間が結構長く、ゆったりとすごすことができるので、家族の団らんも自然と長くなる。おかげで、夕食後もたっぷりといろんな話をすることができたのだが、結局寝る時間は遅いままで、朝だけ早くなるということになりがちだったことが、僕の睡眠不足に追い打ちをかけたのかもしれない。

 シドニーには午前10時40分につく予定だが、時差の関係で実際は3時間弱のフライト。英字新聞「The Australian」を広げて眺めていたら、後ろの席のおじさんに、スクリーンが見えないのでもう少し下げてくれ、と英語で頼まれた。こういう時に「Sorry」以外に気の利いたせりふが言えたらなあと思ったのだが、結局2週間でどれほどの英語力がついたかというと、正直悲しい僕である。このページの文章は、最初の1節をのぞいて帰途の機上で書いているのだから、リアルタイムの実感である。まあ、よく知った人には適当なジョークを飛ばすぐらいのことはできるようになったから、そのおじさんが知り合いなら、適当なことを言って 笑わせようとするだろうけどね。

 で、その英字新聞の天気予報欄に「UV」の項目を発見。もちろん、Ultra Violetのことだが、その日のメルボルンは10段階の9。予想に反して、現地の人には気にしている様子もなく、Tシャツとランニングでジョギングしていたりする。姉妹校の教員によれは、生徒たちに帽子をかぶるように言わねばならなくなってきたのだが、中高生は帽子なんかいやがるのだという。化粧品の有害性やスピード違反の危険性を説いても「暖簾(のれん)に腕押し」「糠(ぬか)に釘」というのと同じ話だね。

 シドニーで入国手続きをすませるが、とても面倒だ
った。一度荷物を受け取り、空港内を移動しなければならない。剣道部員の生徒が、オーストラリアでも毎日素振りしようと木刀を持ってきていたのだが、この荷物がまたなかなか見つからなかったり、もう一人の引率教員がセーフティチェックにひっかかったり、化粧用のはさみやビューラーなんかをスーツケースに入れ直す生徒がいたりで、なかなかスムーズにいかない。ちなみに、帰りは同じシドニー空港で僕がセーフティーチェックにひっかかり、相当入念に調べられることになるんだけれどね。それに、現地の人は今日は涼しいと言っていたけど、雨のシドニーは蒸し暑く、睡眠不足と旅の疲れで少々まいりそう。でもまだ、これからメルボルンへ飛び、姉妹校までバスで行き、そこでホストファミリーの迎えの車に乗り換えるという、長い長い行程が待っている。

 ところで僕の手荷物はちょいと多い。記録を残したり、メールやサイト管理が担当なので、デジカメ2台にビデオカメラ1台。それにノートパソコン(VAIOのC1機だから小さいけど)も手元にある。気管支炎が治りきっていないので、薬もあるし、本も数冊。これで、電子辞書ではなく数冊の厚い辞書を持参していたのなら、大変な事態になるところであった。シドニーかメルボルンは国内便だから小さい飛行機かと思ったら、国際線と同じジャンボ機。でも、時間がさほどないので、PCは開かず、ケアンズで買った英語の本を電子辞書片手に読書。

 メルボルンは晴れ。姉妹校の男女2人の教員が出迎えに来てくれており、挨拶。マイケル先生はランニングも好きだとのことで、是非一緒に走ろうとその時に話したのだが、結局一緒にジョギングする余裕は無かった。アマンダ先生は日本語が上手。2週間ものあいだ、とてもお世話になることになった先生方である。マイケル先生が運転する24人乗りマイクロバスに移動し、牽引しているコンテナにスーツケースを積み込むが、駐車場にはやたらと日本車が多い。約1時間後に乗ることになる、僕のホストファミリー宅の車も三菱車であった。トヨタ・ホンダ・三菱・日産はもちろん、スバルも多い。日野も見かける。トヨタのメルボルン工場もあるそうだ。

 メルボルン郊外の果てしなく広がる美しい緑や、時折見かける牛や羊に生徒たちは大騒ぎ。この2週間で僕も随分と車を走らせてもらったが、メルボルンのコンパクトで快適なシティと、延々と続く郊外の緑には、最後まで感心しっぱなしであった。「入植」という歴史が絡んではいるのだが、この美しい快適さは、本気で移住を考えさせる魅力にあふれている。姉妹校に着いたら、すでにホストファミリーたちが待ってくれている。生徒10人ともう一人の教員はそれぞれのホストシスターを紹介され、それぞれの車に乗り込んですぐに出発。俺以外の11人宅にはすべてこの学校の女子高校生がいて、彼女たちと一緒に通学することになるのだ。僕だけは、この学校の教員Erickさん宅にステイし、その教員と一緒に出勤する。

 Erickさんは50代の陽気で優しいイギリス系移民で、工芸やコンピュータの先生。ピアノも教えていたことがあるという、器用な人なのだが、ライオンズクラブの活動家でもあり、とにかく多忙な人である。常にジョークも忘れない。この人の車に2週間でちょうど約1000キロほど乗っただろう。同僚のPennyさんを途中まで乗せ、郵便局の私書箱にも立ち寄ってGittins家へ。メルボルンのシティに近い美しい住宅地のとても可愛いお家である。別の学校の事務職員をしているJanさんが、キッチンで迎えてくれる。穏やかな笑顔で常に落ち着いた雰囲気を崩さない安心感あふれる女性だ。そして、犬が2匹・猫が2匹。犬のハナとジェスは姉妹で、いっつも陽気に寄ってくる。まだ若いメス猫ミリーもよく寄ってくるが、じいさん猫マーシュは落ち着いて構えている。早速、僕の部屋を案内してくれる。

 すぐにキッチンに戻り、ANZAKクッキーとコーヒーをいただく。Gittins家でのコーヒーも何杯飲んだことだろう。ErickさんとJanさんに僕からの土産を渡し、解説書類もなんとか英訳。しばらくキッチンで話した後、僕の部屋へ。ベッドルームにはトイレやシャワーもあり、もうひとつあてがってもらった部屋ではパソコンも使えるというとても快適な環境。ただし、メールやサイトのアップ、掲示板への日本語入力は持参したPCを使わねばならない。請求書が後日僕の元にくるように設定してきたので、電話ジャックを貸してもらえれば、ステイ先への料金支払いの気兼ねなくメール送受信やサイト管理ができるのだ。Erickさんが、電話ジャックやUSB接続の機器をセッティングしてくれているところに、この2月に大学生になったばかりだというClaireさんが帰宅。愛らしい笑顔の明るい娘さんだ。お喋りのスピードも速いけど、キーボード入力も恐るべきスピードだ。


©Alex McDermott

 キッチンに戻って、Claireさんにも僕からのお土産。メルボルンで行きたいところは無いかという話になり、パンフレットをあれこれ見せてもらう。オーストラリアの歴史の本は何冊か読んでいたのだが、興味を引くのは多文化主義教育と、ネッドケリーやユリイカストッケード。Claireさんの上に2人の姉がいて、近所に住んでいる長女がネッドケリーに詳しいとのことで、今宵来てくれることになる。赤ワインを飲みながらディナーをいただいている時に、姉Susanさんが夫Ashleyさんと来宅。Susanさんは公務員だが長野県で6ヶ月働いたことがあったり、今度も大阪に英語の先生として出張するという。夫Ashleyさんはメルボルン最大規模の消防署の消防士。次の日曜日に見学に来てもいいよとのことで、休日の予定が一つ決まった。

 実は休日は6日もある。最初の土日と、次のイースター休み4日間である。生徒からの緊急の電話があれば対応しなければないが、基本的には自由に過ごしていいことになっている。生徒たちにとっては、ホストファミリーと終日過ごす、英語漬けの時間となる。着いたばかりのこの晩に、イースターフライデー以外の僕の予定はすべて決まったのであった。

 さすがに初日は持参PCのネット接続に手間取って午前3時。長い長い1日がようやく終わった。翌日は朝からWelcome Ceremonyだ。
【これを書き終えた今、おそらくカロリン諸島上空だろう】

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