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クイズ【87】
孔子の言葉
LAST UPDATE 2003-07-29

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【87】出題日時 2003年 7月 8日(火)18時55分34秒
 「不惑」という言葉は孔子の言葉に由来します。では孔子の言葉でないのはどれでしょうか?
A 怪力乱神を語らず  B 少年老い易く学成り難し
C 汝自身を知れ     D 学びて思わざれば則ちくらし

正解者・・・・ケムンパスさん →4ptゲット
(得点表)

解説と解答


 どうもお騒がせいたしました。実は、正解は二つあったんです。kurochanは昔、「少年老い易く学成り難し」は孔子の言葉だと思っていたことがあるので、それをクイズに使うことにしました。でもそれだけだと、答えはすぐに分かってしまうと思ったので、孔子以外の人物の言葉をもう一つ加えることにしました。

 孔子はおなじみ、中国、春秋時代の思想家ですね。諸子百家の代表でもあります。周の時代の後半を東周または春秋戦国時代と呼んでいますが、殷を倒した周は、中国各地に諸侯を派遣しました。しかし、時代が下るにつれて覇権争いが激しくなります。諸侯達の「サバイバルゲーム」の最終勝者は秦の始皇帝ですが、映画「始皇帝」などでは、そうした覇権争いの最終段階も描かれており、如何に勝ち残るかが時代の大きなテーマだったことがよく分かります。占いが発達するのも、戦乱の世であるが故ですね。しかし一方で、人々が互いに不信感を抱きあう戦乱の世自体を克服するための思想もまた求められたのです。孔子はそういう時代に、信じ合える人間関係のあり方を追求し、多くの言葉を残した人物だと言えます。【※時の話題vol.3:「克己」という言葉を贈ろう
】。ちなみに諸子百家の「子」は「先生」、「家」は「グループ」を意味し、たくさんの先生がたくさんの学派を形成したということです。孔子というのも「孔先生」という意味ですね。孔子は、身長210cmだったとも伝えられています。

 さて、彼の言葉は弟子達が「論語」にまとめていますが、大きく分けると、「仁」と「礼」について説いたといわれています。これをここで解説するのは、長くなりそうなのでやめますが、一言で言えば、「信じ合える人間関係のために必要な、各自の内面と人間相互の約束事について、具体的・合理的に説いた」と言うことができると思います。

 最初出題した日々雑感373では、選択肢に「E 温故知新」が入っていましたが、クイズのページに転載する時に抜け落ちてしまいました。ごめんないさい。その「温故知新」とは言うならば、「古典を読めば、人々が信じ合い平和だった頃のことがよく分かり、現代の私たちが忘れてしまったことに気づいて新しい生き方を発見することができる」ということですね。これは、彼自身が特別才能があり徳がある人物だから真理を得ることができた、というのではなく、単に読書を通じて真理に気づいたに過ぎず、誰でも実践できることなんだよという事も示していると言われます。そして、せっかくの内面(【仁】)も、約束事(言葉などの【礼[形]】)を共有していないと通じ合わせることができないので、分かり合うための「共通の記号」を身につけるためにも学ぶことが大切であることを説いてもいるんですね。この言葉を座右の銘にしている人が多いのもうなづけます。

 「怪力乱神を語らず」とは、「怪力を持つ神が乱暴を働いていることについては語らない」などと解釈してはいけません。「怪」は「お化け」、「力」は「超能力」、「乱」は「不合理」、「神」は「人間を超越した存在」を意味しています。つまり、孔子の徹底した現実主義・合理主義を示す言葉です。だからこそ、共通の記号(礼)をきちんと学ぶ必要もあるということです。ただ、儒学が儒教という宗教として広まる後世には、神秘的な要素が含まれるようになります。

 「学びて思わざれば則ち罔[くら]し、思いて学ばざれば則ち殆[あや]うし」というのも孔子の言葉です。学ぶことを強調した孔子ですが、決して知識のための知識を説いたわけではありません。学んだことを、自分の考えとしてまとめていかなければ、どう生きていっていいか見えてこないし、また、学ぶことをせずに、やみくもに夢や希望を追い求めても、その実現はあやういことを示しています。kurochanの好きな言葉です。

 まぎらわしいのが「少年老い易く学成り難し」ですが、これは宋の思想家である朱子の言葉です。また「汝自身を知れ」とは古代ギリシアの思想家ソクラテスの言葉です。後者は「無知の知(無知の自覚)」を説いた言葉ですが、実はソクラテス以前から神殿に刻まれてアテネに伝えられてきた言葉で、当初は、食糧事情の悪いアテネでは分け前を心得よ、という意味だったのだろうと思われます。ということで、正解は「B・C」でした。