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ついんLEAVES

第六回 3









 どざ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−っっっ!!!


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 びゅご−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−っっっ!!!


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざ!!!


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 ごお−−−−−−−−−−−−−−−−−−−っっっ!!!


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 駅のアルミサッシがガタガタと鳴り、ガラスがきしむ。


 窓の向こうは横殴りの暴風。



 俺達の町から電車に揺られること6時間余り・・・・・



 駅のちっぽけな改札を抜けると、そこは台風直下だった。



やり過ぎた(^^;








「い゙や〜。よぉ来れたナ、お前ら」


「いつもよか2時間も余計にかかりましたよ・・・・」


 安全確認の信号待ちで、いったい何度停車したことか。


「あん電車ァ風に弱いで、2時間遅れなんど早ぇほだ」


 ハンドルを握る次郎伯父さんが俺に視線を走らせ、すぐ前を向いた。

 マイクロバスのラジオがノイズ混じりの台風情報をがなりたてる。

 ワイパーを最速で動かしてるのに、かなり視界が悪い。

 おぼろげに見える道端の木は不自然にしなっていて、車外の強風が容易に想像できた。



 保内(ほうち)次郎・・・・次郎伯父さんは、美乃里さんのお兄さん。

 物故した長兄、大助さんの跡を継ぎ、夏限定で海辺の民宿を営み、他に漁協や商工会なんかの仕事もしてる。

 今日から三日間、俺達・・・・つばさ、フー子、九重さん、俺・・・・は、伯父さんの所で厄介になる予定。



「嬢ちゃん達、雨ァおーたいず(だいたい)拭えたかい」


「「「はーい」」」


 タオルを手にした女子陣が声を揃える。

 雨に身をさらしたのは、駅舎から車に入る数歩だけ、なのにみんなビショ濡れだ。


「台風に当たったな運の悪いがァ、宿は開店休業だで、ハァ、ゆーら(のんびり)してきな」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「ん、どげんしたっと?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・伯父さん」


「おぅ」


「ここ、日本のドコですか」


 なんか全国規模で方言が入り混じってるんだけど。


「そら、作者の地元がうつっちゃならんでにちゃぐっとるんだぎゃあ(わからないようにゴマカしてるんだ)


「に、にちゃぐる?」


「一部の人にはモロバレだねー♪」


「ンだ」


 フー子と伯父さんがけらけら笑った。

 それを見て九重さん、ちょっとびっくりしてる。


「フー子ちゃん、馴染んでるのね・・・・」


「毎年来てるし、あの性格だからな」


 "あの性格"を強調すると、九重さんはくすりとした。


「日枝、何か言った?」


「別にー」


「あー! お兄ちゃん、伯父ちゃん家(ち)が見えたよっ」


 後席のつばさが俺の肩に顎を乗せる。


「一年ぶりだねー」


「ああ」


 次郎伯父さんの家でもある「民宿 保内」。

 木造二階建て、ごく普通の民宿だ。

 台風に備えて雨戸を全部閉めきり、押さえの板まで打ち付けてあるものの、それは去年と変わらない姿でそこにあった。


「さぁ着いた」


 川のようになった車道から、一段高い敷地にバスを乗り入れる。

 次郎伯父さんは器用にハンドルをきり、民宿の軒先にぴたりとドアを寄せた。


 と、吹き荒れる風の中でエンジン音をどう聞き分けたのか、玄関ががらりと開く。

 出てきた人物は、長い髪を風に遊ばせながら深々と頭を下げた。


「遠(とほ)の国より、よくぞいらせられました」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 一同、唖然。


 彼女は、俺達の反応を気にする風もなく、艶やかに微笑んでみせる。


「無事の御着き、祝着至極にござります♪」


「「「さくらまる!!??」」」






 



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