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どざ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−っっっ!!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
びゅご−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−っっっ!!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざ!!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ごお−−−−−−−−−−−−−−−−−−−っっっ!!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
駅のアルミサッシがガタガタと鳴り、ガラスがきしむ。
窓の向こうは横殴りの暴風。
俺達の町から電車に揺られること6時間余り・・・・・
駅のちっぽけな改札を抜けると、そこは台風直下だった。
「い゙や〜。よぉ来れたナ、お前ら」
「いつもよか2時間も余計にかかりましたよ・・・・」
安全確認の信号待ちで、いったい何度停車したことか。
「あん電車ァ風に弱いで、2時間遅れなんど早ぇほだ」
ハンドルを握る次郎伯父さんが俺に視線を走らせ、すぐ前を向いた。
マイクロバスのラジオがノイズ混じりの台風情報をがなりたてる。
ワイパーを最速で動かしてるのに、かなり視界が悪い。
おぼろげに見える道端の木は不自然にしなっていて、車外の強風が容易に想像できた。
保内(ほうち)次郎・・・・次郎伯父さんは、美乃里さんのお兄さん。
物故した長兄、大助さんの跡を継ぎ、夏限定で海辺の民宿を営み、他に漁協や商工会なんかの仕事もしてる。
今日から三日間、俺達・・・・つばさ、フー子、九重さん、俺・・・・は、伯父さんの所で厄介になる予定。
「嬢ちゃん達、雨ァおーたいず(だいたい)拭えたかい」
「「「はーい」」」
タオルを手にした女子陣が声を揃える。
雨に身をさらしたのは、駅舎から車に入る数歩だけ、なのにみんなビショ濡れだ。
「台風に当たったな運の悪いがァ、宿は開店休業だで、ハァ、ゆーら(のんびり)してきな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ん、どげんしたっと?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・伯父さん」
「おぅ」
「ここ、日本のドコですか」
なんか全国規模で方言が入り混じってるんだけど。
「そら、作者の地元がうつっちゃならんでにちゃぐっとるんだぎゃあ(わからないようにゴマカしてるんだ)」
「に、にちゃぐる?」
「一部の人にはモロバレだねー♪」
「ンだ」
フー子と伯父さんがけらけら笑った。
それを見て九重さん、ちょっとびっくりしてる。
「フー子ちゃん、馴染んでるのね・・・・」
「毎年来てるし、あの性格だからな」
"あの性格"を強調すると、九重さんはくすりとした。
「日枝、何か言った?」
「別にー」
「あー! お兄ちゃん、伯父ちゃん家(ち)が見えたよっ」
後席のつばさが俺の肩に顎を乗せる。
「一年ぶりだねー」
「ああ」
次郎伯父さんの家でもある「民宿 保内」。
木造二階建て、ごく普通の民宿だ。
台風に備えて雨戸を全部閉めきり、押さえの板まで打ち付けてあるものの、それは去年と変わらない姿でそこにあった。
「さぁ着いた」
川のようになった車道から、一段高い敷地にバスを乗り入れる。
次郎伯父さんは器用にハンドルをきり、民宿の軒先にぴたりとドアを寄せた。
と、吹き荒れる風の中でエンジン音をどう聞き分けたのか、玄関ががらりと開く。
出てきた人物は、長い髪を風に遊ばせながら深々と頭を下げた。
「遠(とほ)の国より、よくぞいらせられました」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
一同、唖然。
彼女は、俺達の反応を気にする風もなく、艶やかに微笑んでみせる。
「無事の御着き、祝着至極にござります♪」
「「「さくらまる!!??」」」