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「ただいまー」
玄関を閉じてしっかり鍵をかけると、俺はその場にへたりこんだ。
今日はヤバかった・・・・・・・・・・・・・
いつもの雨どい直滑降でスタートした逃走劇だけど、だんだん連中も知恵がついてきて、一筋縄じゃいかなくなってる。
今日も二度ほど、かなりきわどい展開になった。
まぁ、連中には遊びでも俺は捕まったら袋叩きだから、気合いの差でクリアしたけど。
「お兄ちゃん、お帰りなさ〜い!
夕ゴハンは石焼ビビンバと冷たいキムチスープだよ〜♪」
キッチンからつばさが出てきた。
水色の上下揃いにピーチピンクのエプロンをかけてる。美乃里さんを手伝ってるんだろう。
つばさは俺の横にとことこ来ると、うな垂れてる顔をのぞきこんだ。
「どしたの?」
「いや・・・・・・・・・・・・ちょっと、疲れた。
(嫉妬に狂った野獣どもと)追いかけっこして」
「え〜っ、つばさを仲間ハズレにして鬼ゴッコするなんて、ずる〜い!
こんど遊ぶ時はつばさも混ぜてね!」
「飢えた狼の口に飛び込む気かよ」
「おーかみ?」
「いや、何でもない・・・・・・
機会があったら混ぜてやる」
「きっとだよっ」
どう考えても囮というか、捨て駒にしかならないけどな。
機会が来ないことを祈ろう。
「さくらまるは?」
つばさの表情が曇った。
「やっぱり、調子悪いのか」
「うん・・・・・・・・・・・・・・・
美乃里ママも心配してる」
「そっか・・・・・今はなにしてる?」
「二階の奥の部屋で、お片付け」
つばさは眉をひそめて二階を見上げた。
「お兄ちゃん・・・・・・・・」
「わかってる。休むように言っとく」
これでも一応"ごしゅじんさま"だからな。
「・・・・・ウン」
キッチンに戻るつばさを見送り、俺も自室に向かった。
やれやれ・・・・・・・・
神様なんて供物もらって遊び呆けてばかりと思ってたけど、さくらまるはワーカホリックだ。
カバンを小脇に抱えて階段に足をかける。
そして何の気なしに顔を上げ−
俺は硬直した。
一番上。
艶のある深緑が階段を流れていた。
ぴくりとも動かないソレは・・・・・・・・
「さくらまる!!!」