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ついんLEAVES

第五回 3







「お前が悪い!」(ぽかっ)


「ひゃふっ!」


 つばさが頭を押さえてうずくまった。


「うぅ〜、お兄ちゃんヒドイよぉ・・・」


 ほとんど力いれてないんだが。


「俺の痛みはこんなモンじゃない」


 正確には、これから痛めつけられるんだけどさ。


 男子部の連中が冷静に俺の説明を聞くはずないから、放課後リンチ確定なんだ。

 たとえ聞いても"妄想変換"されちゃうだろうから、やっぱりリンチ確定。


「はい、痛くない、痛くないですよ〜」


「んぁ、さくらちゃ〜ん・・・・」


 涙目のつばさを、さくらまるが優しく抱きしめた。ちらっと俺に向けたさくらまるの視線が、少し非難の色を帯びている。

 俺は今日何度目かの溜息を吐いた。




 こんな騒ぎになるのが目に見えたから、さくらまるに学校訪問を禁止していたのに・・・・

 今日それが破られたのは、弁当を忘れたつばさのせい。

 用事があって来られない美乃里さんに頼まれて、弁当を持って来たとか。


「素直に女子部へ持ってけよ・・・・」


「申し訳ござりませぬ。ごしゅじんさまの『気』に誘われ、ついそちらに・・・・」


 俺は誘蛾灯か?


「その気まぐれのおかげで、こっちはヒッジョ〜に面倒な事になってんだが」


 気分は絞首台を前にした死刑囚。


「はぅ〜〜〜。まことに申し訳ござりませぬ・・・・・・・

 かくなる上は死んでお詫びを−」


「できもしないコト言うな」


 仮にも"神"が死ぬかっつの。


「あ〜、こんな話してる場合じゃなかった。

 つばさは弁当もって教室に戻れ。もうチャイム鳴るぞ」


「はあ〜い・・・・」


 まだ頭を押さえながら、つばさがしぶしぶ頷く。


「さくらまるも、とっととウチ帰れ」


 これ以上ここにいて、オレの抹殺理由を増やされちゃたまらん。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「さくらまる」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 こいつ、普段にも増してぽ〜っとしてるな。


「さくらまる!」


「は、はいっ」


 ビクリとして、慌てて低頭するさくらまる。


「失礼いたしました。ごしゅじんさま、御台所(みだいどころ)様・・・・・・」


 ご丁寧に、つばさと俺と別々に頭を下げて、さくらまるは正門に向かった。

 真っ赤なリボンでまとめた髪を、頼りなげに揺らしながら。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「ねぇ、お兄ちゃん・・・・・・・・・・・・・・・・」


「ああ・・・・・・・・・・・

 さくらまる、いつもと違うな・・・・・・」


「ウン。色が薄いかんじ」


 つばさの言葉はちょっと変だけど、言いたいことはわかる。


 「色が薄い」・・・・・


 まるで、ふいに消えてしまいそうな。


 さくらまるの後姿は、そんな儚(はかな)げな雰囲気を醸していた。




 キーンコーン!


「やべっ、授業はじまっちまった。つばさ、後でな!」


「は、はぁい!」


 チャイムに追われるように、俺達は別々の方向に向けて駆け出した。





 ・・・・そして教室に戻った俺は、問答無用で廊下に立たされることになった。


 なんで???


 



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