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ついんLEAVES

第三回 3





 みんなの様子が変だ。



 朝から、チラチラこっちを見る奴が多い。

 といっても俺が注目されてるわけじゃない。

 俺の斜め後ろを見てる。



 気になる・・・・



 何度か後ろに振り返ったけど、別に変わった物はなかった。

 で、背後を見ると、後席の本多が俺のすぐ後ろに視線を注いでたりする。



 むちゃくちゃ気になる。



 いちおう休み時間に便所へ行って、鏡で背中をチェックしてみた。

 別におかしくない。

 古典的な張り紙のイタズラでもなさそうだ。



 入学式のあとにでも、斗坂に訊いてみるか・・・・





 放課後。



 隣席の斗坂に声をかけようとしたら、向こうから訊いてきた。



「あのさ、日枝」



「ん」


「日枝、悩みとか、ない?」


「何だよ急に」


 悩みっていうか、みんなの視線は気になってるけどさ。


「僕じゃ役に立たないかもしんないけど、吐き出せば少しはラクになるかもしれないよ」


「何を吐けってんだ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 どうして沈黙する。


「斗坂、自分で訊いといて黙るな」



「え・・・・あ、その・・・・・・・あんまり気にしないでね?

 冗談半分で、聞いてほしいんだけどさ」


「・・・・ああ」


 斗坂は童顔を伏せたまま囁いた。


「まさか・・・・・・・・・・・・とか、してないよね」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あン?


「聞こえなかった」


「う・・・・・・・・んーと、さ。


 日枝、その・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 女の子を殺して埋めたりしてない?」


「なんじゃそりゃあぁぁぁ−−っっ!!」


 俺の叫び声に教室がどよめいた。


「おーっ! 斗坂よく聞いた!」


「勇気あんなぁ!」


「実は俺もおんなじコト考えてた」


「え、君も?」


「なんだ、みんな考えること一緒じゃん」


「何せ日枝だからなー」


「アホタレ! ンなことするワケねーだろ!」


 椅子を蹴立てると、柔道部の木月(きづき)が太い指を俺に向けた。


「だったら、後ろの女の子は誰だ」


「うしろの子?」


 木月の指先を辿って振り向く。


 誰もいない。

 ていうか、女の子なんているはずない。ここは男子校舎だ。


「木月、幻覚でも見てんじゃないのか」


 でなかったら妄想とか。


「そうか。お前にゃ見えないか・・・・・・・・・・・・」


 木月は気分を害した風もなく、逆に俺を哀れむような顔になった。


「でも珍しいよな。犯人に見えない怨霊って」


「フツー逆だもんな」


「そーそー」


 怨霊だぁ?


『そんなぁ。わたくしを御霊(ごりょう)あつかひなど、

 めしひたるにもほどがござりますぅ』


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「いや、アレだろ。じわじわとプレッシャーかけようっていうんじゃないか」


「何それ」


「だからさ、日枝の周りに犯行を訴えることで、もっと確実に追い詰めようとしてるんだよ」


「あ、なるほど」


「そんな回りくどい方法に訴えるなんて、よっぽど恨みが深いんだなぁ」


 あのなあ。


「いいかげんにしろ! 好き勝手いいやがって!」


「・・・な?」


「ああ。効いてる効いてる」


「日枝・・・・・・きみに何があっても、僕らトモダチだからさ・・・」


「おい、斗坂。

 こんなヒトゴロシに気ィ使うなんて、お前ホントにお人よしだなぁ」


「ヒトゴロシ・・・・・・・・・・・」


 何を言っても無駄のようだった。


『うぅ〜。ごしゅじんさま、申し訳ござりませぬ。

 わたくしが力およばぬばかりに・・・・・・・』


 お前は黙ってろ。


『はうぅぅ〜』






 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。






 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ。






 「お前」って、誰だ・・・・・・?










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