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みんなの様子が変だ。
朝から、チラチラこっちを見る奴が多い。
といっても俺が注目されてるわけじゃない。
俺の斜め後ろを見てる。
気になる・・・・
何度か後ろに振り返ったけど、別に変わった物はなかった。
で、背後を見ると、後席の本多が俺のすぐ後ろに視線を注いでたりする。
むちゃくちゃ気になる。
いちおう休み時間に便所へ行って、鏡で背中をチェックしてみた。
別におかしくない。
古典的な張り紙のイタズラでもなさそうだ。
入学式のあとにでも、斗坂に訊いてみるか・・・・
放課後。
隣席の斗坂に声をかけようとしたら、向こうから訊いてきた。
「あのさ、日枝」
「ん」
「日枝、悩みとか、ない?」
「何だよ急に」
悩みっていうか、みんなの視線は気になってるけどさ。
「僕じゃ役に立たないかもしんないけど、吐き出せば少しはラクになるかもしれないよ」
「何を吐けってんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
どうして沈黙する。
「斗坂、自分で訊いといて黙るな」
「え・・・・あ、その・・・・・・・あんまり気にしないでね?
冗談半分で、聞いてほしいんだけどさ」
「・・・・ああ」
斗坂は童顔を伏せたまま囁いた。
「まさか・・・・・・・・・・・・とか、してないよね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あン?
「聞こえなかった」
「う・・・・・・・・んーと、さ。
日枝、その・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女の子を殺して埋めたりしてない?」
「なんじゃそりゃあぁぁぁ−−っっ!!」
俺の叫び声に教室がどよめいた。
「おーっ! 斗坂よく聞いた!」
「勇気あんなぁ!」
「実は俺もおんなじコト考えてた」
「え、君も?」
「なんだ、みんな考えること一緒じゃん」
「何せ日枝だからなー」
「アホタレ! ンなことするワケねーだろ!」
椅子を蹴立てると、柔道部の木月(きづき)が太い指を俺に向けた。
「だったら、後ろの女の子は誰だ」
「うしろの子?」
木月の指先を辿って振り向く。
誰もいない。
ていうか、女の子なんているはずない。ここは男子校舎だ。
「木月、幻覚でも見てんじゃないのか」
でなかったら妄想とか。
「そうか。お前にゃ見えないか・・・・・・・・・・・・」
木月は気分を害した風もなく、逆に俺を哀れむような顔になった。
「でも珍しいよな。犯人に見えない怨霊って」
「フツー逆だもんな」
「そーそー」
怨霊だぁ?
『そんなぁ。わたくしを御霊(ごりょう)あつかひなど、
めしひたるにもほどがござりますぅ』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「いや、アレだろ。じわじわとプレッシャーかけようっていうんじゃないか」
「何それ」
「だからさ、日枝の周りに犯行を訴えることで、もっと確実に追い詰めようとしてるんだよ」
「あ、なるほど」
「そんな回りくどい方法に訴えるなんて、よっぽど恨みが深いんだなぁ」
あのなあ。
「いいかげんにしろ! 好き勝手いいやがって!」
「・・・な?」
「ああ。効いてる効いてる」
「日枝・・・・・・きみに何があっても、僕らトモダチだからさ・・・」
「おい、斗坂。
こんなヒトゴロシに気ィ使うなんて、お前ホントにお人よしだなぁ」
「ヒトゴロシ・・・・・・・・・・・」
何を言っても無駄のようだった。
『うぅ〜。ごしゅじんさま、申し訳ござりませぬ。
わたくしが力およばぬばかりに・・・・・・・』
お前は黙ってろ。
『はうぅぅ〜』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ。
「お前」って、誰だ・・・・・・?