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ついんLEAVES

第一回 5





 いつものように、つばさのペースに合わせて歩く。

「・・・ぷっ。くすくす・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・(怒)」

 まだ笑ってやがる。

 フー子の笑いが収まらないのがシャクでしょうがないんだけど、こいつがツボにはまったら放っとくしかない。



「ほらほら、今日はこんなにたくさんメモったんだよー」

 あからさまに機嫌の悪い俺に、つばさがビーズのストラップ付きの携帯を見せる。それをフー子がかっさらい、感嘆の声をあげた。

「うっわ〜! 日枝、これ見てみ」

「俺に見せようとしたもんだろが」

 横から覗くと、電話帳に250件近い番号が登録されている。

「うんうん、つばさ愛されてるね〜。い〜ね〜」

「えっへへー」

「つばさ・・・・・頼むから喜ばんでくれ、俺が悲しくなる」

「?」

「日枝は黙ってなさい。ふ〜ん、上田にえっちゃんに奥野・・・ってこれ中等部長の名前じゃん!」

 上沢先生と森丸先生。いいんですか、勝手に。

「上沢、見堂、さっちん、シノぴー・・・シノぴーって、前に言ってた下着雑巾の子?」

「そー。お裁縫うまくて古いパンツで雑巾つくっちゃうの」

 何者だそいつは。

「たっちん、根室、長谷、フーちゃん・・・はアタシね。

 本間、マミたん、みゃ〜センパイ・・・・みゃ〜センパイ?」



 誰よ、と俺に目を向けるフー子に、肩をすくめる。

 心当たりがない。



「つばさ、この『みゃ〜センパイ』って?」

「お友達だよ。たけなかみゃ〜こセンパイ」


 ひゅうぅぅぅぅぅっ!



 名前を聞いた瞬間、吹き抜ける風の温度が急激に低下した。

 いや、この悪寒は風のせいじゃない。

「た、たけなか・・・・・・・?」

 心なし、フー子の声も震えている。

「ちょっと待て、つばさ」

「なーに」

 こっちの動揺にまったく気付かず、つばさがのほほんと顔を上げた。

「お前の知ってる『たけなか』って、拳法部の人か・・・・?」

「そだよ〜。みゃ〜センパイ、中国拳法のひと」

「マジで!!??」

 

 武中美矢子(たけなか みやこ)・・・・・中国拳法部主将にして双葉学園の生ける伝説。

 「双女(双葉学園 女子部)のワルキューレ」の異名を持ち、大学クラブも含め学園最強の称号を戴くが、寡黙で近寄りがたい雰囲気の持ち主であるため、正体は神秘のベールに包まれている・・・



「つばさっ。どうしてアンタが武中先輩の電話番号知ってんの!」

「さっき、みんなと一緒に教えてくれたよ。『なにかあったら、かならず一番にわたしに』って言ってた」

 ぐはあぁっっっ!!!

 よりにもよって武中ワルキューレがお目付かいっ!

 愕然とする俺に、フー子が同情に満ちた視線をくれた。

「日枝・・・・アンタ、うかつな事できないよ」

「皆まで言うなフー子。よくわかってる・・・・つか、しねーよっ!!」

 どいつもこいつも俺をケダモノ扱いしやがって。

 ・・・いや、それどころじゃない。大丈夫なのか俺。

 てゆーかそれ以前に、なんで俺がつばさに生殺与奪の権を握られなきゃならんのだ?



 俺なんかしたか?



 俺のせいか?



 俺が悪いのか?



 頭を抱えると、つばさが訝しげに覗き込んでくる。

「お兄ちゃん、どうしたの?」

「何でもない。ちょっと、頭が痛いけどな」

「えぇーっ!? お兄ちゃん、だいじょうぶ? 病気?」

「病気じゃない・・・」

「病気じゃないのに痛いの!? ど、どうしよ? どうしよー!?」

 涙目でおたおたするつばさに、まさか「原因はお前だ」とは言えない。

 するとつばさは、フー子の手から自分の携帯をもぎ取った。

「そーだっ。みゃ〜センパイの言ってた『何かあったら』ってこーゆー時だよね。

 お兄ちゃん、待ってて! 今みゃ〜センパイを・・・」

「「やめなさい!!!」」

 俺とフー子は同時に叫んだ。








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