校長のためのコンピュータ入門(その12)

校長のコンピュータ活用術B
ワープロ入門 弐

けんしょう炎が治る!

 コンピュータによるワープロを始めたある女性(やや年輩の)にたずねた。
「やって良かったことは何ですか?」
「けんしょう炎が治りました」という。意外な返事だった。その人は、学年、学級便りや教科のプリント、試験問題などを、これまで長い間手書きで作ってきた。
 私も、実は同じような経験があった。教員の時もそうだったが、教頭になっても、いろんな文書を手書きで作成していた。メモを取ったり、原稿用紙に文章を書くのは大して苦痛にならないが、清書して印刷用の原稿を作る作業で肩こりや腕の痛みがひどかった。  教員の仕事では、子ども、保護者を対象に、印刷を目的に清書する文書を多く作る。コンピュータによる文書作成は、このような作業を行う教員の「労働の負担」を軽くする上で、非常に意味のあることだと思う。

キーボードの壁はさけられない

 コンピュータの初心者が初めに直面する大きな壁が、キーボードの操作だ。コンピュータで文書を作るようになって初めは、誰もがキーボードの操作に難儀する。キーの配列がどうなっているのか、わからないのだから当然だ。
 このための工夫がいろいろされてきている。「一太郎」というワープロソフトでは、「クリックパレット」というのがある。これはマウスで字をひろっていくものだ。文字を打つことが、まったく初めての場合や、ローマ字をまだ習ってない子どもにはとても便利なものだ。
 このほかに、「タブレット」という装置を使って手で書いた文字をコンピュータの文字に置き換えてくれるもの。まだ、大げさな装置が必要だが、活字で印刷された文章を画像で取り込んで、コンピュータの文字に換えてくれる、日本語OCRというもの。自分の声をコンピュータに認識させるものもある。
 初心者の方には申し訳ないが、まだ、キーボードをたたいて文字を打つことにかなうものは出ていない。結局は誰もが、ワープロを始めるには、キーボードで文字を打つ関門を通らなければならない。これだけは観念していただきたい。

ローマ字入力と「かな」入力

 キーボードで、日本語の文字を打つ場合2通りの方法がある。「ローマ字入力」と「かな入力」だ。どちらが良いか迷う。結局は、慣れなので、どちらでも良い、ということになる。しかし、初心者にはどちらかを勧める方が親切だ。
 ローマ字で使うアルファベットのキーは26文字、吃音や濁音もこれで全部できる。「かな」のキーは、アルファベットよりずっと多い45もある。吃音や濁音をこれで入力すると操作も少しやっかいだ。
 これから、パソコンを使っていくときにはアルファベットを使うことも多くなる。「かな」で入力する場合は、アルファベットと「かな」の両方の位置を覚えなくてはならなくなる。ここではローマ字入力をお奨めしたい。

「一太郎」と「ワード」

 今売られているコンピュータのほとんどに、ワープロソフトとして「一太郎」か「Word(ワード)」のどちらかがあらかじめ入っている。どちらを選んだらいいのだろうか?しばらく前は、1行に入れる文字の数を優先するかレイアウトを優先するか、とか、罫線の引き方などに違いがあった。
日本人には、「一太郎」がなじみが深いような気もするが、インターネットのホームページを作る機能は「ワード」の方が、使いやすいようだ。
 しかし、使い方については、ほとんど違わなくなっている。結局好みと、慣れの問題である。初心者の方には、周りに教えてくれる人がいる場合、その人の使っている方を選ぶのが良いように思う。 この2つの代表的なワープロソフトには、実にいろんな機能が付いている。文字を打つことだけだったらほとんど必要のない機能だともいえる。そのような理由から、ある程度コンピュータを使いこなす人には、もっと「軽い」ワープロソフト、あるいは、文字だけを打つ「エディター」と呼ばれるソフトに根強い人気がある。

打つことになれるには

 残念ながらまだ、コンピュータを使いこなすには、キーボードで文字を打つことを乗り越えなくてはならない。
 きちんと習うには、全部の指を有効に使う「ブラインドタッチ」を初めにマスターすることが望ましいのだろう。しかし、私は9年もパソコンをやっているが、ほとんどの文字は、右手では人差し指と中指、左手では人差し指と、たまに中指と薬指を使うだけだ。これで十分。結構打てるものだ。インターネットの文字での「チャット」、リアルタイムで文字による話し合い、でも不自由しないほど打てる速さになっている。左右の人差し指だけで打てるようになれば、それで十分にワープロができると思っていい。
 私は、キーボードで文字を打つ練習として、「日記」をつけてみた。それまで何十年も日記などには縁がなかったのである。仕事に必要な文書には、作るまでの時間が決められてる。結局、この方法は大成功。気楽に、時間を十分かけて、進歩する自分に満足しながら練習が出来たのだ。
 先ほどの女性に、「上達のコツは何ですか?」とたずねたら、
「しようとする操作が分からないとき、すぐ聞ける人が身近にいることです。」との答えが返ってきた。探してみよう。