校長のためのコンピュータ入門(その10)

校長のコンピュータ活用術@

目的がなければただの箱

 私がコンピュータにはまってしまったのは、コンピュータを使うことで、仕事が大いにはかどったからだ。役所に出す書類の作成に便利だっただけでなく、統計の処理や、シミュレーションをすることで、学校経営の課題の策定や、決断の根拠になったからだ。
 コンピュータを使わなくても、これらの仕事は出来たかもしれない。現に校長諸兄におかれては、コンピュータなど活用しなくても、大いに学校経営の実績を上げられていることだと思う。コンピュータの扱いを勉強する時間があったら、もっといろんな仕事が出来るとお考えのむきもおありだろう。 結局コンピュータを、校長になってからでも使うかどうかは、何かしようとしたときに役に立つかどうかを実感するかにかかってる。使う目的がなければ、コンピュータはただの箱である。
 そのためには、コンピュータで何ができるのかを知っておくのがいいのかもしれない。校長に、絶対に便利なものを一つ紹介しよう。

年齢換算表

 教職員の、4月1日や9月1日などの基準日での、年齢の換算にお悩みの方も多いかと思う。年齢の方は、換算表で何とかなるが、書類では、月齢まで求められることがほとんどだ。
 表で示した、換算表では、教職員の生年月日、たとえば、「S21.12.4」と入力するだけで、基準日の年齢、月齢を計算してくれる。また、下の年齢構成や、平均年齢も生年月日を入力するだけで、すべて自動的に計算するようにしてある。
 この表を作るには、表計算ソフトを使うわけだが、足し算や、引き算、割り算のようなものより少し難しい。「関数」といって、コンピュータ特有の計算式がある、これを知らないと出来ない。
 このコンピュータの関数を知ると実に便利だ。そんなに難しいことではない、本校の職員に成績一覧表を作るときなどにやり方を教えてみたが、30分もあれば、簡単に理解できるようなことだ。
 また、校長が出来なくても、使う目的を注文すれば、すぐに、作ってくれる職員は身近にいるはずである。
 このような「校長必携,学校経営データー集」に需要が高まれば、「週刊教育PRO」から発行していただけるかもしれない。そうすれば全国の校長が年齢換算で悩むことはなくなる。

コンピュータ上達のコツ

 コンピュータ上達のコツをよくたずねられる。たずねられる方によって使い分けることがある。正直に言う場合は、「学ぶことに謙虚になることです」と答えている。ひとりよがりで、尊大な方には、「やってみなければわかりません」と答えることにしている。
 区の教育センターで初心者対象のコンピュータ研修を5年ほど前からやらせていただいている。初めてコンピュータをさわる先生方、校長、教頭対象の研修を担当している。
 心身障害学級の生徒の授業もやらせてもらった。心身障害学級の生徒のときはこちらが感動した。目を輝かせてやってる。休み時間になってもやめようとしない。一つの手順をマスターすると、次々に自分なりの手順を発見していく子どももいる。マウスの操作も、知らないうちに身につけている。
 大人の皆さんの場合は大変だ。初心者が行うコンピュータの操作というのは、簡単な操作手順の学習だ。すぐのみ込める人とそうでない人の差は、「教える人の話を素直に聞く」か聞かないかの差である。操作手順を間違えればうまくいかないことはわかっているはずなのに、自分勝手に解釈してしまうから困ってしまう。お手伝いいただいているプロのインストラクターの若い女性も汗だくだ。
 このことは、年齢の差ではなく、意識の持ち方の差のようだ。しかも、研修会に進んで参加してきた方たちでそうなのだから、コンピュータ研修に参加する気のない方の場合はどうなるのだろうかとさえ思う。
 私も、もとはコンピュータを毛嫌いしていた。私にコンピュータを教えてくれた先生は、同じ職場の教員のTさんと、事務のMさんだ。2人とも私よりずっと若い。2人は初めは迷惑していたが、親切に教えてくれた。この2人にコンピュータの最初の壁を開けてもらった。今では、インターネットで知り合った皆さんが私のコンピュータの先生だ。
 コンピュータを始めたとき、特にそうであるが、マニュアルに頼っていると訳が分からないのが普通だ。ここであきらめる方が多いようだ。「自分の身の回りの人に教えてもらう」のが一番の上達法だ。人にものを教えてもらうのだから、校長にとっては少し勇気がいるかもしれない。このためには、学ぼうとする強い意欲と、「先生」への謙虚な姿勢がなくては、誰も気持ちよくは教えてくれないだろう。

職員室のOA化

 児童・生徒用のコンピュータ整備、インターネットの教育利用が今進められている。学校へのコンピュータ導入の目的は、子どもの授業に使うことにある点に異論は全くない。積極的に推進していく必要をこれまでこの拙文で強調してきた。
 しかし、実に奇妙なことが我が国の教育現場には起きる。私の区では、教師用の教材作成、教育業務用のコンピュータは「2台まで配当予算で購入してよい」ということになっている。これも、教職員用のコンピュータを購入してほしいという学校からの強い要望を受けて、やっと実現したことだ。それまでは、「教師がコンピュータを使いたければ、生徒用のコンピュータを使えばいい。」と頑なに言い張るのである。教職員用のコンピュータ整備については地域によって大きな差がある。しかし、本区のようなところが例外とは言えない。
 学校で教師がコンピュータを子どもに教えるには、教師がコンピュータのすばらしさを体現できる環境がなくてできるはずがない。
 教師用のコンピュータが整備されていないのに、文部省は、教師がコンピュータを扱えることができるか、教えることが出来るかの調査を平気でしてくるわけだ。
 職員室のOA(オフィス・オートメーション)化は、コンピュータ利用の教育を推進する不可欠の条件である。