校長のためのコンピュータ入門(その7)

コンピュータ活用教育のこれから

新しい教育課程では

 11月17日に教育課程審議会の中間答申の発表があった。コンピュータの教育利用については概ね次のように示されている。
・小中高ともに、各教科で積極的 な活用をはかる。
・小学校では、「総合的な学習の 時間」でコンピュータ等の情報 手段を適切に活用する。
・中学校では、技術・家庭科の  「情報基礎」の領域を男女共修 で必修にする。
・高等学校では、教科「情報」 (仮称)を位置付ける。
 高等学校に新たな教科を設けることには賛成である。今後のこの教科の充実を望みたい。
 小中学校については、教育内容の「厳選」という状況で、コンピュータについての新しい教育内容を加えることは出来なかったのだと思う。その点でやや不満ではあるが、コンピュータ利用の教育がこれから始まる、と考えるべきだろう。
 ここでは、小中学校でコンピュータ活用の留意点について検討してみたい。なお、コンピュータはインターネットにつながぐ事でその利用の可能性が大きく広がる。「コンピュータ活用教育」という場合はインターネットの利用を含むものと理解いただきたい。

授業改善の道具として

 この4月に、区の教育センターの先生方の研修に当たっている小中教員の仲間たちと、「教師が作ったーコンピュータ教育入門(旬報社刊)」という本を作った。この中から活用にあたっての考えや実践の一部を紹介しよう。
 以下、実践のタイトル
・「クマちゃんと遊ぼうーパソコ ンの9つの操作をマスター」
・「お絵かき、カラー印刷でカー ド作り」
・「絵本を作ろうー班ごとのお話 づくり」
・「ほんとうは・・・おばけ!ス ライドショーでミニ上映会」
・「チャレンジ!デジタル絵本」
・「プリクラのような顔シールを 作る」
・「角度を学ぶ」
・「オリジナル教材を作る」ー地 域教材「光が丘を探検しよう」
・「デジタルカメラでジャガイモ の観察日記」
・「社会科でデーターベースソフ トを活用」
・「玉川上水と新田開発」
など。
 利用の方法については、次のように整理される。
@発表や表現をする作品づくりの 道具として使う。
(情報の作成)
A調べるための資料として使う。(情報の収集)
B理解のための教材やドリルとし て使う。(情報の提示)
C通信・交流の道具として使う。
(情報通信)
 教師は毎日の教育実践で、「どうしたら、わかりやすく、楽しい授業ができるか」考える。私たちの討論では、この発想が授業でのコンピュータの活用のスタートである事で一致している。
 つまり、授業改善の道具。教師はコンピュータの専門家になるわけではない。教科、授業の専門家でなくてはいけない。
 言い換えれば、コンピュータを「こども自身が主体的に課題を見つけ、興味や関心を持ち、進んで考えたり調べたりし、それをまとめ発表したり、自己表現や主張をする活動を助ける道具」に使おうというわけだ。

とりあえず結論を急ぐ課題

 コンピュータの教育への活用は、教師の専門性の発揮に、その成否が握られている。できればあらかじめいろんな規制をもうけない方がいい。しかし、新しい教育課程が試行される過程で、最小限ある程度解決しておかなくてはならない課題がある。
 まず小学校で、キーボードの入力の方法をどう指導するかである。「ローマ字入力」に統一するか、いつ、どの教科・領域で教えるのか、あるいは教えないのか、という問題である。小学校でのコンピューター学習のねらいは、「慣れ親しむ」ということであるとされるが、小学校で初めに習ったキーボード操作はその後の子どもの学習に大きな影響を与えることになる。「中間答申」では小学校で「外国語」を導入することがうちだされている。これと同じようにキーボード入力の方法は小学校で学習する基礎・基本の一つとするのかしないのか、とりあえず結論を出しておく必要がある。
 実は、この問題は中学校でも同じ問題である。「中間答申」は、
「中学校においてはコンピュータの基礎的な活用技術の習得など情報に関する基礎的内容を必修とする。」「新たな情報の領域を設けることを検討する。」としている。 今、中学校では技術・家庭科に「情報基礎」の領域が設けられている。実は、この領域は、男子生徒だけに履修させても良いし、全く履修させなくても良いようになっているのだ。「中間答申」ではこれを「男女共修」の必修にしようという案のようだ。実際には、技術・家庭科の「情報基礎」はかなりの学校ですでにこのように行われている。当然のことを追認しただけのように感じられる。
 この領域は技術の領域であり、他の木材加工などの領域の学習と併せて学習することになるわけだから、実際にこの領域に使われる時間は3年間で最大35時間しか割り当てられない。一年にすれば10時間程度と言うことになる。
 「ワープロの入力の学習」などについて「各教科」で学習する内容と、技術・家庭科で学習する内容はもう少し明確にしておかないといけない。
 学校現場の実体に即した、検討を期待している。