校長のためのコンピュータ入門(その5)

コンピュータ悪戦苦闘顛末記

コンピュータが止まる!!

 十日ほど前だ。本校の五十周年記念行事が終わった。かねてから念願だった、私のコンピュータのグレードアップを実行した。
 目的は、インターネット上で、テレビ電話をできるようにすることだ。
 今の私のコンピュータは、ちょうどトランシーバーの交信のようにしかできない。相手が話しているときにはこちらは話せない、こちらが話しているときには相手の声が聞こえない。
 それを普通の電話のようにコンピュータでも、こちらの声と相手の声が同時に聞こえるようにしようというわけだ。この仕組みを、「全二重」(双方向同時)対応という。このためには専用の「サウンドボード」が必要になる。それをコンピュータに差し込んで、使えるようにする。
 今の私の機械では、結構やっかいだったが、ここまではなんとか出来た。
 次はデジタルカメラをつけるための装置の番だ。
 今度は「ビデオキャプチャボード」を取り付ける。ボードを取り付け、つぎにそのボードを働かせるための「ドライバ」というものをコンピュータに認識させなくてはいけない。ボードをつけてからわかったことだが、同包されていたフロッピーにはウィンドウス95に対応するドライバがない。
 結局、このままでは使えないわけだ。カタログで調べて、このコンピュータメーカーの純正の製品を買ったのに!(現在問合せ中)
 実は、そこで元に戻して、やめておけばよかったのだ。
 なんとか出来ると思って、いろいろな操作を始めてしまった。そのうちに、ウィンドウス95のシステムがおかしくなり出した、もうこうなった悪循環。とうとう、コンピュータはこのままの操作では修復不能のハングアップ。
 ここまできたら、「再セットアップ」といって、ハードディスクを初期化(フォーマット)する以外にない。
 頭の中が真っ白になった。
 このままでは、一年間かけてため込んだ、インターネットのホームページのアドレス、やりとりしたたくさんのメール、ダウンロードした貴重なデータやソフト、全部おじゃん。そればかりではない、ワープロや表計算、通信のためのソフトなども、もう一度入れ直さなくてはならない。まだある、私の機械は重装備だ。様々な周辺機器がついている。もう一度なにもかもやり直しだ。
 いつか、こうなることがあるとわかっていたが、バックアップをとっていなかったのだ。でも、これまでの経験と知識を総動員して、これまで集めたデータはようやく待避できた。
 さあ、初めから、やり直し。

 発展途上のコンピュータ

 何かの弾みでコンピュータの画面が止まってしまうことがある。マウスの矢印も動かない、キーボードを押しても反応がない。
 こんなことは、ワープロや表計算など普通にコンピュータを使っていては滅多に起こらない。起こっても、コンピュータをリセットすればたいていは元に戻る。だから普通にパソコンを使っている方は心配ない。
 ところが、購入したコンピュータの出荷時の状態を変更して、周辺機器を取り付けるときに問題が起きる。
 コンピュータは、非常におおざっぱに言うと、次のような仕組みで出来ている。
1,人間がコンピュータに命令を入力する装置。キーボード、マウス、マイク、ジョイスティックなど。        ⇒入力装置
2,コンピュータの作動の状態を表示したり、それを印刷したり、通信したりする装置。ディスプレイ、プリンタ、モデム、スピーカなど。       ⇒出力装置
3,コンピュータを動かすためのシステムや、データをしまっておく装置。ハードディスク、フロッピーやCDーROM、MOのドライブなど。     ⇒記憶装置
4,これらの装置間の信号のやりとりを調整する装置や、仕事(計算)をする中央演算装置(CPU)が入っている装置。 ⇒本体
 これを動かす基本になるソフトをOS(オーエス)という。オペレーション・システムの略。MSーDOS(エムエス・ドス)はマイクロソフト社のディスク・オペレーションシステムの商品名。WINDOWS95というのはMSーDOSに続くマイクロソフト社の開発したOSの商品名である。
 これまでもMSーDOSの時にコンピュータのハングアップは何回か経験した。そのときは、壊れたファイルを上書きしたり、システムを動かすファイルを自分で書き直したりして修復できた。また、入・出力装置や記憶装置なども、自分で十分に調整できた。これも大変ではあったが、勉強すれば何とかなる範囲だった。
 ところが一般のユーザーにとって使いやすくなったと言われている、ウィンドウス95ではそうはいかないことが今度の経験でわかった。機械の仕組みが自動化されることで、非常に高度な専門知識がないと、トラブルを個別に修復できないようになってしまった。
 結局は、システムの全部を元の状態に戻す、再セットアップという作業でしか修復できないというわけだ。この作業は、後から入れたソフト、データも全部消してしまい、また初めから入れ直さなくていけなくなる。しかも、ハードディスクは3ギガビットとという単位。フロッピーディスクで約3千枚分。一度も失敗せずにインターネットに接続できるまで、元の状態に戻すには、どんなに最短でも5時間。途中で間違いやトラブルが起きたり、調整するのが普通だから20〜30時間ぐらいかかる。
 その結果、去年の九月に買った私のコンピュータでは、インターネット上でテレビ電話のようなマルチメディアを快適には扱うことが出来ないことがわかった、というおまけ付き。やっぱり、そのためのコンピュータがこの秋に発売されるという。コンピュータは発展途上とはいえ、個人ユーザーとしてはやりきれない。

 専門の教員の養成が急務

 文部省のコンピュータを扱える教員の調査の発表があった。「扱える」「子供に指導できる」教員の割合が示された。正直に言って、これからの学校へのコンピュータ導入の参考にはならない。
 コンピュータを使った授業では、機械が止まったらおしまい。授業にならない。子供の扱うコンピュータでは、おそらくいろんなトラブルが発生するだろう。その際、業者がすぐに対応できるとは限らない。高度な専門知識と技能を持った教員の養成を制度として本格的にもうけることは急務だ。
 追記
 ビデオキャプチャーボードを取り付けることを断念。そこで、最新のインターネットテレビ電話のキットを買ってきた。早速セットアップ。ところが、インストールに失敗。またウィンドウスがハングアップ。もう一度初めから全部やり直し。
ああ! 神様。!!!