校長のためのコンピュータ入門(その3)

インターネットは教育・学校を変えるか(パート1)

 前回は全国の小中学校のパソコンがそう遠くない時期にインターネットにつながること、インターネットによる文部省などのホームページからの情報の収集などについて述べた。
 インターネットの使われ方についてはマスコミでいろいろ否定的な事件が報道されている。わいせつな情報、兵庫県の連続殺人の容疑者の少年の顔写真をホームページに載せるなど、情報の表現の自由のありかたの問題。渋谷区の教員が作成したホームページに子どもの個人情報が掲載されたとして教育委員会が削除を求めたものなど、個人の情報の保護や悪用の防止の問題。コンピューターウイルスやハッカー、著作権の保護の問題などである。
 そのためにインターネットを学校に導入することに懐疑的に感じている校長も少なくないと思われる。しかし、学校のコンピュータのインターネット接続の問題は間違いなく学校経営上の緊急かつ大きな課題となる。これから何回かにわけてインターネットが学校や教育の在り方を変えていくものか考えてみたい。

インターネットにつながるマルチメディアコンピュータ

 インターネットの仕組みがどうなっているか詳しい話はさておき、それはコンピュータ同志がつながっているものだと考えていい。つなぎ方には電話回線や光ファイバー、または人工衛星などによる通信がある。今日インターネットが急速に普及し、これからの可能性への無限ともいえる期待が高まっている理由は、コンピュータがいわゆる「マルチメディア」を快適に扱うことができるように進歩していることによる。
 マルチメディアというのは文字、グラフィックス、動画像、音声などの情報を一括して扱えることを言う。普通、文字は紙に書かれたり印刷されたものを読むことができる。絵なども同じように見ることができる。写真や動く画像、音声はこれまでは、フイルムや磁気テープを介して再生され観たり聞いたりできる。
 これらの情報をコンピュータではいったん「ON」と「OFF」の信号で扱う(1と0による2進法)。このような信号を「デジタル」信号という。
 一台一台のコンピュータが文字や映像、音声や動画像をいったんON・OFFの信号に置き換えて仕事をしているわけだから、コンピュータを回線でつなげばそれらの情報を一体のものとしてやりとりすることができる。
 映像や動く画像、音声などはこのようなON・OFFの信号で処理するには実に膨大な信号の量になる。コンピュータの進歩とは天文学的な信号の量を速い速度で処理できるようになることだ。数年前では個人ユーザーでは夢のように思っていたことが今実現しつつある。
 コンピュータをつないだ「通信網」(ネットワーク)は色々ある。
普通は中心になるコンピュータがあってそれがネットワークグループ全体を管理する。
 今、世界中のコンピュータが爆発的ともいえる勢いでつながっているのがインターネットだ。不思議に思えるが、インターネットでは全体を管理するコンピュータや組織はない。個人ユーザーは自分のコンピュータを電話回線につなぎ24時間インターネットにつながっているプロバイダと契約し、「プラウザ」と呼ばれるソフトを使えば誰でも通信網に参加できる仕組みだ。インターネットはちょうど道路と車の関係のようなものだ。ルールに従えば、乗用車、バス、トラックやタンクローリーなどいろんな種類の車が走ることができる。通信のきまりの規格や技術の体系なのである。
 マルチメディアコンピュータの進歩と、インターネットという極めて優れたネットワーク技術によって地球上のコンピュータが簡単につながる壮大なネットワークができあがった。

インターネットは情報の宝庫

 筆者はインターネットで最初につないだのが、アメリカの航空宇宙局・NASAのホームページだった。ハッブル宇宙望遠鏡からの宇宙の最新映像に驚嘆した。ホワイトハウスやアメリカの政府機関のホームぺージへの情報公開や広報活動にかける姿勢はさすがだと思った。なお、もちろんこれらのホームページは英語で書かれている。でも心配はない。私のパソコンには英日の翻訳ソフトがあっておおよその意味は解読できる。また、不思議なもので、英文を必死で読むうちにとっくに忘れていたはずの英語の語彙がよみがえってきた。
 インターネット上のホームページをみて歩くことを「ネットサーフィン」というそうだ。昨年の7月末から丸1年間、政府機関や公共機関、大学・研究機関や博物館・美術館、個人の発信する夥しい情報に接することができた。その情報量は日々急速に増大している。まさに情報の宝庫である。また、「Eメール」という「手紙」のやりとりでは、かっての教え子や不登校の子どもの単身赴任をしている父親とも交流した。
 自分の目の前のパソコンが日本はもとより世界中のコンピュータにつながっている。教育・学校が変わらないわけがない。