ビバークを覚悟したコクサギ岳 (両角義夫)
(かごのと山岳会の機関紙「やまなみ」の山行報告から筆者の許可を得て転載させていただlきました。)
********** | コクサギ岳は十観山とコマユミの間にそびえる青木村で二番目に高い山である。 青木村では大沢山〜P1429(青木・本城・坂井の各村界)そこから東のP1375〜P1427までを コクサギ岳と呼ぶらしいが、本城村では大沢山〜P1429,そこから北のP1378までをコクサギ岳と呼ぶ。 以前から気になっていた山である。 朝早く出ようとしたが予期せぬ事に「ジャガイモ堀り」となってしまう。11時30分あたふたと家を出る。 青木峠を越え明通トンネルを抜けてすぐ右側の「林道四阿屋山線」に乗り入れる。 空峠へは右側の「林道空峠線」を歩いてわずか5分程、広い駐車場あり。左側を行くとすぐ 「林道大沢入線」を左に分け四阿山の南を巻いて坂北村さらに坂井村まで達している。 峠の取り付き点には赤いビニールテープが下がっており、そこから登り始める。 山頂まで他に目印はなかったように思う。 樹林の中の登りで見晴らしはよくない。大沢山までは45分程で着くがここも展望なし。三つの村境のP1429へ行ってみる。 クルミがたくさん落ちているコルまでは10分足らず。さらに10分程の登りでピークに立つことができた。 ここの方が南面の展望がきき、夫神、大明神、その右側に滝山連峰の山脈が見える。東に進めばショナラ峠方面、北へ行けば四阿屋山。どちらもはっきりした道がついている。 大沢山に戻り、空峠をめざして下山を始めたのはいいが、途中から知らず知らずのうちに青木側の小尾根に踏み込んだらしい。どうも様子が違うが、まったく見通しがきかず現在地がわからない。 登り返して行くと、見覚えのある場所。何と大沢山山頂だ。何か狐につままれた感じである。 慌てて下山したが、又しても同じ場所付近で青木側の小尾根に入り込んでしまう。最初の時より右側の尾根だったらしい。 悪いことは重なるもので、石車に乗りずっこける。右手にラジオ(熊よけと雷察知用)を持っていたので、とっさに左手で体を支える。 起き上がり左手を見ると4cmぐらいすりむいて、血がにじんでいる「シマッタ、やってしまった。」 その時バンドが切れ、時計を落としていたのだが傷のことしか頭になく、まったく気づかなかった。 そのうち、獣の水場らしき場所に出てしまう。うっそうとした樹林の中,しかもじめじめした場所。 右へ行ったり、左へ行ったりするがわからない。時計を見る。トットットッ・・・。時計がない。 さっき滑った拍子に落としたらしい。心臓の鼓動が一気に加速する。 「あっ、踏み跡がある。」と喜んだのはいいが、さっき歩き回った自分の足跡だ。自分がどこにいるのかさっぱりわからない。ルートをはずれたのだけは確かだ。気ばかり焦る。 地図と磁石を見比べるが「ハテッ,磁石の北は赤い方?白い方?どっちだっけ。」パニック状態 頭の中に「遭難」の二文字が浮かぶ。今夜はここでビバークか・・・。夜中に獣の顔をなめられるか、はたまた頭から ガブリか・・・。とてもこんな所ではビバークは出来ない。もうちょっと安全な場所でと登り返す。大分明るい場所でザックを広げ、食料、水、ラジオ用電池を確認し、「ヨシッ、これだけあれば大丈夫だ。明日、親父を乗せて送り盆にいかなきゃならないが、まっいいか。」 覚悟が決まると余裕も出てきて「そう言えば登ってくる時確か茅をかき分けてきたぞなあ。」しばらく右側を探すと茅が 出て来、根元を丹念にかき分けると道がある。 「しめた。これで帰れる。」急いで取って返し、ザックをかつぐ。ちょっとしたヤセ尾根の下あたりで右下に車の音がする。「もうすぐだ。」林道に飛び降りると太陽がまぶしい。 こんなにてこずった里山ははじめてだ。 反省、そもそも出発の遅れ、それにピストンの場合、初めての山はいつも目印を残していったのに今回は右手にラジオ を持って「諏訪特集」を聞きながら登ったため注意力も散漫になり、それもしなかった。おかしいなあと思った時点ですぐ 引き返せば良かったのに何とかなるだろうと深入りしすぎた。「葉っぱが落ちていればどうという事のない山」だと聞くが里山はむずかしい。それだけに面白みもある。 平成14年8月15日 コース 空峠(13:00)−大沢山(13:45〜13:53)−P1429(14:10〜14:20)−大沢山(14:45)−駐車場 |
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