27-5権利  占有
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【問 5】占有に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 甲建物の所有者Aが、甲建物の隣家に居住し、甲建物の裏口を常に監視して第三者の侵入を制止していたとしても、甲建物に錠をかけてその鍵を所持しない限り、Aが甲建物を占有しているとはいえない。
2 乙土地の所有者の相続人Bが、乙土地上の建物に居住しているCに対して乙土地の明渡しを求めた場合、Cは、占有者が占有物について行使する権利は適法であるとの推定規定を根拠として、明渡しを拒否することができる。
3 丙土地の占有を代理しているDは、丙土地の占有が第三者に妨害された場合には、第三者に対して占有保持の訴えを提起することができる。
4 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者及びその特定承継人に対して当然に提起することができる。
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解答解説 正解 3
 占有を正面から問うのは、初めて。だが、1と2は、常識的に判断でき、4は解法のセオリー・不自然な強調をしていることから、誤りであることがわかる。
1 × 占有とは、事実上の支配のことである。判例は、所有者が建物を占有しているというためには、建物に錠をかけてその鍵を所持していなくとも、建物の隣家に居住し、建物の裏口を常に監視して第三者の侵入を制止していたならば十分である、と言っている。鍵をかけなければ占有できないと言うならば、鍵がない家は占有できないことになり、常識的にもおかしな記述だ。

2 × 確かに、「占有者が占有物について行使する権利は適法である」との推定規定がある(民法188条)。が、これは占有者が無権利者に対して主張できることであり、所有者であるとわかっている者に対して主張できることではない。占有者が所有者に対して、占有する権原(法的根拠)があると主張するなら、その権原を証明しなければならない( 判例)。

3 ○ 占有を代理している者も、占有保持の訴えを提起することができる(民法198条)。代理占有とは直接占有していた者が他人(占有代理人)に直接占有を委ねることだが、代理占有の制度は、占有代理人にも占有の効果を認めることにあるのだから、当然である。

4 ○ 占有回収の訴えとは、権利者であるか否かを問わず、占有していたというだけで、占有を奪われた場合に占有を回復できる訴えである。これは、一時的な救済措置なので、占有を侵奪した者の特定承継人に対しては提起することができないのが原則で、例外は、その承継人が侵奪の事実を知っていたときである(民法200条2項)。 本肢は、「その特定承継人に対して当然に提起することができる」とする点が誤り。「当然に」というのは不自然な強調で、解法のセオリーから言っても誤りである。

肢4のヒントとなる
解法のセオリー動画
https://
youtu.be/g74a9CnH8yk