掲載日順です  日経新聞|朝日新聞サンケイ新聞毎日新聞50のネタ


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25日間連続落語会・終了後の新聞記事
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*日経新聞*

1999年9月30日(木)夕刊

●桂雀三郎25日間連続落語会●

新作・古典、区別なく奔放に

---1日も休みなく客を笑いの渦に巻き込んだ---

 50歳になったのを機に、毎日2席ずつ25日間も演じようとは普通考えつかない。しかし、桂雀三郎は思いつきで前代未聞の苦行をやってしまう人である。9月3日から27日まで1日も休みなし。定員65人の一心寺シアター立身出世劇場は連日大盛況。満杯の客をどっとわかせ続けた雀三郎はまた一つ大きな宝物を得たに違いない。
 噺家(はなしか)になって28年。師匠の故枝雀に「無茶苦茶気の長い男」と太鼓判を押されたのんびり屋だが、地道な努力と天性の語りのうまさで早くから古典のホープとなった。ところが86年に突然変身し、「雀三郎製(じゃくさんせい)アルカリ落語の会」で数々の新作落語に挑戦。今や70ものレパートリーを持つ上方落語界きっての冒険者なのだ。
 この連続落語会では集大成といえる50席を演じたが、その中には得意の新作も8席(*注)入っていた。雀三郎の不思議な偉大さは、新作と古典を区別していないことだろう。リアルで奔放な描写と人なつっこい語り口で、新作を古典と同じように違和感なく人の耳にすっとなじませ、笑いの渦に巻き込んでしまう。
 たとえば21日の「哀愁列車」(小佐田定雄作)。失恋した大学8年生の前に現れる、胃が悪い大食らいのおばあさん、しりとり歌合戦を始めるやかましいおばはんと子供、それに罵詈(ばり)雑言をまき散らす傷心の酔っぱらい、といった人物描写の説得力とたまらないアホらしさは、この人の独壇場という感じだ。
 ギター片手に歌ってCDは出すわ、演劇にも出るわ、驚くほど多彩な分野に果敢に挑戦して非凡ぶりを発揮している。いかにも人のよいシャイな風貌を見ているとどこにそんな(?)と思うが、過激な底力がまだまだ眠っていそうな気もする。涼しげな髪型(?)といい、自在な突っ走りようといい、つくづく師匠ゆずりである。

(編集者 やまだりよこ)

(*注:「新作8席」となっていますが、7席が正しいです。)

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*朝日新聞*

1999年8月27日(金)夕刊

1日2席、25日間連続落語

師匠の枝雀に追いつきたい
--- 桂 雀三郎 ---

上方落語の中堅、桂雀三郎が9月3日から、大阪市の一心寺そばにある一心寺シアター3階、立身出世劇場アトリエで、1日2席ずつ連続で25日間、計50席を語る落語会を開く。

  大阪では桂歌之助が「歌之助百噺」、桂文我が「文我百席」と題して公演を続けているが、毎月1回か隔月開催の形。東京では1990年に春風亭小朝が、1日2席、連続30日間の独演会を開いている。
  大阪では、いわば前代未聞の会を開くことになったことについて、雀三郎は「えらいこと言うてしもうたなあと、今になって焦ってます」と前置きして「チラシには『芸能生活28周年記念』と、半端な数を出しているが、実は50歳になったので、これを機にネタをきちんと整理したかったから」と話す。
  そして、「いっそやるなら、落語家仲間や周りの人から『えらいことやりまんのやな』と言われるほどのことをしたかった」と言う。
  竜谷大を中退して71年3月、さきごろ亡くなった枝雀に入門した。古典のほか、毎月1席、新作の初演をする会を8年ほど開いたこともある。演じられるネタは古典で100席ほど、新作では70席ほどになる。
  「師匠は持ちネタを60席に限って演じていた。僕の場合、商品として使えるのは、50くらい」だそうで、古典では「天神山」「らくだ」「親子酒」「けんげしゃ茶屋」「鬼の面」など、新作では「わいの悲劇」「雨月荘の惨劇」など7席が入った。
  師匠のように、全国各地で独演会を開くことを目標にしており、東京へも積極的に進出している。「弟子に加えてもらい、大事に育ててもろうた。ずぼらな性分なんで、自分で自分を追い込んでいって、頑張るしかない。そして、師匠に追いつきたい」
  落語会は、一門やほぼ同期に入門の桂春駒、笑福亭仁智らの助けを借り、前座と共に4席で構成。各回1500円だが、通し券や割引券もある。日曜は午後5時、他は午後7時開演。問い合わせは、米朝事務所(06-6365-8281)へ。
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*サンケイ新聞*

1999年8月25日(水)夕刊

桂 雀三郎
毎日2席ずつ計50本 * 本人は「商品陳列会」

来月3日から25日間ぶっ通し落語会

  桂雀三郎が9月3日から、25日間ぶっ通しの落語会を開く。毎日2席ずつで計50席を努めるが、これらは今後の持ちネタにしようと選んだものばかり。「いうたらまあ、この中から売っていこうというネタ。商品陳列会ですわ」。
  これまで演じてきたネタは、もちろん50本などで収まらない。「古典で100ぐらい、新作でも70〜80は、やってると思う」。それらの中から、得意、好き、面白い、バラエティーなどいろんな要素を加味して、50本を選んだ。自信を持って高座にかけられるネタ。落語家にとっての商品だ。
  「どれだけ捨てるか迷うかと思ったけど、実際は集める方に苦労した。でも、米朝師匠でもホンマの得意ネタというのは20くらいや言うてはりましたから」。選んだのは、新作7本のほかは古典。これまで演じてきた新作、古典の比率と比べると、時代を超えて残ってきた古典落語はやはり一定以上の品質を保証しているようだ。
  「天神山」から「雨月荘の惨劇」まで、高座にかける順番は季節感のあるものについては春夏秋冬の配列に。9月15日には“敬老ネタ”の「G&G」にするなど、味な演出もある。出演は、雀三郎を含めて毎回3人。最終日の27日には、桂南光を迎える。
  「枝雀師匠も持ちネタを60席というふうにしていたし、私も前々から考えていた。今年3月で50歳になって踏ん切りがつきました。25日間も続けてやるのは初めてですが、自分を追い込むということもあるんです」。熟成期をむかえようとする雀三郎にとっては、これからの落語家人生の仕切直しになる落語会といえる。
  会場は、大阪市天王寺区、一心寺シアター内、立身出世劇場アトリエ。開演は午後5時か7時。料金は各日1500円。5日間割引券は6000円、25日間通し券は25000円。TEL.06-6365-8281 米朝事務所。
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*毎日新聞*

1999年8月14日(土)夕刊

“自分の中のベスト50”の得意ネタに絞って

25日間連続落語会に挑戦する
--- 桂 雀三郎 ---

  「えらいこと言うてもうたな。どうなるんか、自分でも分からんのですわ。途中であかんかったらどないしよ」
  9月3日から25日間連続で1日2席ずつ落語を語るというマラソン落語会に挑む。「怠け者やからね。出してしまったらやらざるを得ェへんがな」と自分を追い込んでの挑戦である。
  チラシには「芸能生活28周年記念」と中途半端な数字が書かれているが、本当は50歳になったことが契機だ。「区切りをつけようと」得意ネタを整理した。これまでに演じたネタは「古典100ちょっと、新作も70〜80席」。さぞかし絞るのに苦労したろうと思われるが、意外にも選ぶのが大変だった、と言う。
「うちの師匠も言うてはりましたけど、オモロなかったら持ってないのといっしょやで、と。自分の中のベスト50のつもりです」
  4月に亡くなった桂枝雀(当時小米)に1971年、大学を中退して弟子入りした。桂米朝をはじめ四天王の人気が高く、落語ブームと言われたころで、自身も落研に籍を置いていた。「うちの師匠がちょうど出てきたとこで、若いけど狂気じみたおかしさがありました。これからはこの人や」と決めたと話す。その枝雀を「落語の邪魔になることはどうでもええという人やった。100%に近いくらい生活を落語にささげていた。ぼくも相当落語好きなほうやと思うんやけど、とてもそこまでできまへんな」と振り返る。
  落語のみならず、小劇団の舞台に立ち、CDを発売しギターを抱えてライブもする多彩な活動ぶりである。ファンには落語から離れてしまうのでは、という心配もあるが「それは絶対ないです」と言い切る。
  「芝居も音楽も他の人と一緒にやるから稽古そのものが楽しいんです。落語の稽古はストイックですから。でも、落語はどこにでもいるような人物が、誰にでもあるような事を題材にしてます。人間ちゅうのはこんなもんや、というのを喜んでるところが魅力です」
  枝雀も生前、30日連続落語会を企画していた。期せずして師匠の遺志を継ぐことになり「よけいやらなあかんな」と気合いも入る。関西各地ばかりでなく、東京でも独演会が定着し人気も地武力も着実に付けてきた。
  「全国津津浦々で独演会をやるようになりたいでんな。目指すのはうちの師匠と米朝」と、区切りの年にさらなる飛躍を期す。

文:勝田 友巳


50のネタ一覧(五十音順)*1999年現在*
■■■は新作落語
哀愁列車 青菜 愛宕山 いらち俥 一杯の素うどん
植木屋娘 雨月荘の惨劇 鬼の面 親子酒 帰り俥
神だのみ初恋編 替わり目 くっしゃみ講釈 口入屋 けんげしゃ茶屋
高津の富 小倉船 こぶ弁慶 皿屋敷 三十石
G&G 猪買い 七度狐 蛇含草 崇徳院
天王寺詣り 天神山 天狗裁き 胴乱の幸助 道具屋
時うどん 二番煎じ 猫の忠信 寝床 軒づけ
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