その8
6月8日火曜日
 気がついたら、ビデオどころか写真を1枚も撮っていなかった1日…。

 寝返り激しく、あまり眠れなかった。睡眠時間3時間といったところか?午前5時になぜか中華を食べることに。僕はTVで見て以来、チャジャン麺が食べたかったのだが、期せずして食べれることになった。ほかは、カニの入っていないカニ玉(なぜかきゅうりとかが卵の中に。笑)と唐揚げにキムチ(3種類)。量が多い。箸でもそもそとチャジャン麺をすすっていると、そうじゃない!こうだっ!とばかりに食べ方を教えてくれた。ぐちゃぐちゃにソースと絡めて食べたほうがいいらしい。

 チャジャン麺は僕の予想と違って、かなり甘い味付けで、美味しくない。麺はあえていうなら伸びたきしめんか?肉が入っていると思ったが、これには入っていない。この店が外れだったのか、それともこんなものなのか?それに比べてカニ玉のほうは同じソースがかかっているものの、美味しく食べれた。寝ぼけているのか、昨晩の焼肉が残っているのか、なかなか食が進まず。結局半分くらい残してしまった。うーん。

 6時近くになってシャワーと歯磨きを済ませ、寝なおし。朝1番で市場に向かうはずだったが、この状態では出かけられない。意識が遠のく。

 目が覚めると、10時くらいだった。TVをつけっぱなしで寝ていたようだ。寝汗たっぷり。シャワーを浴び、必要な装備を整え、出発。6号線東廟前駅から地下鉄に乗り込む。昨晩は気がつかなかったが、1番出口下はダンキン・ドーナツになっていて、売り子が非常に可愛い。

 5号線に乗り換え、一路「永登浦市場」へ。ここが今回のメインステージだ。日本のどのガイドブックにも載っていない。前回の旅行で判ったことだが、ガイドブックに載っていない、というのは、

1.中心部より離れている
2.外国人にお勧め出来ない
3.日曜日が休み


 という、意味合いが強いのだと思う。

 事前にチョさんに下調べしてもらっているが、僕は「1件1件が判るレベルの地図」を使っての、完全制覇を考えていた。

 永登浦市場駅到着。地下鉄最短距離で1時間かかった。3番出口から外に出る。…雰囲気が違う。僕が初めて韓国旅行した1995年当時の東大門市場のようだ。よそ者を寄せ付けない、そんな雰囲気。カメラで撮りながら進む、という感じではない。食べ物の匂いがきつい。市場の大きさが判らなかったので、外周から攻めることにした。まず道路に沿って1周、それから中の道をジグザグに、といった方法。


たぶん本邦初公開であろう。
結論からいうと、下の地図で赤枠内が市場で、
黄色で示した建物がおもちゃ屋である。
ほかは主に衣類、食べ物類の店で市場が形成されている。↓

道路を挟んで左側のブロック(4番出口方向)は、
小さな製造工場の集まりである。
また、道路を挟んで下のブロック
(この部分だけで南大門市場に匹敵する大きさ)は、
飲食店とカラオケ店で満たされている。
細かい道も含めてすべて歩いた。
市場の中は食べ物の匂いが更にきつくなり、プラス生ごみの匂い。
お腹いっぱいの状態だと、歩くのがつらい。

 1時間ほど歩き回ったろうか、暑さと匂いと荷物の重量に負けて一休み。辞書を持ってきたのは正解だったが、ビデオカメラは撮る雰囲気でないのだから、デッドウエイト。まったくの無駄だった。

 食事を兼ねて1時間半ほど涼んでから、再度探索開始。気分が非常に良くなった。おもちゃ屋では、確かに東大門よりも古い物が見つかったが、それはほんの少量で、ほとんどは同じものだった。その古い物も僕の好きな物とベクトルの向きが違っている。

 市場内に日本のプラモデル専門模型店を見つけた。ちょっとコミュニケーション。ここの市場の人は、日本語がまず通じない。少なくとも僕以上の語学力がないと楽しめないかもしれない。まったく韓国語を話せなかった頃の僕だったら、1人で周れなかっただろう。素朴な、昔の東大門のような雰囲気がすっかり気に入ってしまった。

 左側のブロック探索中に小学生がやたらといるのに気づいた。来た方向を遡ってみると、やはりあった。ゲーム機がおいてある小さな商店。そこで「装甲救助部隊レストル」のプラモデルを発見したので購入する。もう絶版で手に入らないものだ。欲しかった物が手に入って満足。周りを調べると小学校があった。更に彼方にはマンションが。昨晩の「マンション併設の商店」を思い出し、歩き出す。すでに足が痛くなっていたがかまわない。

 当てが外れる。つらいだけだった。判ったのは、新しいマンションだと古い商品がもともと置いてないが、あまりに古いマンションだと、商店自体が併設されていない、ということだ。こちらのほうはまったく想定外の方向なので、地図を用意して来ていない。道にも迷う。ロッテマートを発見したので入店。もう午後4時を過ぎていた。足がかなり痛い。

 こちらのロッテマートは独立して建っているためか、よりEマートに似ている。なのでおもちゃ売り場もさっぱり。本コーナーを見つけたので、やはり日本語テキストを探してみる。置いてあったが、どれもまじめで面白くない。もっと種類の多い所で選ばなければ、と思う。ゆっくりと本を見たので足が結構休まった。もう時間は5時だ。1階のロッテリアで早めの夕食。

 …ぬるい。ハンバーガーもポテトもぬる過ぎる。やる気がなくなってしまったのか、ロッテリア!僕は悲しいぞ。…何か向こうのファーストフードの従業員同士で揉め事が発生したようだ。うーむ。


 とぼとぼと地下鉄駅を目指す。この市場で、僕のような旅行者にはついに出会わなかった。

 南大門にも未知のおもちゃ屋がある、という情報を掴んでいたが、今からだとぎりぎりか、または閉まっている可能性がある。それなら5号線上にある「S模型」か光化門にある「キョウボ書店」に寄ったほうがいいのでは?と迷う。時間と足の具合を考えてS模型に寄ってみることにする。S模型なら「NEO」のバックナンバーも買えるはずだ。コンダック駅で下車。

右上がコンダック駅で、左下がマポ駅。

 しかし、この判断は間違いだった。S模型店が大通り沿いに移転になってコンダック駅とマポ駅の間にある、はずだったが…。マポ駅そばまで歩いて見つからないので引き返して再度確認。おかしい。あるはずなのに!足が痛くてしょうがない。半ば意地で歩いている。

 コンダック駅に着いた。このまま6号線で帰るか、5号線でキョウボ書店へ寄るか迷う。ここで何も収穫がなかった悔しさから、後者を選択する。地下鉄車内で、果たして何時まで営業しているのだろうか?ゆっくり本を選べるだろうか?と考えていた。光化門駅へ到着。7時半くらいになってしまった。


 入り口すぐのCDショップに立ち寄る。OST(韓国ではオリジナル・サウンド・トラックを略してオー・エス・ティーという)コーナーをちらりと見る。めぼしい物がなかったのですぐDVDコーナーを探索。ここもEマートほどではないが、ほとんどが欧米系の映画である。価格も安いという感じがしない。韓国映画を1本1本調べるが、どれも日本語字幕がなく、考えた末、購入を断念。

 キョウボ書店では、模型雑誌がどこにあるのか、分類がまったく判らない。すぐに気が付いたのは、外国語テキストのコーナー。これも今回の目的だったので、調べに入った。さすがに大型書店だけあって、種類がたくさんある。学生が8人ほど僕同様に本を選んでいた。そのうちの2人は座り込んで、日本の漫画を韓国語訳した物を読んでいる。周りを観察すると、隣は中国語で、そちらのほうが人気が高いようだった。

 本を選びに来た人は時間と共に入れ替わって行く(比較的女の子が多い。男で日本語上手な者が1名だけ現れた)が、思ったよりずうずうしい者がいる。男しか見かけなかったが、座り込んで読むのは当たり前のようで、中には授業で使うのか、ノートを持ち込み、丸々ページを写し取っていく者がいた。そんなことをするくらいなら、携帯に付いているカメラで撮ったほうが楽なのでは、と思う。結局やっていることは変わらないのだから。

 僕もしばらくの間は、立って読んでいたが、真似をして座り読みした。脚の疲れも手伝っている。一通りテキストを見たが、残念ながら僕が買いたいと思う本はなかった。かろうじて面白いと思ったのが、

1.ナウい日本語
2.イチゴちゃん


 だった。1のほうはタイトルだけ面白く、中身はまじめだった。2は正式なタイトルが読めなかった。イチゴちゃんという、独り突っ込みの多い小学生の女の子の日記で、言葉を学習するスタイル。なかなか面白かったが、まだまともである。もうひとつ、「生きた日本語を学ぶ」といった本があったが、中身がいわゆる「若者言葉」を駆使する物。例題で「まじやばくねー?」とか「あいつうぜーよ」とか。狙いすぎの気がする。僕が欲しいのはもうちょっとナチュラルに「変」なテキストなのだ。結構、このコーナーに長居したので、この本屋の閉店時間は何時だろう?と気にかかる。そろそろ買うものを買って帰るか、と腰を上げた。脚がだいぶ楽になる。

 しばらく回って、模型雑誌コーナーがどうしても見当たらなかった(漫画コーナーができていて驚いた)ので、3Dパズルと模型が置いてあるコーナー(コーナーといっても90センチくらいのスペースで、本屋の一部分なのだ)の店員さんに聞いてみた。最初は僕が模型を欲しがっているのかと思われてしまう。模型本ありますか?の、「本(チェッ)」の発音が悪かったみたいだ。出版社の名前も言ってようやくPCで検索してもらえた。模型雑誌は3Dパズルと模型が置いてあるコーナーとぜんぜん違う場所。

 案内されてみると、近くにオーディオ雑誌もあった。城さんからオーディオのことも聞いていたので、観察。4種類あり、そのうち2冊はHi-ViとSound Recordingで、日本の雑誌のローカライズだろう。後の2冊は韓国独自の様子。中を見ると、ほとんどが輸入オーディオだと判った。これで自作オーディオの記事でもあれば買ったのだが、そういった記事は微塵もない。


買った本は2冊。
レシートによると、
会計をした時間、8時27分。

模型雑誌NEO。↓

D-DAY(ノルマンディ上陸作戦)特集で、
割りと密度が高かった。
韓国でも「史上最大の作戦」と呼ばれる。

季刊漫画。↓

電話帳くらいの大きさ、厚みで、
「漫画」と書いてあったから注目した。模型雑誌の近くは、
アニメ雑誌が置いてあったが、漫画コーナーではなかったので、
余計に気になった。
ビニールで覆われているので、中身が確認出来なかったが、
僕の好きな絵柄(ペインターによる重厚な感じも)だ。

 光化門駅から東廟前駅へ。まだダンキン・ドーナツのお嬢さんはがんばっている。偉いっ!ホテルに戻る。脱力感でいっぱい。部屋に入るとシャワーも浴びずに倒れて寝た。TVも電気もつけっぱなし。


 目覚めたら11時ごろ。コンビニへ飲み物を買いに出かける。コカコーラとミルクティーとオレンジジュース、プレミアムアイスの「ナットゥル」イチゴ味(本当はコーヒー味が欲しかったのだが、売っていない。悲)を買う。東廟前の交差点角に座ってミルクティーを飲む。口に違和感。ミルクティーだと思って買ったものは、玄米ジュースだった!玄米の苦さと甘さの絶妙な、いや微妙なハーモニー。これはつらい。アイスを食べにかかるが、夜の街は涼しく、硬くて食べられない。ホテルに戻ってゆっくり食べることにした。帰る途中で前回の旅行で猫がいた商店を覗いてみるが、猫がいない。明日また覗いて見よう。

 アイスを食べつつ、TVを見ていると、「日本のおれおれ詐欺が韓国に輸入」されたニュースをやっていた。脚の弱いおばあちゃんが騙され、10万円ずつ2回、計20万円分振り込んでしまったらしい。畑仕事で細々と暮らしていたのに、これからどうやって暮らして行けば…、という悲壮な内容。警察は付近の老人にビラを配り、注意を呼びかける、という対処法を取るようだ。日本の警察とやることがあまり変わらない。

 買った本を見る。NEOは予想通りだが、季刊漫画のほうはびっくり。表紙の作者はイラストだけで最初の5ページ目まで。これが1番楽しみだったのに。他はコラムとか、ちょっと古臭い漫画。最後の漫画が援助交際物なのが珍しく感じただけで、僕にとっては残念な内容だった。…そのまま力尽きそうになったので、慌ててアイスを冷蔵庫に仕舞って就寝。


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