Rock'n Roll Car Jack - vol.5(July)


6回シリーズの5回目は、7月〜8月。梅雨も明けて、真夏の海へ!山へ!太陽を一杯に浴びる、私の大好きな季節の到来なのだ!イェイ!
ってコトで、夏の行楽、夏休みにピッタリなドライブ・サウンドは??ってコトを考えて選曲してみました♪

 

 

登場人物紹介

圭介
音楽は「表現」だといつも思っている、ベーシスト兼作曲家兼アレンジャー。
小学6年生で最初のロックバンド結成以来、無数のバンド活動を経て現在に至る。
仲間から生き字引とまで言われる70年代〜80年代のロックについての知識は、彼の作曲に多大なる影響を与えている。

えり
音楽は「はあと」だといつも思っている、コマーシャルの音楽プロデューサー。
幼少の頃からピアノや作曲を学び、ヤマハ音楽教室の講師を経て現在に至る。
聴く音楽のジャンルは幅広く、その事が彼女の仕事に大いに役立っている。


 

電話のベルが鳴っている。
 ベッドに入ってもなかなか寝付くことが出来ずにいた俺は、冷蔵庫からペットボトルを取り出した後で、受話器を取った。

「 えりだよぉ〜ん!!!明日は私の誕生日だよっ!まさか忘れてはいないだろうけど。
一応、リクエストはね、夏だ!太陽だ!海だ!キャンプだ!花火だ!楽しい!って感じのテープ。
で、どっか連れてって〜〜〜!!!」

 ヤバい!!非常にヤバいっ!!あれぇ?明日だったんだっけ・・・?俺、人の誕生日憶えんの苦手なんだよなぁ。
マズイ!時計を見ると既に午前2時!ひえ〜っ!急いでやんないと寝る時間がない!
とりあえず、むせ返りながら、手にしていたコーラを一気に飲んだ。

 寝不足の俺とは対照的に、メチャメチャ元気そうなえりは、ミニスカートにサンダル姿でクルマに乗り込んできた。

「あのね、私、季節の中で夏が一番好きなの!特にこんなイイ天気の日は、サイコー!!」

 俺は実は夏が大嫌いなんだって事を言えなくなってしまった。言葉を返す代わりにPLAYボタンを押した。



M- 1 SURFIN' BIRD / THE TRASHMEN (1964)
サーフィン・バード / ザ・トラッシュメン


 直射日光が眩しすぎる。眩しいのも俺は嫌いだ。

「コイツ等、実はサーフィンを一度もやったことがないんだよ。」

「はぁ?でも、サーファーバンドなんでしょ?」

「うん。でも、海のないミネアポリス出身のインチキサーファーバンド。」

「陸サーファーって言うより、山サーファーだねぇ。」


「一度トライしてみたものの、やっぱり出来なくて帰っちゃったらしい。」

「えーっ!笑える!」

「ベンチャーズと比べると、ワイルドでしょ。」

「う〜ん、パンクかな?コミックパンク。」

M- 2 YUMMY YUMMY YUMMY / OHIO EXPRESS (1968)
ヤミー・ヤミー・ヤミー / オハイオ・エクスプレス


 我慢できなくてサングラスをかけた。それにしても暑い!

「あっ!出ました!オハイオエクスプレス!」

「こーゆー曲、えり、好きでしょ。」

「うん!楽しくなっちゃう!」

「やっぱりね。」

「どーゆー事?」

「いや、実はこの曲、"おいしい、おいしい、おいしい"っていう意味の、子供用の曲だから。」

「・・・つまり、どーゆー事?!」

M- 3 THE TIDE IS HIGH / BLONDIE (1980)
夢見るNo.1 / ブロンディ


 渋滞につかまってしまった。日射しは相変わらず強い。

「元々はパンクバンドだったんだよ。」

「ふ〜ん・・・。でも、私はポップな曲の印象の方が強いなぁ。」

「ディスコサウンドやら、レゲエやら取り入れて、どんどんBIGになっていったんだ。」

「そういえば私、この曲と、"コール・ミー"の2曲をCMプレゼンテーションに出した事あるよ。」

「ブロンディの曲が最近、車やドリンクのCM音楽で使われてたりしたのは、俺達の努力が今になって実ったって事かな。」

「私がやりたかった!」

M- 4 THE HARDER THEY COME /  KEITH RICHARDS (1979)
ハーダー・ゼイ・カム / キースリチャーズ


 クーラーを最強にしても、追いつかない。でも、えりは元気だ。

「あれ?この曲、カバーじゃない?」

「その通り!ジミー・クリフの曲。今やプレミアムが付いている貴重盤!」

「私、プライベートではあんまりレゲエって聴かないなぁ。」

「俺も実はそう。でも、キースのこの曲が、俺にレゲエというジャンルを意識させたんだ。」

「そういうパイロット的なバンドっているよね。」

「この曲は、ストーンズが活動休止中にファンサービスの為にリリースしたシングル。」

「なんで活動休止してたの?」


「カナダで捕まってた。」

M- 5 DRIVIN' AROWND / RASPBERRIES (1972)
ドライビン・アラウンド / ラズベリーズ


 遂に目的地を変更。こんな暑い日に渋滞なんかマッピラだ。

「ラズベリーズって、最近エリック・カルメンがソロを出したんだよね?」

「ジェリーフィッシュから遡ってチープトリック、そこからまた更に遡ってラズベリーズ。
そうやって再評価されて来て、俺はうれしいよ。」

「あ、そのラインは私、ぜ〜んぶ好き!!」

「ラズベリーズの曲って、クラシックっぽいのと、UKロックっぽいのと、この曲のようにビーチボーイズっぽいのと、
3つに分けられる。曲はいいけどルックスはダサかった。白いスーツだったし。」

「圭介って、結構ルックスにこだわるよねぇ?」

「・・・・・。」

M- 6 HEY DEANIE / SHAUN CASSIDY (1977)
ヘイ・デニー / ショーン・キャシディ


 渋滞の列は、海や山へと繋がっている。

「この曲は、エリック・カルメンがショーン・キャシディの為に書き下ろした曲。」

「ショーン・キャシディって、カバーも多いよね。」

「うん。キャシディ家は、ハリウッドの芸能一家で、父はプロデューサーだし母は女優だし兄はミュージシャンだし。」

「お兄さんって、デビッド・キャシディだ! 」

M- 7 SUNDAY / BUSTER (1976)
すてきなサンデー / バスター


 イントロが始まると同時にえりが手拍子の準備を始めてしまった。

「名曲です。」

「うん。私もそう思う。」

「お金を貯めて、この曲の権利を買うのが俺のユメです!。」

「いくらぐらいするのかなぁ?」


「二足三文だと思う。」

M- 8 WE MADE IT LAST SUMMERTIME / PAT McGLYNN'S SCOTTIES (1977)
思い出のサマータイム / パット・マッグリンとスコッティーズ


 信じられない事だが、この暑さの中、えりはまだまだ元気いっぱいだ。

「きゃー!きゃー!スコッティーズだぁーっ!うれしー!」

「B.C.R.脱退後シングル第2弾。因みに第4弾はデイドリーム・ビリーバー 。
しかし、何で俺、こんな事知ってんだろーなぁ。やんなっちゃうなぁ〜・・・。」

「いや〜ん、涙が出ちゃう程うれしー!」

「そう言えば、レイチェル・スイートのプロデューサーをやってる人が、この曲のプロデューサーの片方だって事を見つけた。
この事を知ってるのは多分日本で俺一人だけ!」

「そんな事を気にとめてるのも圭介だけ!」


M- 9 I GO TO PIECES / RACHEL SWEET (1979)
アイ・ゴー・トゥ・ピーセス / レイチェル・スイート

 郊外の裏道をすり抜ける。民家が立ち並ぶ細い道を何度も曲がって走る。

「"悲しき街角"の、デルジャノンの作曲で、後にピーター&ゴードンがヒットさせた曲なんだよ。」

「かわいい感じの声だね。」

「当時は彼女も16才。顔もかわいかった。」

「アイドルだったの?」

「レイチェル・スイートがいたレーベルは、彼女以外はパンクかニューウエーブだったのに、いきなりアイドルが出現した。
いや、ホント、かわいかったんだよ。」

「圭介って、やっぱりルックスにこだわるよねぇ?」

「・・・」

M-10 SCHOOL'S OUT / ALICE COOPER RICHARDS (1973)
スクールズ・アウト / アリス・クーパー


「あ!遊園地だ〜っ!」
いきなり見えて来たこの遊園地には、でっかいプールがあって、本物の海よりもリゾート的な気分を満喫できる施設が整っている。 とにかく俺は、あちこちに砂が付くのが嫌なんだ。

「夏休みだ!学校終わった!っていう曲。この人の歌詞は学園物が多い。」

「アリス・クーパーと言えば、やっぱりメイクが浮かぶなぁ。」

「元々は、"アリスクーパー"っていうバンドの名前だったんだよ。」

「何だか、ロッキーホラーショウを思い出しちゃう。」

「"シアトリカルロック"とも言われてたしね。あと、"グラムロック"又は"ホモホモロック"」

「シアトリカルロックならば、私は"キッス"か"スパークス"だな。」

「キッスに近いステージのやり方をする人だね。」

 今回のテープを聴き終わった後で、えりがバスターのCDが欲しいと言い始めた。
俺としてはプレゼントしてやりたい気持ちは充分にあるんだけど、残念ながらCDになっていない。
スコッティーズにしても同じ事が言える。
日本においてこのあたりの洋楽曲は、とてもとても重要な役割を果たしているのに、CDになっていない。
みんな、実際に通って来た道の筈なのに、その事を何故か隠している!コレクターズアイテムのジャンルからさえも抜け落ちている。
だから、かなり努力をして探さないと見つからない。
俺なんか関東だけじゃなく、関西や九州の中古レコードショップを回り歩いた結果 、こうやってえりを満足させる事が出来た訳なんだけど、出来ればどっかのメーカーから、オムニバスでもいいから発売して欲しいもんだよ。
何枚売れるかは保証出来ないけどね。
 とにかく今日は帰ったらシャワーでも浴びて・・・。ギターの手入れでもやるとすっか!

 

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