Rock'n Roll Car Jack - vol.6(August)


6回シリーズの最終回。最後まで読んで下さった皆様、お疲れさまでした〜。そしてどうも有り難うございました♪
今まで合計60曲出て来ましたが、選曲する為に聴いた曲数は、こんなモンじゃありません!!シチュエーションを想像しながら、音楽を実際に何度も何度も聴きながら書いたコラムです。
この中に登場する「えり」さんは、私と性格はそっくりですが、私はここまで無知ではありません。 つまり、「圭介」さんの言葉も、私の言葉だったりするワケです。
そしてこの場を借りまして、実在の人物である「圭介」さんと、彼の豊富なレコード・ライブラリーに感謝とお礼を申し上げます。









登場人物紹介

圭介
音楽は「表現」だといつも思っている、ベーシスト兼作曲家兼アレンジャー。
小学6年生で最初のロックバンド結成以来、無数のバンド活動を経て現在に至る。
仲間から生き字引とまで言われる70年代〜80年代のロックについての知識は、彼の作曲に多大なる影響を与えている。

えり
音楽は「はあと」だといつも思っている、コマーシャルの音楽プロデューサー。
幼少の頃からピアノや作曲を学び、ヤマハ音楽教室の講師を経て現在に至る。
聴く音楽のジャンルは幅広く、その事が彼女の仕事に大いに役立っている。


 

電話のベルが鳴っている。
 エアコンをつけてもちっとも涼しくならなくてイラついてた俺は、反射的に受話器を取った。

「ちわっすぅ!えりでっすぅ!今晩暇だから、どっか行きたいの!
夏が終わっちゃわないうちにもう一回、出かけたいの!夕方涼しくなってから迎えに来てね!
あ、モチロンBGMは任せるから。じゃ、あとでネ〜〜〜!」


 珍しく昼間に掛けて来たと思ったら、またまた勝手に俺の時間をぶんどってしまいやがった。
エアコンは相変わらず効かないし。どうやらぶっ壊れたらしい。
こんな気分のままで選曲しても良いのか???。
 運を天にまかせる気持ちで、冷蔵庫の水をがぶ飲みした。

 俺の部屋とは違って、車のクーラーはガンガンに効いている。
そこにやたら日焼けしたえりが、弾丸のように乗り込んで来た。

「キャー!涼しぃ〜!。でも何でこんなに冷やしてんの?」

 そんなに強く設定したつもりはないんだけどなぁ・・・・?
とりあえず、アクセルを踏むと同時にPLAYボタンを押した 。



M- 1 SUMMERTIME BLUES / BLUE CHEER (1968)
サマータイム・ブルース / ブルー・チアー


 えりの日焼けした腕に鳥肌がたっている。見なかった事にしよう。

「元祖・オブ・大音量・イン・アメリカ。」

「なぁーんだ、どうりでボリューム上げてるなぁと思った。」

「この、歪んだギターの音がウリ。この曲はエディー・コクランのカバーだね。」

「ロカビリーの人だよね?オリジナルもやるんでしょ?」

「勿論やるけど、この曲が一番ヒットした。」

「"子供ばんど"とかもカバーしてたよね?」


「"ザ・フー"のバージョンも有名だね。」

M- 2 SUBSTITUTE / THE WHO (1970)
恋のピンチ・ヒッター / ザ・フー


 ふと見ると俺の腕にも鳥肌がたっている。かまうもんか。

「元祖・オブ・大音量・イン・イギリス。」

「ホント、ウルサイねぇ・・・。ボリューム下げちゃダメなの?」

「ダメ。"不死身のハードロック"は、大音量で再現しないと。」

「そんなアルバムタイトルだったんだよね?」


「このバンドは、モッズ→サイケ→ハードロック→パンクと、時代の流れに沿って色んな呼ばれ方をした。」

「ファッションの流行に合わせて音楽も変化させていった・・・ってゆー事?」


「音は基本的に変わってない。」

M- 3 KICK OUT THE JAMS / MC5 (1969)
キック・アウト・ザ・ジャムズ / MC5


 最近出来た海岸沿いの道を走らせる事にした。せめて日射しが欲しい。

「元祖・オブ・パンク。」

「ふぅ〜ん・・・。パンクが流行る10年ぐらい前だね。」


「政治批判的な歌詞が多くて、当局からマークされてたんだよ。」

「流れとしては、イギーポップとかに行くの?。」


「そうだね。このライブ盤がデビューアルバム。これがロックだ!!って感じのアルバム。」

「今はどうしてんの? 」


「メンバーの一人はアカ狩りされた。」

M- 4 C'MON EVERYBODY /  HUMBLE PIE (1972)
カモン・エヴリバディ / ハンブル・パイ


 湾岸へと続く交差点を曲がった途端に、いきなり渋滞。水温計が気になる。

「この曲もエディー・コクランの曲。」

「来日した時のライブは凄かったんでしょ?」


「見たかった!今40代の、元・ロック少年だった人達は見てる!!。」

「70年代って、けっこう語り種になってるライブが多いよね。」


「スティーブ・マリオットのヴォーカルは、ブリティッシュ・ロックの中でも、最強!のうちの一人。」

「アクセル・ローズも、そう思ってんじゃない?。」


「日本にはそのまた真似してる人が多いけど、そういう人達はハンブル・パイを正座して聴いて欲しい。」

M- 5 LOOK AT YOURSELF / URIAH HEEP (1971)
対自核 / ユーライア・ヒープ


 急にクーラーが効かなくなった。どうしたんだろう?仕方なく窓を開ける。

「邦題史上、"原子心母"と並んで、優れたタイトル"対自核"。」

「昔って、考え抜かれた邦題が多かったよね。」


「ツェッペリン、パープルと、このバンドが3大ハードロックバンドと言われていたから 、
当時のロック少年の家には必ずあった。」

「今はどうしてるの?」


「ヴォーカルが死んで、キーボードが辞めて、ワウばっか踏んでたギターの人がバンドを守ってる。」

「え?じゃぁ、今もあるの?全然知らなかった!」


「うん。ロシアで営業中。」

M- 6 BAD SCENE / TEN YEARS AFTER (1975)
バッド・シーン / テン・イヤーズ・アフター


 なんだか雲行きがあやしい。あたりが暗くなって来た。

「ギターのアルビン・リーの、"速弾き世界一"が、ウリだった。」

「この曲、途中でテンポが変わるから面白いねぇ〜!。」


「そう。ギターが速弾きを始めるとベースも一緒んなってハシってた。」

「今聴くと、そんなに 速弾きには感じないね。」


「しかも、速弾きになると、どの曲もフレーズが同じになってた。」

M- 7 SWEET SILENCE / MR.BIG (1975)
甘美のハード・ロッカー / ミスター・ビッグ


 雨がバラバラと降って来た。さっき開けたばかりの窓を閉める。

「元祖・ミスター・ビッグ。」

「CD買いに行っても、なかなか置いてない方のミスター・ビッグ。私、かなり探したもん。 」

「ツイン・ドラムを効果的に使ってるのは、俺はこのバンドが一番だと思う。」

「数年前、やっと2枚目がCDになったよね。」

「実は幻の3枚目ってのがあるんだよ。」

「何で発売されなかったの?」

「発売直前にレーベルがつぶれた。そして、消えた。」

M- 8 GOD OF THUNDER / KISS (1976)
雷神 / キッス


 クーラーはどうやら壊れたらしい。雨はスコールのように襲い掛かる。

「元祖・ビジュアル系バンド。」

「ドームのライブも、一緒に観に行ったんだよね〜。私、感動した。」

「ドームでもこの曲の時にはちゃんと血吐きやって、盛り上がってたよね。」

「エースのギターも、ちゃ〜んとヨレヨレだったしね。」

「俺、ふと思ったんだけど、あんなノイズだらけのカラオケでバラード歌った人は、
ドーム史上、97年のピーター・クリスだけだよね。」

「ああ、あの"ベス"ねぇ〜!!そんな所までも20年前の再現ライブだったのかも。」


M- 9 INSIDE LOOKING OUT / GRAND FUNK RAILROAD (1970)
孤独の叫び / グランド・ファンク・レイルロード


 雷が光った。ハッキリ言って、車の中は蒸し風呂状態。最悪だ!

「夏と言えば、このバンド!!」

「何で?」


「みんな裸んなってるから。脳みそも筋肉で出来てるような人達。」

「暑っ苦しそうだよね。」

「"ツェッペリンもぶっ飛んだ"って何かに書いてあった。」

「何で?」

「彼等の前座やった時に、あんまり演奏が凄かったんで、ぶっ飛んだ。」

「ホント?」

「わかんない。」

M-10 IMMIGRANT SONG / LED ZEPPELIN (1970)
移民の歌 / レッド・ツェッペリン


「あ!花火だっ!!!」
 雷が光ったと思ったら花火だった。雨もいきなり止んでしまった。清々しい気分でサンルーフも窓も全開にした。

「プロレスファンには"ブロディのテーマ曲"で、通じる。」

「この3枚目のジャケット、大好き!!!私、Tシャツも持ってるよ。」

「この曲のイントロのリフのベースは、実は定音なんだよ。」

「え?4つ目の音はオクターブ上でしょ?」

「いや、上がってんのはギターだけ。これは、コピーした人にしか解らない。
複雑な事やってるように聴こえるけど、実はとてもシンプル。
聴かせ方が上手い。ジミー・ページならでは。」

「さすがだね。」

「ツェッペリンの曲、数あれど、俺はこの曲が一番好きなんだ。」

「何で?」

「短いから。」

 今回、色んなアクシデントの中、ガンガンにテープを聴いて、"ロックって、こんな中で聴くのが意外と良い"気がした。
今はハード・ロックって様式化されてるけど、俺はハード・ロックというものは、「ホルモン度数の高いもの」だと思う。
またその内、突然電話で選曲させられるんだろうけど、そろそろえりの作ったテープを聴かせてもらっても良い頃だと思うんだけどなぁ。
どんなのが出来るのかは楽しみでもあり、恐ろしくもあり・・・。
 とにかく今日はエアコンの効かない家に帰ってシャワーでも浴びて・・・。
ギターを思いっきり弾きまくるそ!

 

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