「キャッツ」・クラス演劇の記録
 大冠高校・2003年度・文化祭
 普通のクラスがミュージカルに挑戦した足跡

 はじめに
 何人かの知人、友人には会話やメール等で「文化祭で、“CATS”をやることになったけど、何か資料ないかな?」とお尋ねした時期がありました。
 いろいろな経過を経て、こうなり、そして、9月20日、無事上演は終わりました。クラスで演じるとなると、資料不足で結構悩まされることになります。
 お世話になった枚方高校の先生や卒業生の皆さん、大冠高校の係の方達への感謝を込めて、レポートです。これからこういう取り組みをされる方への情報提供でもあります。
 そして、物忘れが激しくなった昨今であるための備忘録的記録でもあります。 

 《写真説明は、いずれのページも写真上にポインターを合わせてお待ちください》

[川辺・マンカストラップ登場] [二見谷・ランペルティーザ] [中野・オールドデュトロミーを囲んで] [可愛い4ガールズ] [川上・おばさん猫] [立花・ラムタムタガー] [足立・ジェリーロムと出口・グリザベラ] [阿本・マンゴジェリー] [池上・ディミータと大楠・ボンバルリーナ] [阪口・ミストフェリーズ] [赤松・シラバブが歌う] [出口・グリザベラがメモリーを歌う]
[「キャッツ」・フィナーレ]
  
4組担任としてのラッキーな出発   2003年度の文化祭が終わってみて、改めて、教員の仕事というのは、ほんとに変化に富んだものだナア、と思っています。それも、生徒と自分の状況の変数で色々なパターンが生れることになります。「生徒と一緒に」という前置きつきですが、怒ったり、悲しんだり、喜んだり、涙ぐんだり、…  教員が「こうしたい」と思っても、思い通りに進まないということはあまたあることです。今年の例をとってみても、担任クラスの決まり方からそれは始まっていました。3年生は例年二つくらいの理系クラスが編成されます。大冠では、理系生徒は男子に多く、その数20人強というところです。男女比の関係で、1クラスという訳には行かないので文系の女子と少しの男子を加えて2クラスを構成するというのがこの間の基本になっています。前回担任した9期生では、問題を抱えた生徒から私が担任指名(希望表明でしたが)されたため、理系クラスを担任しました。進路指導で困難を感じたので、今回は避けたいと強く思いました。色々あったのですが、結局、その希望は実現しました。
 その困難なクジ(?)を引いたのは、同じ社会科の津田さんでした。進路指導に伴う困難さの詳細は判りませんが、文化祭などの自主活動での大変さは歴然としていました。生徒の文化委員は、真っ当な見通しを持っていて、「このクラスなら、この程度のことをできる、或いは、この程度のことしかできない」という判断をあらかじめ下します。そしてそれは結構的確です。津田さんのクラスの文化委員は、ですから、正門の制作(理系生徒向き?)に名乗りを挙げました(コンペで通らず、オブジェクト制作に落ち着きましたが)。
 「このクラスが、僕の教員生活で最後の担任クラスになるのだ」と言いまくっている僕にとって、今年の文化祭はそれなりの思い入れがありました。でも、いくら思い入れてみても、津田さんのような状況であれば、うまくいかなかっただろうと思うのです。もちろん、担任としての負担は何分の1くらいで済むのですが、それはまた別の話です。そういう意味で、取り敢えずのスタートは僕にとって恵まれたものだったと言えます。
最後まで力を発揮した文化委員は、こうして生まれた   さて、我が4組です。この仕事をしている人にはわかり切っていることですが、クラス編成は色々な要素を配慮して行われます。選択科目が多岐にわたっていますから、その制約があります。成績不振の生徒や、遅刻が多い生徒が特定のクラスに集まらないよう配慮。関係のよくない生徒を離す、問題を抱えた生徒をどう処遇するか、等、いくつものファクターを考えて編成が行われます。ただ、この16期生では、リーダーシップを取れる生徒をどのクラスにも入れるというような配慮までは進まなかったようです。マア、蓋を開けてみないとわからない面もあるので、あまり拘らなかったということもあります。
 ですから、4月当初、誰がどんな風に中心になるのかは、よく判りません。色々な意味でリーダーシップを取ってくれそうな生徒は、多くは見当たらない感じでした。特に男子はそんな印象でした。当たり前ですが、文化祭を考える時、重要なのは文化委員です。クラス委員は生徒の自発的意思で決まっていきますが、そこは、阿吽の呼吸で何となく担任の声掛けが影響することもあります。3年になると、就職・受験のこともあって、名目的な委員にはなり手が多いのですが、文化委員の場合は、生徒も長年の経験で、引き受けることの意味が解っています。ですから、この委員は最後までなかなか決まらなかったように思います。
 文化委員は、男女1名でいいのですが、担任の僕は「各2名」を主張しました。結果的にはこれは有効だったと思いますし、生徒自身も「先生、4人というのは正解やったワ」と言っていました。もちろん、委員同士のソリが合うかどうかは、やってみないと判らない、賭けみたいなものですが。結果的には、この4人の組み合わせは「絶妙だった」と、後に委員達自身が述懐するところとなります。
3年生は、はなから、意気込みが違っていた    大冠では、6月に体育祭が開催されます。これはこれで、伝統が培われていて、膨大なエネルギーが注がれます。特に応援合戦は見もので、その練習に普段遅刻する生徒も早朝練習に来るというような具合で、こちらは、タテ割りの団でもあるので、多くは3年の2クラスの応援リーダーが中心になって生徒を統率して進んでいきます。教員は見守り、行き過ぎのないよう、むしろブレーキ役といったところでしょうか。
 それが終わる頃、文化祭の取り組みが始まります。大冠では、文化委員研修が1日かけて行われ、そこで、全体的な情報を得、そして、クラス毎の仮の参加分野の決定が行われます。僕は「演劇こそ、文化祭にクラスで取り組む最高の形態だ」と確信していた時期があり、そのための根回しを早々とした時期もありました。寝屋川・吹田東では、殆どが演劇でした。でも、大冠に来た頃から、そういう「指導」はよくない、あるがままに生徒の希望に沿おう、と思うようになりました。ですから、振り返ってみると、大冠での担任クラスの参加分野は、演劇・巨大製作・校舎立体案内図(9期)/パフォーマンス・クラフトショップ(16期)、と実にバラエティに富んでいます。
 文化委員と初めて相談した時の印象は衝撃的なほど、前向きで積極的な姿勢でした。
 3年生の文化祭への姿勢は、1、2年の時とは全く違っているのです。「最後の文化祭やもん!」なのです。少しは予想したのですが、それを遥かに上回るものでした。そして、参加分野も、「そりゃー、3年生は演劇でしょ」という反応なのです。これは、この数年の大冠の先輩達が頑張ってきた成果を反映した「新しき伝統」のようなものなのだと思います。14期生の「三年七組銀八先生」、15期生の「ライオン・キング」等を、生徒は直接見ていなくても、その充実振りを伝え聞いていたようです。
 文化委員が、その旨を伝えても、当初はそう大きな反応はなかったのですが、参加分野に異論は無いまま進んでいきました。ただ、問題は上演する演目の決定です。文化委員は何度かアンケートを取り、意見収集に努めました。この段階で、既に、身内受けするだけのもの、ドタバタはやめようという姿勢は、文化委員にはハッキリしていました。
 生徒のアンケートでは、人気テレビドラマ、映画、アニメ等が上がってきます。ただ、約30分という上演時間の制限の中で、実際に考えると、どれも「帯に短し、たすきに長し」、という感じでなかなか選択は難しいものでした。
 熟成期間というのでしょうか、いい案があれば文化委員に、という時期を経ても、そう積極的に出て来るものではありませんでした。そして、文化委員を中心に「美女と野獣」に固まりかけ、後は、クラスの皆から了承を得るだけという段階に来ていました。この時期になると、生徒は、優秀賞を取りたいという意識も強くなり、当然のこととして、3年の他のクラスが何を上演しようとしているのかも気にかけるようになります。7クラスの中で、演劇に傾きかけているクラスはどこか、そして、何を演目とするのか。そこに、7組が「美女と野獣」に決まりかけているという情報が入ります。
「キャッツ」の最終決定はこんな事情から生れた   大冠では昨年から、演劇など参加数に制限のある分野では、事前コンペが持たれ、生徒の投票によってふるいにかけられるシステムが出来ています。演劇をやる!と言ってみても先ずはここを通らないと参加さえ出来ないことになります。ここで、我が心優しい4組の文化委員はたじろぎ、そして引いてしまい、演目変更を考えることになります。「そんなに弱気にならなくてもいいのに…」とは言いましたが、3年ともなると、対する7組の文化委員の力量を知っているので、コンペでのプレゼンで勝ち目は無いと判断したようです。
 次善の演目探しは、結局、「ピノキオ」が候補になり、クラスでは「美女と野獣」も選択肢に入れて、いくつかの候補を挙げ、多数決を取り、文化委員の意向を一応汲んだ感じで「ピノキオ」で決定しました。締め切りの前日でした。ところが、その日の放課後、今迄あまり異論を唱えなかった文化祭の取り組みに前向きな何人かが、「こんなんでは、インパクトが弱い。コンペで負ける、劇ができなくなってしまう。もう一回考え直そう」と言い出したのです。文化委員にも、そして見守ってきた担任の僕にも言い分はありました。今迄意見を出さずに、何で今になって!それも締め切りは明日やのに。
 ただ、このまま「決まったことは決まったこと」で押し切れば、不完全燃焼感が残るだろうから、結論がどうなるにせよ、もう一日だけ、再考の時間を持とうということになります。とにかく、代替案を出す約束で、最終決定を一日だけ延ばしました。ただ、議論、検討する時間は殆どありません。禁じ手と自戒している僕の授業を使う決断をせざるを得ませんでした。授業の半分を使って社会科準備室に意見を言いたい生徒が集まりました。14、5名くらい居たでしょうか、昨日考えた代替案を次々と検討していきました。文化委員がイライラするほど、「それも、既に検討したよ!」というものもたくさんあり、やはり、劇にするのは難しいものが多かったのです。「HERO」から「ビューティフル・ライフ」はもちろん、「東京ラブストーリー」まで飛び出しましたが、どうやってそれを30分の劇にするの?となるのと、ウーンとならざるを得ません。
 もう他に代替案が無いか…となっていた頃に、「キャッツ」が出てきたのです。超有名なミュージカルだとは皆知っているのですが、大半は中身はよく知らないのです。劇団四季の本物を見たことがあるのは、文化委員の足立さんだけ(辛うじて、担任の僕は昨年の大阪公演を見ていたのですが)。委員の池上さんも以前に文化委員で検討した時、やってみたいと思ったもののヤッパリ無理と諦めたと言います。でもその時集まったメンバーの間には「これがやれれば、凄いことになるゾ」という雰囲気が広がりました。足立さんがストーリーの概略を説明し、有名な「メモリー」を歌いだす生徒も居て、「イッチョやってみるか!」ということになり、締め切りの日の3時半にホームルームで、ピノキオやキャッツを含む候補の中で再度の多数決になり、キャッツに決定しました。この段階でも圧倒的多数という状況ではありませんでした。
 そして、コンペを迎えます。このコンペは良し悪しで、この段階で煮詰まっていないのは当たり前なのに、粗方の説明が求められます。演劇の枠は4ないし5。そこに名乗りをあげているのは、結局3年生5クラスと2年生2クラス。結構な激戦です。投票する文化祭実行委員も、キャッツの何たるかはよく知らないわけですから、投票ではすれすれで通ったと言います。2組はオリジナル脚本を考えていたので、煮詰まっておらず選外へ。
決定的に資料不足、どうしたらいいんだろう?   こうして、「4組・キャッツ」は実質的なスタートを切ります。この段階で、実際やるとなると、意外な難問があることがわってきます。 [社会科教室で始まった練習]
@ 大阪公演で入手したものが当初の資料のすべてなのですが、例えばパンフレットに脚本のダイジェストがあると思っていたのに、それは全くの思い違い。
A CDがあるのですが、それだけで、ダンス部分の情報はありません。
B 劇団四季のビデオは、公演が終わるまでは出そうにもない。四季の公演を見ようにも、7月には静岡、8月に広島でやるだけ。
C ホームページで検索しても、その公演予定があるだけで、後は熱心なファンが追っかけ記録を記していたり、猫のイラストが描かれているだけ。
D 更に、アマゾンのネットショッピングで調べたら、海外版のキャッツのDVDは出されてはいるが、売り切れ。
 これだけの資料で、どうしたらいいのか? 文化委員も担任も困惑してしまいました。
 とにかく、劇団四季の公演がテレビで放映されたことはないか、そのビデオを撮っている人は居ないか?DVDが出ているということは、ファンの人なら持っているだろうから、貸してもらうしかない、それをネットで呼びかけてみよう、等と次の手を考え始めました。
 ところがこの段階で、意外な情報が入ってきました。男子文化委員の川辺君の枚方高校の友人が去年同校でキャッツをやったクラスがあり、そのビデオを借りられると言うのです。藁にもすがる思いで、それを待ちました。枚方高校では、図書室で貸し出しが行われていて、借用は簡単だったようです。
 クラスでキャッツを決めてから1週間後の26日、クラスの中心メンバーでこの枚方高校のビデオを観ました。正直言って、あまり期待していなかったのですが、観てみて、脱帽と言う感じでした。ほんとに凄かったのです。高校生とは思えない、素晴らしい演技だったのです。ミュージカルだから当たり前とは言え、皆地声で歌っているし、第一、出演者全員の目線が凄いのです。4組の生徒の反応は前向きでした。実はあまりの凄さに大冠の生徒は、たじろいで引いてしまうのでは、と思ったくらいでしたが、「凄い、やりたい。同じ高校生やねんから、私らにもやれんことはない」と言う声が圧倒的でした。ただ、これは、4組にとってもキツイことになるのですが、ストーリー展開は、この名演技でもよくわからないという難点はありました。
 そして、間もなく、海外版のキャッツは、DVDは売り切れだけど、VHSビデオなら販売中という情報も足立さんから入り、資料は入手の展望が出てきました。「枚方高校の生徒さんに会いたい、お会いして、色々教えて欲しい」という文化委員の要望は、大冠から転勤して枚方へ行かれた上遠野さんに、問い合わせて、お願いし、メールの何度かのやり取りの結果、実現します。期末考査終了後の土曜日に枚方高校で、昨年の3年8組、今は大学生の皆さんが集まって下さり、色々教えてもらったようです。
余りにも違いすぎる、大冠の状況。でもキャストは第1希望で揃う   ただ、ここでまたたじろいだのは、上遠野さんからの情報。 [オーバーブリッジでの練習]
@ このクラスは、枚方高校でも普通科のクラスではなく、国際教養科のクラス。この学科の生徒は文化祭への意気込みが元々大きい。4月から準備を始めていた。
A 女子の多いクラスで、彼女達が男子を引っ張りながら、前へ出ていた。
B 担任は音楽の先生。北川先生は今国内留学中の大冠の中原さんの大学時代の友人。
C 昨年度まで、演劇の指導の世界で有名な吉田先生という方が居られて、その指導も受けられている。
 そして、付け加えると、枚方高校では演劇分野だけは相当な水準にあり、お金の面でも、大冠のような一人500円なんて予算でなく、2000円だとか。これだけ、大冠との違いを突きつけられると、フラフラになりそうだけど、とにかく、「ここまで来たら、突っ込むしかない」というのが実感でした。
 入手した資料を駆使してスタートしますが、ようやくキャスト・スタッフを決められる段階に達しました。そのために、先ずは枚方高校のビデオをクラス全員で観ました。1学期期末考査最終日のことです。そして、それぞれの希望をアンケート方式で問うたのですが、ここでも意外なことになります。キャストの猫は24匹なのですが、何と、一回目のアンケートで、ほぼ希望だけで24人が揃ったのです。クラスの生徒数は38人ですから、約三分の二です。事前の文化委員の働きかけもあったのでしょうが、これには「やるじゃないか」と委員共々、感動しました。大冠ではサッカー部が強いので、国立競技場を目指す最後の試合が控えていますから、サッカー部の3人は出たくても出られません。
 終業式には、再度ビデオを観て、キャストの具体的な決定が進められました。そこでは、少し「役」の奪い合い(笑)もあったようですが、とにかく、夏休み前には生徒の配置は概ね決まったようです。僕個人のことで言うと、今年は3年の担任でもあるので、恒例の海外旅行は断念。その分、やけくそではないのですが、合宿への付き添いをたくさん引き受けました。夏休み突入直後にある吹奏楽部、8月上旬の女子バレー部。7月下旬には世界史の進学講習も担当。しかし、クラスの練習はほぼ毎日ということで、始まりました。ただ、何と言っても3年生ですから、予備校や塾に行く生徒、アルバイトを入れざるを得ない生徒、と多様ですから、集まりの悪い日もあり、文化委員のイライラは募ったようです。
 こんなことはしたくないと思っていた携帯電話でのやり取りもすることになります。同報送信で文化委員との交信もあり、練習の状況をメールで聞くというような生活になります。メリハリの効いた練習日程にした方がいいのでしょうが、文化委員は焦って、「少しでも練習を」と思いがちで、消耗することも多いようでした。
補充授業が始まり、酷暑の中、いよいよ追い込みへ   やがて、3年生だけの補充授業が8月21日から始まります。 [多目的広場での練習] 今年の夏は盛夏の時期には冷夏で、下旬に猛烈な暑さに見舞われるという異常な事態でしたから、厳しかったのですが、でも3時間目で授業が終わるというのは、願ってもない時程で、毎日2時間程度は練習の時間が確保できました。吹奏楽のサマーコンサートも終わり、予備校も終わり、ということで、結集も少しずつ良くなっていったようです。
 もちろん、9月に入っても、当初の短縮授業は午後が活用でき、13~15日の連休も練習三昧ということになります。ただ、結構重要な役に当っている生徒が出て来なかったり、それを携帯で呼び出す等という事態も再三ありました。
 何とかなるだろうと思っていた四季のCDの音楽から「歌」を取り除く作業は、結構難しいもので、吹奏楽部OBの田村君の力を借りることになりました。遅まきながらと言っていいのでしょうが、中原さんの代替で来てくれている吹奏楽部OBの山本先生にも、終盤に音楽的指導もしてもらって、追い込みにかかりました。文化委員は一喜一憂の日々を送ります(圧倒的に一憂の方が多かったかも)。追い込みの日々には、大道具・照明の係が意外な(笑)大奮闘を繰り広げます。細かい打ち合わせも続き、練習の機会が少ない割には本番での照明の成功も大きな役割を果たします。 [オーバーブリッジを飾る垂れ幕] [揃いのTシャツでリハーサルを検討]
 宣伝部もパソコン部部長の力量が遺憾なく発揮され、素晴らしいポスターや、当日配布用のパンフレットも完成していきます。手作りポスターの味も加わります。なかなか参加できないサッカー部3人組は垂れ幕を作り、いち早くオーバーブリッジに掲げられ、人目を引きました。衣装担当も長老猫の衣装作りに精出しました。大冠では、ほぼどのクラスもオリジナルのTシャツを作るのが作風になっていますが、このデザインも素晴らしいものでした。例の黒地に黄色の猫の目を配したもの。前はキャスト・スタッフの一覧と、なかなかスッキリした出来上がりでした。特に何人かがこれを着て背中を向けると幻想的な世界が出来上がります。
 体育館を使ったリハーサルは2回だけですが、7月から練習して来ただけあって、仕上がりは早い方でした。前日には初めての公開リハーサル。ここでは、化粧こそしませんでしたが、文化委員の指示で早くも衣装は本番並みに着用されました。
いよいよ本番を迎える。みんな、様になっている   そして、いよいよ本番の20日を迎えます。 [最後の仕上げはメークアップ] 当日は朝6時に登校し、衣装付け、そして、メイクに励みました。衣装はもちろん、メイクしてみると、皆、本格的に猫になっていきます。遠くから見れば、誰だか判らないくらい猫に成り切っていました。化粧なら、普段からしっかりやっている生徒も居ますから、「お任せ」です。男子生徒のメイクをしてあげて、それから自分のメイクへという生徒も多かったようです。もちろん、その格好で宣伝に繰り出し、人目を引きました。彼等の目は生き生きしていました。猫っぽく振る舞いながら宣伝ビラを撒く光景もありました。 [衣装・メイクで宣伝]
 最後にいつもの練習場所で仕上げ、文化委員からの注意を受けて、喚声を挙げ、ステージに向かいました。 さすがに緊張は大きく、リハーサル並みには行かなかった面もありましたが、大きなミスはなく、無事演じ上げることが出来たようです。 ただ唯一、生徒にとってもショックだったのは、マジシャン猫が、さらわれた長老猫をマジックで呼び戻す場面でのハプニングでした。 長老猫は体育準備室を回って舞台袖から入ることになっていたのですが(舞台裏の動きで)、準備室はロックされていて通ることが出来ず、舞台上の生徒は呆気に取られ、数秒動きが止まってしまいました。 [社会科前での最後の練習] でも不自然ではあれ、一応つなげて演じ切りました。準備室は立ち入ることが出来ないことになっているとは知らないためのアクシデントでした。3回のリハーサルで何れも開いていたのが間違いの元でした。担任の僕も気付いて、一言体育科に声を掛けるべきだったのだろうと反省しています。
 準備・片付けを含めて持ち時間は35分という制限をしっかり守り、カーテンコールもせず、スピーディに終了しました。
素晴らしい出来栄え。そんなことはどちらでもいいけど、審査員特別賞   [盛り上がるフィナーレ] 大冠高校の文化祭史上初めての本格的ミュージカルはこうして終了し、 その日の4時半からの閉会式での成績発表を待つことになります。生徒はそれなりの自信があり、期待して待ったようです。しかし、発表を聞いて、演劇部門で優秀賞を得られず、涙が溢れる結果になりました。全ての発表の後、審査員特別賞が告げられ、それを受賞しましたが、生徒諸君は演劇部門での優秀賞を逸しているため、素直に喜べなかったようでした。
 大冠の審査は、生徒の全員投票によって行われ、それに担当の教員の点数(一人10点)が付加される仕組みになっています。詳細な経過は判りませんが、どんな審査方法でも弱点はあり、何がベストとは言えませんが、全ての演劇を見る生徒は皆無に近いでしょうから、この方法は良くないと個人的には思っています。優秀賞は隣の3組の「もののけ姫」でした。下馬評も、優秀賞は3組か4組のどちらかだろうと言われ、生徒も少しピリピリしていました。「もののけ姫」は本格的な劇、キャッツはミュージカルですから、比較が難しいのだと思います。後は審査員の好みの問題でしかありません。ただ、圧縮していることもあり、「筋」がよく解らないという厳しさはありました。(「もののけ姫」がポピュラーで、「キャッツ」は意外と知られていないということもあります)。生徒もプライドがあり、ナレーションで解り易くするという方法を取りませんでした。それはそれで一つの見識であったと思います。
 終わってから、教員になって初めて一観客として観た音楽の中原さんが「必死さ、真剣さは痛いほど伝わった。去年教えた生徒が立派に歌っていたのに驚いた」と感想を寄せてくれました。このコメントに全てが表現されているように思います。先に書いた枚方高校の置かれた環境と大違いなこの大冠の4組で、ここまでやれたのはほんとに素晴らしいことだったと改めて思います。ごくごく普通のクラスが24人ものキャストを擁する「キャッツ」を最後まで演じ切り、担任が音楽専門でもなく、演劇に特別な指導者が居る訳でもない大冠で、ここまでやれたのです。文化委員の指導で、生徒の目線は見違えるように鋭く、そしてある時は優しく、立派にモノを言っていました。
                                 2003.9.28
[フィナーレで個性ある猫を演じる@] [フィナーレで個性ある猫を演じるA] [フィナーレで個性ある猫を演じるB] [フィナーレで個性ある猫を演じるC] [大道具・照明の部隊] [衣装・音響の部隊] [宣伝の部隊]
それぞれの分野で大活躍した裏方のグループ【左から、大道具・照明、小道具・音響、宣伝の部隊】

[終演後、いつもの練習場所で記念写真]
最後の最後、無事公演を終え、全員集合の記念写真