分岐学のデーターって主観的だから分岐学は間違いなんでしょ?
ミラ:ねえ、分岐学のデーターって主観的よねえ?
わらし:はあ、だから?。
ミラ:例えばこの特徴とこの特徴は同じだ、そういう風にして分岐学ではデーターを作るわけよね?
わらし:作るわねえ(分岐学とは何か?を参考のこと)。
ミラ:でも、”これとこれが同じ特徴である”、そういう判断は主観的でしょ?
わらし:そういう場合もあるって言った方が正しいでしょうけどね、ともかくそれで?
ミラ:その判断が間違っていたら結論は間違っちゃうでしょ?。だから分岐学はいい加減なのよ。
わらし:私たちの眼と脳を通して考えた以上、なんだって主観的だろうけどねえ。いずれにしても主観的だからいい加減ってのは単純な勘違いじゃないかな。
ミラ:どういうこと?。
わらし:ちなみに・・・・。言っておくけど、分岐学が遺伝子を材料にする場合、この特徴とこの特徴が同じであるのかどうか、その判定は容易よね、比較的。
ミラ:なんで?。
わらし:遺伝子の特徴って4種類の塩基のことでしょ。アデニン、グアニン、シトシン、チミン。どれがどれなのかは誰でも分かるわよ。(これは乱暴な議論だけどさ・・・・・)
ミラ:うーん、確かに遺伝子の場合はどれが同じなのか、それが分かりやすいと思うけど・・・・。形の場合はどうなるの?。
わらし:形態を材料にした場合、どれを同じと判定するかは遺伝子を材料にする場合よりも主観的でしょうね。
ミラ:じゃあ、その判定が間違っていたら分岐学は怪しい答えをだすんじゃないかな?
わらし:そうとは限らないわよね。
ミラ:なんで?
わらし:ある系統を支持する特徴が10個あって、そのうち1つがあやしそうな判定だったとしましょ。その場合、その推論はダメになってしまうわけ?
ミラ:うーん、確かにその場合はダメにならないと思うけど・・・。でもある系統を支持する特徴が1つだけで、その判定が怪しかったら、その系統は怪しくならない?
わらし:なるでしょうね。
ミラ:ほら!!、だから分岐学はダメなのよ。
わらし:その論法、間違っているわよ。
ミラ:なんで?。
わらし:今の論法はこうよね。
1:分岐学が導き出した系統には確からしいものと確からしくないものがある
2:確からしくない系統を導き出した原因は、あやしい判定があったからである
3:あやしい主観的な判定に基づいたデーターを使う分岐学は間違いである
これありがちな勘違いよね。
ミラ:つまり?
わらし:確からしくない答えが出るのだから、分岐学は間違いに違いない。それは、”間違った答えを書くのだから、この人のいうことはすべて間違いに違いない”、そう言っているのと同じだがよ。ようするに、一部の事柄を全体に拡大しているわけよ。これは間違った論法よ。
ミラ:そうかなあ??
わらし:間違いでしょ。もし、ミラちゃんの論法が正しいのならこうなるわよね。
1:ミラちゃんの飼っているピピちゃんはウサギだ
2:ピピちゃんは色が黒い
3:黒いピピちゃんはウサギなのだからすべてのウサギは色が黒いに違いない
これ、正しい考え方と答えかな?
ミラ:間違いだわねえ・・・。
わらし:ようするにあれよね、主観的なデーターから怪しい答えを導きだしたから分岐学は間違いだ、これは間違った論法にもとづいた勘違いよね。
ミラ:でも、主観的な判定で怪しい答えが出てしまう、そういうことが分岐学で起こりうるわけでしょ?。
わらし:ありうるわねえ。
ミラ:そういう場合、どうするの?。
わらし:データーを作り替えてテストすればいいのよ。あるデーターが主観的だっていうのなら、その部分を改めて作り直した新しいデーターで解析しなおすわけね。それで壊れた系統は確からしくないし、それでもビクともしない系統は確からしいことになる。
ミラ:ようするにテストするわけか。
わらし:そういうこと。答えには主観的なデーターに大きく依存した答えとそうでない答えがあるわけで、データーを作り直すことでそれを確かめることができるわけよ。
ミラ:なるほどね。
わらし:それでどれが確からしい答えなのか分かればそれでいいじゃない。
*分岐学のデーターは主観的だから間違いだ。この考えは本文にあるように、おそらく単純な論法の間違いでしょう。あと、分岐学は形態だけを扱っているという誤解もあるように思えます。材料が遺伝子だとこういう問題は起こりにくくなりますからね(でも実際はそんなに単純ではありません。例えば、どの遺伝子座が他の生き物のどの遺伝子座と同じなのか?、これを判定するのは容易ではない場合があるからです)。
いずれにせよ、この勘違いでは形態をどうデーターにするのか?、という問題が、分岐学という方法論への疑問にすり変わっているわけです。まあ、ありがちな勘違いですね。
ちなみにデーターを作り替えてテストすればいい、というのは北村が、
”形質のコーディングは種と同じ問題を抱えていないだろうか?、そうしたコーディングは存在するのでしょうか?、そういうコーディングは問題を引き起こさないでしょうか?”
という主旨の質問をある系統学者にした時、彼があっさり答えてくれたものです。
ようするに、科学とはテストするものだってことですね(<北村の受け取り方)。すいませんねえ、このコンテンツを作っている北村ってこういうレベルの人間なんです^^;)。
だからちゃんと参考文献読んでくださいな。
参考文献として:
「系統分類学入門ー分岐分類の基礎と応用ー」 E・O・ワイリー他 宮正樹訳 1992 文一総合出版
「系統分類学」 E・O・ワイリー 宮正樹・西田周平・沖山宗雄共訳 1991 文一総合出版
「生物系統学」 三中信宏 1997 東京大学出版会
「種の起源」(上下) ダーウィン 原著1859 岩波文庫