Q:ワニって恐竜なんですか?
A:恐竜ではないでしょうねえ。たしかに恐竜になる可能性は理屈の上ではありますけど、ならないと思いますよ。
さてさて、ツリー・オブ・ライフのなかから恐竜を見つける方法として、
トリケラトプスと鳥のもっとも最近の共通祖先とそのすべての子孫
という指定があったことはすでに話ました。この指定ですとツリー・オブ・ライフが次ぎのような形をしている場合、ピンクの部分が恐竜になります。
_____________ワニ
| |______ポストスクス
|___________プテラノドン
|_________トリケラトプス
| | |____イグアノドン
| |______ヒレオサウルス
|________ブラキオサウルス
|_______メガロサウルス
|______コンプソグナトス
|_____ティラノサウルス
|____ディノニクス
|___カラス
見れば分かりますがワニは恐竜ではありませんよね。
でも考えて下さい。もしツリー・オブ・ライフがこういう形をしていなかったらどうでしょう?。
今の私達はツリー・オブ・ライフを直接見ることができません。ツリー・オブ・ライフは過去の生物の進化によって出来上がっています。過去のできごとは直接観察できません。これを読んでいるあなたも昨日を見ることはできませんよね?。昨日撮影したビデオを見てもだめですよ。それは過去ではありません、あれは単なる記録です。過去ではない。過去はどこにもありません。
おなじようにツリー・オブ・ライフはじかに見ることはできません。ツリー・オブ・ライフとは、パズルを組み立てるように証拠から推理するものなのです。
さて、昔の出来事は確かなことがある一方で、良く分からないこともあります。例えば織田信長は本能寺の変で明智光秀に殺されました。これは確かですが、織田信長が具体的にどういうふうに死んだのかはよくわかっていません。このように全体として分かっているけど、細かい部分ではあいまいでボンヤリしてしまう。そういうことが起こります。
同じようにツリー・オブ・ライフは場所によると不安定です。つまりどうもピントがぼやけてはっきりしない部分がある。
ですからもし新しい証拠や化石が見つかってツリー・オブ・ライフがもっとはっきり見えてきたら、ワニがツリー・オブ・ライフのこんな位置にでることが分かったとしましょう。
__________
| |______ポストスクス
|___________プテラノドン
|_________トリケラトプス
| | |____イグアノドン
| |______ヒレオサウルス
|________ブラキオサウルス
|_______ワニ ←もし新しい化石の発見があいついで奇跡的にワニさんが
| ツリー・オブ・ライフのこの位置にあらわれたらどうなるか?
|_______メガロサウルス
|______コンプソグナトス
|_____ティラノサウルス
|____ディノニクス
|___カラス
ようするにワニさんがメガロサウルスの親戚だったということが分かったとしましょう。言っておきますがこういうことはまず起きませんよ。これは例えるなら、最近の古文書の発見と文献などなどから本能寺の変の後、織田信長はじつは生きていたことが確実になりましたっていうくらいすごい話なのですが(一体どんな証拠が見つかればそんなことになるのかさっぱり想像できませんが)、あくまでもしもの話です。
さて、もしもこういうツリー・オブ・ライフが確からしいという大発見があったとしましょう。これを使って恐竜を折りとると次ぎのようになります。
_________
| |_______ポストスクス
|____________プテラノドン
|_
A________トリケラトプス
| | |____イグアノドン
| |______ヒレオサウルス
|________ブラキオサウルス
|_______ワニ ←ワニさんここ
|_______メガロサウルス
|______コンプソグナトス
|_____ティラノサウルス
|____ディノニクス
|___カラス
さっきと違ってこのツリー・オブ・ライフではワニもいっしょに折りとられていますよね?。この場合、ワニは恐竜になります。
もっともこうなることはまずないでしょう。なぜならツリー・オブ・ライフはデーターにもとづいて推測(すいそく)されたものだからです。今、私達が持っているツリー・オブ・ライフはかなり確かなものです。ワニが恐竜になる可能性はまずないでしょうね。
おまけ:推測について。
推測、これは英語でいうestimation:エスティメーションのことです。時々、なんだツリー・オブ・ライフは推測でしかないのかーって言う人がいますが、そういう人のいっているのは推測ではありません。その人がいっているのは憶測(おくそく)のことですね。憶測。これは適当になんかいっちゃうことです。
憶測は推測よりもずっと楽。推測はずっと大変。なぜなら推測はデーターを集めて、そのデーターから確からしい答えを導き出すことだからです。でも憶測はてきとーいっちゃえばオッケーなのでとっても楽^^)。バカでも憶測(おくそく)することはできます。
でも推測(すいそく)はそうはいきません。
もし、ツリー・オブ・ライフなんていいかげんだよっていう人がいたら聞いてみましょう。
どうしていいかげんなんですか?
ちなみにこう聞くと過去の推測なんていいかげんだよって答える人がおおいです。でもその人どうやって生きているのでしょうね?。昨日のことも、5分前のこともいいかげんなのです。たぶん、その人にとっては昨日の話もさっきの事も事実だったのか夢だったのか分からないはずです。
閑話休題
ツリー・オブ・ライフはデーターから推測された確からしいものです。例えば研究者の作り上げたツリー・オブ・ライフは次ぎのようなデーターでサポートされています。
↓ワニの仲間は頭骨後方のスクアモーサルやITF、CN型のかかとでサポートされます
_____________ワニ
| |______ポストスクス
|___________プテラノドン
| ↓トリケラトプス+メガロサウルス+カラスetcは、エスカレーションしたサービカル、AM型のかかと
| 開いたアセタンブラム、拡張したティビアなどでサポートされます
|_________トリケラトプス
| | |____イグアノドン
| |______ヒレオサウルス
|________ブラキオサウルス
| ↓メガロサウルス+コンプソ+カラスetcは気嚢の発達、極端にS字の首、極端に非対称な手
| などでサポートされます
|_______メガロサウルス
|______コンプソグナトス
|_____ティラノサウルス
| ↓オピスソピュービック、極端に変形したサービカル、側面を向いた肩関節
| セミルナートカーパル、指のプロポーションなどでサポートされます。
|____ディノニクス
|___カラス
このツリー・オブ・ライフは相当にかたいものです。ワニが鳥+トリケラトプスの中に入り込むことはまずないですし、入り込むという根拠もありません。