Moon

月齢19

 

2014年、5月19日2:30〜4:30にかけてスケッチした月

日付が変わる前日18日の正午における月齢は18.9

スケッチの時点における月齢は19.48~19.59

ここでは月齢19として扱います

 

あとひと月で夏至。月の南中は2:23である一方、日の出は4:33。月は南天に低く、しかも時間があまりなかったので、興味を引かれたマレ・ネクタリス(MARE NECTARIS:神酒の海)とコペルニクス、エラトステネスを重点的にスケッチ。他の部分は代表的な地形を描いたのみ。

 コペルニクスから伸びる光条が、ちょうどエラトステネスにさえぎられているように見えるのは興味深いところです。クレーターが出来る時、出来た親クレーターからの放出物と二次クレーターの放出物が混合されると地面を這うように広がると言います(「クレーターの科学」 水谷1980 pp93~94)。コペルニクスの光条もそういうもので、すでに存在していたエラトステネスを越えられなかった、そういうことでしょうか。ただしこれは文献未確認です。

 コペルニクスの光条は東側(画面右)でアペニン山脈から舌状に伸びた放出物で途絶えているように見えます(熱の入り江の東部)。さらにこの部分は、雨の海とアペニン山脈が出来た後に起きた火山噴火で黒く染まっています。コペルニクスの光条が途絶えている。一見すると噴火の放出物がコペルニクスの光条を埋めて、消しているようにみえますが、もしそうだとすると火山噴火がコペルニクス以後に起こったことになります。これはありえないわけではないですが、月の火山活動としてはいかにも新しすぎるようです。それに黒い領域が左右対称でないこともおかしな点でしょう。もしかしたらコペルニクスから放出され、地を這うように広がった光条は低い場所を埋めたものの、標高のある舌状に伸びた放出物と、その上に堆積した黒い火山性物質には届かなかったのかもしれません。とはいえ、これもまた文献未確認。

 マレ・ネクタリス:神酒の海は手持ちの文献[The Geology of Multi-Ring Impact Basins] Spudis 1993 によると五重リングの大型クレーターであるとされています(pp74)。リングとされる部分をスケッチに重ねると次のようになります。

 

 

 五つあるとされるリングのうち、一番内側のものは不明瞭で溶岩で埋められた海のしわや断片的なでっぱりに見えます。その外にある三つのリングは明瞭です。特に見事なのはクレーター・ピッコロミニ(Picolomini)を通る形で存在するアルタイ断崖(Altai Scark)でしょう。その外側にあるとされる五つ目のリングは、少なくともこの月齢ではよく分かりません。

なお、アルタイ断崖の周辺は妙に地形が古く見える場所です。その割に、アルタイ断崖が非常に明瞭なので、色々と考察がなされている模様。 

 

2017年12月8日 0:00〜3:00の神酒の海 200倍

8日の正午月齢は19・6、スケッチ時は19・1〜2

夕暮れをむかえた月齢19、神酒の海を200倍で見た様子。神酒の海はかなりこちら向きで、5重のリングのうち、4つが見えています。最内円は海にあるしわのようなもの。2番目はフラカストリウスの外を通るもの。3番目はカタリナを通るもの。4番目はピッコロミニの外を通るアルタイ断崖です。第5番目はここでは見えていません。

当初はアルタイ断崖の外にあるのが第5かと思いましたが、よく見るとこれは輪郭がはっきしないクレーターとその縁の連なりらしい。本当の第5のリングはサクロボスコの外にあるようです。

 

 

  

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